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日清食品、「完全メシ」で栄養の社会課題解決~ファミレスや宅配ピザ向けも開発中

2025年3月24日 取材
「完全メシ」をアピールするフットボールアワーの2人

 日清食品は3月24日、「完全メシ」大試食会と題した発表会を開催し、「完全メシ 汁なしカップヌードル」を披露。ビヨンド事業部 マーケティング部 部長の中村洋一氏が完全メシの将来の展望について言及した。

 中村氏は、「チキンラーメンが発売された1958年は戦後の食べ物不足により健康悪化につながっていた時代だった。現在の食の環境は大きく変化し、食べ物が廃棄されることも多く、健康悪化につながっている時代となっている」とした上で、「我々食品メーカーとして、飽食の時代に何をすべきかに立ち返り、完全メシの開発に着手した」と語る。

 オーバーカロリーや隠れ栄養失調、フレイルといった社会問題に対する一つの解として完全メシを提供することで、好きなものを、好きなときに、好きなだけ楽しめる世界を実現し、日本を未病対策の先進国にしていきたいという。

ビヨンド事業部 マーケティング部 部長の中村洋一氏

 完全メシでは、同社がこれまでに培ってきた技術や知見を駆使した「最適化栄養テクノロジー」を用い、カロリー、塩分、糖質、脂質をコントロールしながら、たんぱく質(P)、脂質(F)、炭水化物(C)を理想的なバランスに整え、日本人の食事摂取基準で設定されたビタミンやミネラルなど33種類の栄養素を含んだ食品を開発。さらに、製法を工夫することで、栄養素独特の苦みやエグみを抑え、しっかりとおいしさも実現している。

 こうした最適化栄養テクノロジーは、同社の社員食堂にも実装されており、1食あたり平均500kcal、食塩相当量3.0g未満でありながら、理想的なPFCバランスで33種の栄養素を含んだ食事が提供されている。

 とりわけ、とんかつ定食については、一般的なものは1000kcalを超えているのに対し、同社の社員食堂のものは473kcalと半分以下になっているほか、食塩相当量や飽和脂肪酸の量も少なく抑えられているという。

 こうした方法論に基づいて商品化されいているのが「完全メシ」ということになる。中村氏によれば、発売から2年半が経ち、2024年度末にはシリーズ累計で4000万食を突破し、2025年度には100億円ブランドに成長する見込み。

 商品のラインアップとしても、カップ麺、カップライス、カップスープ、レトルトといった常温商品のほか、冷凍食品も多数ラインアップ。ジャパネットとシニア世代向けの商品を共同開発して1月から販売しているほか、ファミリーレストランや宅配ピザチェーンで提供するメニューについても開発中とのことで、今夏以降に提供される見通しだ。

 こうした完全メシの価値は、健康経営の強化に取り組む企業からも注目されており、同社では25社で給食型、75社で設置(自動販売機)型の社食事業も展開している。

 中村氏は、既存のパッケージ型の商品に加え、小売店の店頭に並ぶ弁当や惣菜のビジネスへの参入や医療との連携なども視野に入れており、トヨタ自動車が静岡県裾野市に建設中の実験都市「ウーブン・シティ」においても同社が食のインフラを担い、最適化栄養食を24時間365日食べられるようにするとのこと。

 同氏は「ここまで示すモデルは日本におけるものだが、当然このビジネスモデルは海外にも展開することができるので、準備を進めている」としている。

 発表会の後半には、新商品のテレビCMに出演するフットボールアワーの後藤輝基と岩尾望が登場し、「完全メシ 汁なしカップヌードル」をはじめとする完全メシ7品を次から次に試食。

「完全メシ 汁なしカップヌードル」については、「慣れ親しんだカップヌードルの味。栄養のバランスを考えてあっさりしていると残念だけど、カップヌードルのガッと来る味がそのまま残っているのがいい」(後藤)と高評価。

「完全メシ 汁なしカップヌードル」の試食用サンプル

 中村氏によると、「完全メシ 汁なしカップヌードル」では、麺をミルフィーユのように3枚重ね合わせる“三層麺製法”が用いられており、真ん中の層にたんぱく質や食物繊維、カルシウムなどを入れ、包み込むことで栄養素を逃さず、苦みやエグみを感じさせないようにしているとのこと。

 実際に食べてみるとよく分かるが、オリジナルのカップヌードルのジャンクフードっぽい味わいもしっかりと残しており、それでありながら完全メシ仕様のヘルシーさを実現していることに驚かさせる。

 3月18日に発売された木村屋總本店との共同開発商品「完全メシ あんぱん」については、「普通においしいあんぱん。これが完全メシというのがいい」(岩尾)とコメントしていた。

「完全メシ あんぱん」の試食用サンプル

 共同開発した木村屋總本店 代表取締役社長の木村光伯氏によれば、木村屋のあんぱんでは米と麹と水をあわせた“酒種”が用いられているが、今回の商品でも酒種を使用し、オリジナルのしっとりもっちりした生地をどう再現するかにこだわって取り組んだが、今までに使ったことのないような原料を使うなど、苦労しながらも気づきも多かったという。

木村屋總本店 代表取締役社長の木村光伯氏

 そのほかにも5品を試食したフットボールアワーの2人だが、一口食べては片付けられてしまうことが続いたことから、「想定台本には腹いっぱいと書いてあるが、まだまだ食べたい。味のかぶるものもない。麺であったりごはん類であったり、毎日食べても飽きない」(後藤)、「せっかくバランスのいい完全メシなので皆さん落ち着いてゆっくり食べてほしい。あわてて食べないほうがいい。味わって食べてほしい」(岩尾)と発表会の進行にクレームを入れつつ、商品の魅力をアピールしていた。