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サントリー、スマホタッチで支払える「ジハンピ」対応自販機を全国展開

2025年3月27日 発表
「ジハンピ」対応の自動販売機

 サントリービバレッジソリューションは3月27日、スマートフォンをタッチすることでキャッシュレスで購入できる自動販売機を順次全国展開すると発表した。

 同社では、自販機キャッシュレスアプリ「ジハンピ」を開発。アプリを起動し、PayPayやクレジットカードなど13種類のなかから支払手段を決め、楽天ポイントなど、どのポイントサービスにポイントを貯めるかを選択し、自販機のリーダーにタッチすることで決済が行なえる。

 2024年12月から北海道エリアで先行展開し、ユーザーや設置先から好評だったことから、年内に15万台の導入を目指すことにしたという。サービスの本格展開にあわせ、「ジハンピ」アプリをダウンロードすると、対応自販機の商品の中から好きな飲料が3本無料になるキャンペーンも実施される。

3本無料キャンペーン

 アプリのダウンロードは必要になるが、名前や年齢、メールアドレスといった情報の登録は不要で、SMS認証と支払い方法の連携のみで利用を開始できることから、同社では「最短60秒で購入できる」とアピールしている。

ジハンピ対応の自販機のリーダー部分

 27日に開催された発表会では、代表取締役社長の森祐二氏とマーケティング本部 副部長の井上尊之氏が新サービス導入の狙いを説明した。

代表取締役社長の森祐二氏(左)とマーケティング本部 副部長の井上尊之氏(右)

 森氏は、飲料自販機の市場の動向について、「コロナの影響を受けた2020年に売上が大きく減少し、人流の回復が徐々に進むなか、自販機の市場は残念ながら未だ回復できていないのが現状」とする一方、「コンビニエンスストア約6万店に対し、自販機は約210万台が存在しており、圧倒的な顧客接点を持ち、非常に重要な事業チャネル」だと指摘する。

 これまで同社では、自販機専用商品の開発やAI活用による品揃えの最適化などによるラインアップ強化や、社長のおごり自販機やSUNTORY+といった法人サービスの開発に取り組むことで新たな価値提供を行なうとともに、オペレーションの最適化を行なうことで基盤強化を進めるという事業戦略に取り組んできたが、2025年はキャッシュレス化に最注力する方針。

2025年からの自販機事業戦略

 同氏は、コンビニエンスストアでは9割以上がキャッシュレス対応となっているのに対し、自販機は4割止まりとなっており、キャッシュレス決済ができないために購入を諦めたとする人が3割に上るという調査結果を紹介し、キャッシュレス化の遅れが機会損失になっているとして、ユーザーの利便性向上を図るためにキャッシュレスへの対応を加速することが必要不可欠だとする。

 しかし、最大のネックになっているのは導入コスト。キャッシュレス決済に対応させるための機器を導入していくには、機材費や運用コストに加えて専門業者による作業を行なうコストもかかってくることから、一定以上の売上がある設置先にしか導入できないという。

 井上氏によれば、今回導入したソリューションはスマートフォンによるキャッシュレス決済に特化することでコストを抑えている。従来型はカードタイプへの対応を前提としているため、自販機側の端末が高機能である必要があり、これが高コスト化と購入手順の複雑化の原因になっていたが、必要とされる処理の大半をスマートフォンとサーバー側に担わせることで、自販機側のシステムを最小限の構成に。

鍵となったのはスマートフォンの活用
ジハンピ対応の自販機に搭載される通信モジュール

 システムをシンプルにしたことで、自販機自体を交換することなく、5分ほどの作業で既存の自販機をジハンピ対応にできるというメリットも生まれ、年内に15万台というスピード感を実現できるのだという。

 自販機ラバーを自称する井上氏は、自販機の本来の価値について、「どこでも買える」と「すぐに買える」の2つを挙げつつ、現状では2割ほどしかキャッシュレスに対応しておらず、キャッシュレス対応していたとしても使い方が複雑で、2つの価値が失われてしまっており、「こんな不便な自販機は、もはや自販機ではない」いると嘆く。

自販機ラバーの井上氏が指摘する自販機本来の価値と現状

 ジハンピでは、単にキャッシュレス対応するだけでなく、すぐに買えるという使い勝手のよさにもこだわったという。購入の流れとしては、自販機の商品ボタンを押し、アプリを起動。自販機のリーダーにスマホをタッチすると、商品が出てくる。

アプリを起動し、決済手段と貯めるポイントを選択
自販機のリーダーにタッチすると商品が出てくる

 また、自社で新たにポイントプログラムを立ち上げて囲い込むのではなく、すでに普及している楽天ポイント、dポイント、Pontaポイント、Vポイント、WAONポイントに対応。1本購入ごとに1ポイントが付与されるほか、貯まっているポイントを支払いにも利用できるようにしている。

 井上氏は「ポイントが使えるところにチャンスがあり、お客さまのお役に立てる。いろんなポイントを貯めていらっしゃるが、しっかり管理して用途をしっかり決めていらっしゃるのはだいたい1ブランドだけだったりする。残りのブランドを意外と貯まっているが、しっかり管理できていなかったり、失効してしまったり、少額で使いきれなかったり、もったいない思いをしているお客さまも結構多い」と語り、埋もれているポイントを使える場を提供することで、同社にとってもユーザーにとってもメリットが出てくると指摘する。

 ジハンピのシステムは、井上氏を中心に5人ほどの若手のコアメンバーと関係者が連携し、3年かけて手探りで完成させたもので、キャッシュレス端末の開発については特に難しかったという。そうした苦労もあってか、途中でこみ上げる感情を抑えきれずに言葉に詰まる場面もあった。