インタビュー

淹れたてのコーヒーの風味が続く京セラの「CERAMUG ボトル」

2024年2月5日 取材

「CERAMUG(セラマグ) ボトル」シリーズ

 京セラは、内側にセラミックコーティングを施すことでコーヒーなどの風味の変化が抑えられる「CERAMUG(セラマグ) ボトル」の500mlサイズの販売を開始した。

 同社では、これまで180mlと300mlの2サイズを展開してきたが、もっと大きなサイズのものが欲しいというユーザーの声に応える形で500mlの商品を発売することにした。

 宝飾応用商品事業部 企画開発部 応用企画課 責任者の日置敦史氏によれば、B2Bの事業が強い同社だが、携帯電話や宝石といったB2Cの事業も展開しており、1984年に発売され、今年で40周年を迎えるセラミックナイフは累計で2000万本を売り上げるなど、社名の由来ともなっているセラミック素材を活用した各種商品を販売している。

「“おいしい瞬間をいつまでも”をコンセプトに、セラミック加工で金属成分が出にくいのがCERAMUGの特徴」と語るのは、宝飾応用商品事業部 企画開発部 応用企画課 企画1係責任者の大山修平氏。「ステンレスボトルでは8時間経つとFe(鉄)が溶出するが、CERAMUGでは陶器と同等」とのことだ。

セラミック加工が施されたCERAMUG ボトル(左)と無加工のステンレスボトル(右)

 同社が2019年に実施した調査では、44.2%のマグボトル利用者が味の変化を感じると回答。個別のコメントを見ていくと、コーヒー好きが風味の変化を気にしている実態が分かり、同社として改めてコーヒーにフォーカスしたマーケティングを行なっていくことにしたという。

 そこで、同社はアジア最大のコーヒーのイベント「SCAJ2023」に出展。セラミック加工を施したボトルと無加工のボトルに淹れたてのコーヒーを入れ、約3時間寝かせたものを来場者に試飲してもらったところ、99%が味の違いを実感するという結果になった。

 宝飾応用商品事業部 企画開発部 応用企画課 企画2係責任者の佐藤円香氏によると、CERAMUGでは元の風味が保たれるため、ステンレスボトルと比べると、後味に大きな違いが出てくる。

宝飾応用商品事業部 企画開発部 応用企画課 責任者の日置敦史氏
宝飾応用商品事業部 企画開発部 応用企画課 企画1係責任者の大山修平氏
宝飾応用商品事業部 企画開発部 応用企画課 企画2係責任者の佐藤円香氏

 今回の取材では、記者自身もホットのドリップコーヒーを飲み比べてみたが、CERAMUGの方はしっかりと豆の香りを感じられ、飲み終わった後の余韻がくっきりと残ることがよく分かった。コーヒー好きにとっては大きな違いに感じられることだろう。

 また、酸やアルカリ、塩分の強い飲み物にも強いというのもCERAMUGの特徴となる。他社の商品でも、すぐに洗うことを条件に酸性のスポーツ飲料に対応しているものもあるが、CERAMUGでは酸性が強いレモネードやアルカリ性の焼酎にも対応。さまざまな飲み物を入れられる強みを持っている。

 炭酸飲料や果汁飲料、乳製品は非対応となっているが、ガスが出たり、腐敗しやすかったりと、密閉状態にするのがまずいというのが理由で、表面の化学変化に起因するものではないため、タンブラーのような形でこうした飲料を注いで使用すること自体には問題はないという。

 大山氏は、「元々、京セラはフライパンでセラミック加工を始めたが、それをボトルに応用しようと考えた。企画段階では簡単だろうと考えられていたが、筒状の細いボトルの内側にきれいに塗るのが予想以上に大変で、何度もトライ・アンド・エラーを繰り返し、塗り方や調合を変える必要があった」と振り返る。

 現在は180ml、300ml、500mlの3サイズとなっているが、ユーザーからはもっと大きなサイズが欲しいという声も出てきているという。セラミック加工という観点では小さいものに対応する方が難しいが、大きくすると、そのぶん重量が出るため、強度の面での課題が出てくるとのことで、商品化するとなれば、また新たなチャレンジとなる。

 環境への意識が高まっている昨今、マイボトルを活用している人も増えてきているが、飲み物の風味にもこだわりたい人にとっては要注目なアイテムと言えるだろう。

300mlのボトルはホットの利用を想定して広い飲み口となっているが、500mlのボトルはアイスでの利用を想定し、氷が出にくいように小さめの飲み口が採用されている
従来品(右)は底面がPET樹脂で塞がれていたが、新商品(左)はステンレスの板を溶接することで強度が高められ、長く使えるようになっている