インタビュー

foodpandaのライダーが食べ物以外もデリバリー、「pandamart」登場の裏側

Delivery Hero Dmart Japan 新規事業開発本部 本部長・執行役員の佐藤丈彦氏

 コロナ禍において日本でも都市部を中心に定着しはじめたフードデリバリーサービスだが、消費者目線で見れば、注文して30分以内に届けてくれて嬉しいのは食べ物だけではない。そんなニーズに対応しはじめたのが、フードデリバリーサービス「foodpanda」を展開するDelivery Heroだ。

 同社では、海外では「Dmart」、日本では「pandamart(パンダマート)」というブランド名で日用品を素早く配達するサービスをスタートしているが、どんな狙いでこうしたサービスを開始したのか、pandamart事業をリードする佐藤丈彦氏(新規事業開発本部 本部長・執行役員)に伺った。

――まず最初にfoodpandaのサービス内容について教えてください。

佐藤氏
 東南アジアだったり、アジアを中心に展開しているブランドで、母体としてはDelivery Heroというドイツ・ベルリンに本社を置く会社が運営しているデリバリーサービスになります。最終的にはさまざまな方に笑顔を届けるというコンセプトでレストラン(からのデリバリー)事業を展開しているのが、まずはベースにあります。

 日本はどちらかというと、foodpandaの中でも後の方にスタートした国ではあるんですが、例えばシンガポールではフードデリバリーやDmart、日本ではpandamartというダークストアを活用したクイックコマースビジネスがかなり進んでいて、知らない方がいないぐらい、生活の一部としてご利用いただいています。あとは、日本でもShopsと言って、レストラン以外の日用品などを販売されている方にも出店いただけるようなビジネスであったり、pandaproと呼ばれるようなサブスクリプションビジネスであったり、さまざまなビジネスが乗っかっているプラットフォームがfoodpandaになります。

 日本ではこれから入っていく新しいビジネスもあるので、まだまだ若い会社ではありますが、そういった新しいビジネスを日本向けにローカライズしながら拡大していく予定です。

――日本ではフードデリバリーもまだまだこれからといった印象ですが、日用品など、食べ物以外も手掛けるようになったきっかけみたいなものはあるのでしょうか。

佐藤氏
 我々のお客さまのニーズの中に、やっぱりレストラン以外にも何でも揃うクイックコマースと呼ばれる即時配達で届けて欲しいというニーズが、例えば東南アジアだとかその他の地域でも、かなり高いというのが分かってきているので、そこも含めて参入が決まってきているというのもあります。

 それから、基本的にはライダーさんのロジスティクスという面がビジネス拡大をするための要素として大きく、それを中心に我々のエコシステムが回っているんですね。ライダーさんの目から見たときに、昼と夜だけの需要で、それだけでは稼げないという課題もあり、それを分散させるためにも常にショッピングができる仕組みを作りながらエコシステムを回す、という狙いがあります。

――事業として先行しているシンガポールなどでは、レストラン系と日用品系の利用の内訳はどのような比率になっているのでしょう?

佐藤氏
 具体的な数字はお伝えできませんが、まだまだレストラン事業の方が割合としては大きいです。

――都市部にダークストアを設置しはじめましたが、なぜ自前で用意することにしたのでしょうか。

佐藤氏
 いくつか理由があるのですが、大きな理由としては我々が価格を設定できるということと、在庫切れが発生しないということの2点です。

 レストラン事業がそうですが、価格設定は出店いただくベンダーさんにお任せしているのですが、手数料をプラットフォーム側へ支払うので、その分を元の価格に上乗せして販売されるお店も正直、いらっしゃいます。そういう意味では、お客さまに向けて適正な価格を提示できない場合も結構あるんですね。その点、我々が在庫を持ち、我々が価格設定することで、その価格の適正化をしっかりと管理できるようになります。

 在庫のところについては、コンビニさんやスーパーさんにも出店いただいていますが、オフラインでも同時に販売されているので、一足早くオフラインで買われる方がいると、お客さまが注文いただいたときに在庫切れが発生してしまう可能性があります。そういう意味では、デリバリー専用で行なっている我々がしっかり在庫を持ち、データで管理することで、在庫切れが起こらなくなります。

 スピードの面でも、ストア内でのピッキングを効率的に行なえるようにして、すぐにライダーさんに手渡す形にすれば、タイムリーにご提供できるようになります。

――こうしたダークストアの出店は、やはり郊外よりも都市部が優先されることになるのでしょうか。

佐藤氏
 そうですね。基本的には人口密度が高い都市部に出店することが、おそらくこのビジネスモデルとの親和性が高いという風に思っています。当然、人口が少ない山奥にも商品を届けたいとは思うんですが、ライダーさんが注文の多いところに集まってくださるので、短時間で何回も仕事をこなせる都市部ということになっていきます。

――フードデリバリーについては、国内では出前館やUber Eatsといったブランドが先行しており、さらにWoltやDoorDashとさらなる外資の参入もある状況ですが、御社としてライバルだと考えているのは、どういった事業者なのでしょうか。

佐藤氏
 大きなくくりで言うと、スーパーさんやコンビニさんも競合になってきます。要はオンラインに限らず、30分という限られた時間の中で、いろんな選択肢があるんですね。家の向かいがスーパーですとなると、もう完全にスーパー一択になってしまいます。数分歩けばコンビニがありますとなると、そこで完結してしまうかもしれません。

――フードデリバリーの事業者は、さほどライバルだとは思っていないのですね。

佐藤氏
 はい、まだその段階には達していないというか、さまざまなプレイヤーの方と一緒にマーケットを広げていく運命共同体のように今は捉えています。なぜなら、オンラインでデリバリーで物を買うということ自体が、まだまだ日本では浸透していないと思うんですね。これから浸透していくという過程の中で、この小さい市場を取り合うのではなく、市場自体を大きくしていくことが必要です。もちろん、他社よりも優れているところをちゃんと提示していかないといけませんし、最終的にはお客さまに選んでいただけるように引き続き努力していきます。

――日本で開発した仕組みを海外でも展開していくというようなことは起きそうですか?

佐藤氏
 スタートして間もないですが、例えば、在庫切れを起こさないための仕組みやシステムは日本の方が何年も進んでいると思います。そういったものは、我々が日本で用意しないといけないということで、ローカルで動いているのですが、フレッシュさが求められる食品ですとか、在庫切れをしっかりと潰していける仕組みができると、それはおそらくアジア各地でも展開できる技術かな、と思っています。

――ストア内ではスマートフォン型の端末でオーダーをチェックしながら商品をピックアップしていましたが、社内ではITの活用を大きく意識されているのでしょうか。

佐藤氏
 そうですね。どうしても手作業にすると入力間違えのような人的なミスも発生してしまうので、そこを最小限に抑える形でシステム化を進めています。ただ、大手ECサイトさんのように大きな倉庫で運用する時に必要な仕組みと、我々のようなコンビニサイズの店舗で必要な仕組みは異なってきますから、そういう意味では社員の経験に頼っていく部分もあり、システム化と現場のオペレーションのバランスを取りながら、物の配置などを改善していっています。

――現状の課題はありますか?

佐藤氏
 拠点(ダークストア)を、いかに必要なところに設置できるか、です。アクセスが良くて、自転車を停められるような物件となると、そこはみんなが欲しい物件ですよね。エリアを広げていくためにはクリアしなければいけない課題です。

 将来的には1回あたりの購入単価を上げていく必要もあります。お客さまに買っていただく中で、どういった商品が求められているのか、どういった商品が足りないのかを見定めていかなければなりません。取り扱い商品の種類も増やしていきますし、必要な在庫の量も調節しながら、そこの構成は常に改善しながら進めていきたいと思っています。

 最後にもう一つあるとすると、我々はライダーさんと一緒にビジネスを作っていますから、そういったライダーさんにfoodpandaのサービスを使うことで、しっかりと稼げて、一緒にやってて良かったなと思ってもらえるような環境を同時に構築していく必要があります。

――品揃えの面で直近で追加を検討されているものはありますか?

佐藤氏
 やはり、アルコールを届けて欲しい、という気持ちは絶対にあると思うんですね。今は名古屋と大宮で販売を開始したばかりですので、そこを早く全拠点に展開したいですね。それから、今、冷凍食品はものすごく売れているんですが、生鮮食品なども取り扱っていきたいですね。

――では、今後の展開にも期待しています。ありがとうございました。