インタビュー

国内トップのデリバリーサービス実現を目指す「menu」、au経済圏でKDDIと連携強化

左から順にKDDI株式会社 パーソナル事業本部 マーケティング統括本部 auスマートパス推進部/auスマートパス推進グループ グループリーダー 里隆弘氏、menu株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 大野高宏氏、同 代表取締役副社長 兼 CEO 二ノ宮悠大朗氏

 デリバリーサービスを展開する「menu(メニュー)」は、2021年6月1日にKDDIと資本業務締結を開始。両社はau会員基盤を基軸に、menuの経済圏の拡大のほか、menuアプリでのau PAYへの対応、auスマートパスプレミアム会員向けの特典として「配達料無料」とするなど、au経済圏における連携を強化してきた。

 さらに2023年4月28日には、menuの親会社レアゾン(レアゾン・ホールディングス)も加わった3社で資本業務提携を強化。

「menuを国内市場トップのデリバリーサービスへ成長させる」としており、ねらいや目指す姿について、menu 代表取締役社長 兼 CEOの大野高宏氏、menu 代表取締役副社長 兼 CEOの二ノ宮悠大朗氏、KDDI パーソナル事業本部 マーケティング統括本部 auスマートパス推進部/auスマートパス推進グループ グループリーダーの里隆弘氏に伺った。

menuのサービス内容とは

 menuはアプリ1つで、デリバリーとテイクアウトを利用できる。フードデリバリーを中心として、ユーザー、店舗、配達員をつなげるデリバリープラットフォームを提供。飲食店のほか、コンビニ、百貨店、コストコなど領域を広げており、グルメや食料品・日用品を注文できる。

 店舗から見ると、フードテック、店舗DXだという。店舗の面積を広げなくても商圏を拡大でき、売り上げを上げるチャンスとなる。

 menuの大野氏は、「店舗さまにお料理を作ることに集中していただきたいと考えています。集客も決済も配膳もmenuが担うことで、より美味しい料理を提供することに集中することができ、ユーザーに喜んでもらえればと思います」と語る。

 配達員には、新しい働き方を提供する。スマホ1台で人間関係がなく、好きな時間にすぐ働けるため、満足度も高いという。「いかに1時間あたりの報酬、1日あたりの報酬を上げていくかも、ぜひ取り組んでいきたい」とのことだ。

ユーザー、店舗、配達員をつなげるデリバリープラットフォームを提供するmenu
配達員はスマホ1台で好きな時間にすぐ働ける

KDDIとの資本業務提携でau会員基盤を基軸にmenuの経済圏を拡大

 menuとKDDIは、2021年6月1日に資本業務提携を開始。当時3200万を超えるau PAY会員に対して、au PAYアプリのミニアプリへのmenuの追加や、2021年7月中旬より「menu」アプリのオンライン上の支払い方法としてau PAYに対応。

 さらに、会員数1200万超を有するauスマートパスとの連携による「menu」の注文率向上への寄与や、加盟店開拓のサポートにより、au会員基盤を基軸に、menuの経済圏の拡大をしてきた。

 一方menuも、au経済圏へ貢献。2022年6月以降には、auスマートパスプレミアム会員向けに、menu配達料無料特典を提供するなど、相互送客を強化してきた。menuアプリでau IDを連携したユーザーは、2022年6月以降で約2倍に増加。menuからスマートパスプレミアムへの送客数は約30倍に増加したという。

 また配達員の報酬も、au PAYで受け取ると報酬手数料が無料になることから、約半数がau PAYで出金しているそうだ。

auスマートパスプレミアムとmenuアプリ画面で相互送客を実施
au PAYアプリにmenuのミニアプリ追加

 そこで2023年4月28日、KDDI、レアゾン、menuの3社は、資本業務提携をさらに強化することを発表。これによりmenuは、KDDIが50.6%、レアゾンが49.4%の株式を保有するジョイントベンチャー(合弁事業)となった。

拡大を続けるフードデリバリー市場。ズバリ他社との差別化とは

 menuの二ノ宮氏は、「基本的にすべて内製化していること」を強みとして挙げた。ソーシャルゲームや広告事業をやっているレアゾンで内製化しているため、データを用いたレコメンドエンジンが実装できるという。料理ごとの口コミ機能も進めており、「口コミで判断する傾向がある日本人に向けて、注力している」と話す。

 また今、広げようと進めているクイックコマースの領域において、料理のメニューに比べると、商品数が多いことが課題という。「例えば豚肉を細切れで○百グラムといった、スーパーの裏側で調理しているような部分をいかにデータベース化していくかが大変でもあり、やりがいもある」と二ノ宮氏。

 こういった新規領域を内製できることは、店舗にとっても使いやすいものにできるため、強みだという。

 さらに、レアゾンではゲームのノウハウもあるため、ガチャのような楽しい「おまけ」機能も実装している。

 グローバルで開発しているプラットフォームもある中で、経営グループ連携があることも他社との差別化ポイントだと、二ノ宮氏は語った。

2000円以上注文し、商品の口コミをすると「おまけ」のガチャを回せる。賞品はPlayStation5本体や、Nintendo Switch本体、menuクーポンなど(menu Webサイトより)

サービスとしてのクオリティを高める仕組み

 大野氏は、「お客さま満足度は順調に伸びている」と語る。店舗とユーザー間で大きなミスがあった場合はすぐに、ユーザーへ次回使えるクーポンを提供。店舗には改善要望を伝えるなど、プラットフォーマーとして右から左へ紹介するだけのスタンスとは逆のことを、サービス提供者として行なっているという。

 また、どんなユーザーがたくさん注文しているのかといったデータ解析をしており、ロイヤルカスタマーに適切なレコメンドを行なうなど、満足度が上がるような取り組みをしているそうだ。

「専門の人員チームを立ち上げてトラブル対応やお客さま対応をするほか、テクノロジーの会社として、クレジットカードの使用履歴から不正注文の可能性があるかも確認しています」と二ノ宮氏。

 専門のデータサイエンティストチームが入りアルゴリズムを強化する2軸で進めており、人とテクノロジーの力により、お客さま満足度は毎月上がっていっている状況という。

配達員の満足度を高める仕組みも

 店舗とユーザーを結ぶ配達員の満足度を高めるために、まずは登録の段階でマニュアルを用意し、分かりやすくしている。マニュアルは更新され続けており、もし分からないことがあれば、リアルタイムで問い合わせに対応する。

 またKDDIとのシナジーを活かして、働いた直後から手数料無料ですぐに引き出せるようにしている(au PAYで受け取ると報酬手数料が無料になる)。「今日の夜、飲み会があるからお金を稼がなきゃ」という場合も、2時間ぱっと働いて飲み会のお金を稼ぐ、ということも可能だ。

 さらに大野氏、二ノ宮氏も、自ら配達員をしているという。「配達員の気持ちが分かり、どんなユーザーが注文しているのか、実際にお会いして知ることができる」とコメント。配達員を経験することで、よりおもてなし感のあるマニュアルを作成するのに役立っているとのことだ。

スマホ1台で好きな時間に働くことができる配達員(menu Webサイトより)

国内トップのデリバリーサービス実現に向けて

 国内トップのデリバリーサービス実現に向けて、コンビニなどで取り扱っていない商品の拡充や、外国人観光客などインバウンドへの対応、レコメンドの精度を上げていくとしている。

 menuを使ったことがない人に対しては、スーパーの店頭で体験してもらう、すでに会員サービスがあるauスマートパス・auスマートパスプレミアムと組むなど、ハードルを下げる手段を講じていくという。

 KDDI パーソナル事業本部 マーケティング統括本部 auスマートパス推進部/auスマートパス推進グループ グループリーダーの里隆弘氏は、「menuは巨大なフードコートみたいなもの。飲食店の料理とコンビニの飲み物など組み合わせて注文したり、家族の好みがバラバラでもそれに合わせて注文できる。ユニークな体験を追求していきたい」と述べた。

 3社は、顧客基盤の拡大や、KDDIのアセットを活用した「menu」配達員へのサービス提供、多彩なジャンルの加盟店開拓などを通じ、ユーザー・配達員・加盟店の3者それぞれが「三方よし」となるデリバリーサービスプラットフォームの構築を目指すとしている。