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ロッテ、チョコレートと幸福度の関係性を調べる研究所を設立

2024年1月30日 発表

代表取締役社長 執行役員の牛膓栄一氏(左)とちょこっと幸せ研究所 責任者の中村準氏(右)

 ロッテは、チョコレートと幸福度の関係性を研究する「ちょこっと幸せ研究所」を2月1日に設立すると発表した。

 同社では、チョコレート事業が60周年を迎えることから、チョコレートに期待される幸福度向上との関係性を解明することで、社会や個人のウェルビーイングに貢献することを目指し、今回の研究所を設立することにした。

 研究所の設立を前に、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司氏から幸福度を向上させる「幸せの4つの因子」のうち「ありがとう因子」「なんとかなる因子」にチョコレートが寄与する可能性があるとの助言があり、同氏監修の下で「チョコレートの喫食と幸福度に関する調査」を実施。

 同調査においては、他の菓子と比べ、チョコレートには「他者とのコミュニケーション時の幸福度向上」や「前向きな気持ちの向上」といった幸福を構成する要素を向上させる可能性があることが分かり、同研究所において自社内の研究開発や脳科学、社会心理学といった領域の専門家と連携し、実証実験を通じて仮説を検証していくことになった。

 同研究所は、こうした研究内容を広く伝えていく役割も担っていく。ビターチョコ、ミルクチョコの妖精という設定のオリジナルキャラクター「こちょこ」「ぐうちょこ」なども活用して情報発信を行なっていく。

研究所キャラクターの「こちょこ」(上)と「ぐうちょこ」(下)

 1月30日に開催された発表会では、代表取締役社長 執行役員の牛膓栄一氏が1964年2月の「ガーナ」発売以来、後発メーカーとして今までにないものを販売して多くの人に喜んでもらいたいとして、バッカス・ラミー、クランキー、パイの実、コアラのマーチ、トッポ、ZEROなど、さまざまな新商品開発と工夫をこらしたプロモーションによって市場を作ってきたことを紹介。

 円安や原材料高といった逆風がありながらも、直近の2022年~2023年では、チョコレート市場全体が前年比104.6%となっているのに対し、同社としては106.3%、ガーナでは108.6%と好調に推移している。

 しかし、昨年半ば実施した値上げに際しては、10月後半まで売れない状況が続き、一時は後悔もしたが、その後、気温が寒くなると売れ行きが回復。この際、チョコレートには価格じゃない何か、他の食品とは異なる価値があるのではないかと考えたという。

 そこで、チョコレート事業において「もっとチョコのこと Sweet at Heart」というスローガンの下、「チョコの可能性を創り、届け、伝えることでウェルビーイングに貢献し、時代を社会を、もっと楽しく前向きに」というパーパスを設定し、60周年に向かうことにしたとしている。

 同社では、具体的な活動の骨子として、カラダの健康、ココロの幸せ、サステナブルの3つのテーマを掲げているが、今回の取り組みはココロに関するものとなる。

ロッテの代表的なチョコレート商品

 続いて登壇したちょこっと幸せ研究所 責任者の中村準氏は、直近の10年で国内のチョコレート市場が大きく伸長したことを紹介。2010年頃からカカオに含まれるポリフェノールの健康効果が認知されはじめ、それまで体に良くないと考えられていたチョコレートの価値が見直され、逆に健康のためにチョコレートを食べるという行動が生まれたと指摘する。

 こうしたチョコレートの魅力について調査を行なったところ、「お腹だけではなく、心も満たしてくれる唯一無二のお菓子」というところに改めて気づき、昨今の人々が求めるようになってきたウェルビーイングの概念において、これまで重視されてきた身体と客観とともに、精神と主観という視点をかけ合わせ、持続的に良好な状態を保つことの重要性について考えるようになったという。

 そこで、前野氏などを外部パートナーに迎え、チョコレートと幸せの関係をさまざまな角度から検証しようというのが今回の「ちょこっと幸せ研究所」設立の目指すところとされている。

 中村氏によれば、チョコレートを食べる時間やシーンによる幸福度の変化や、品質の違いによる幸福度の変化といった研究テーマを設定。具体的には、幸せホルモンとも言われるセロトニンを使った実証実験や、脳波を使った実証実験などを行なっていく。

 同氏は、「過去5年でロッテのチョコ事業は約110%伸長してきたが、今後5年はこの取り組みを加えることで120%ぐらいの伸長を果たしていきたい」としており、エビデンスを積み重ねることで機能性表示食品として販売することなども視野に入れながら取り組んでいきたいとしている。

 その後、オンライン中継の形で行なわれた前野氏と中村氏によるトークセッションでは、研究所の設立に先立ち昨年9月に実施した調査の概要が紹介された。

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司氏がトークセッションにオンライン参加

 調査によると、チョコレートをシェアしたりすることが他者とのコミュニケーションにおいて幸福度の向上に寄与する可能性があることや、もらった相手への好感度が上がる傾向があること、さらにはチョコレートを持っているだけで気分が上がると感じやすいこと、チョコレートを食べる頻度が2~3日に1回以上と、比較的高い頻度で食べている人ほど幸福度が高い傾向があることなどが分かったという。

 前野氏は、こうした人々の意識の背景には「チョコレートの成分だけでなく、チョコレートを売っている会社の文化を作る努力が、シェアすることが“ありがとう因子”に関係する幸せに繋がってきたのではないか」と指摘。「チョコレートを食べる人の幸福度が上がったのか、幸福度の高い人がそういう食べ方をしているのか、さらに研究する余地はある。でも、少なくとも相関があることは分かっており、チョコの食べ方を工夫することで幸福度が上がる可能性はある」と述べ、研究をさらに一歩進めていく意向を示していた。