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キリンビールの新製品「キリングッドエール」を一足早く飲んでみた。希少なホップを使った柑橘系の香りが印象的

2025年9月29日 実施
キリンビール「キリングッドエール」

 キリンビールは、10月7日に発売する次世代ビール「キリングッドエール」の先行試飲会「まったく新しいキリンビール キリングッドエール体験会」を実施した。試飲会ではマーケティングや開発担当者が特徴を伝え、ビアソムリエやキリンマスターブリュワーがトークセッションを行なった。キリングッドエールの価格はオープンプライスで、コンビニにおける想定価格は350mL缶で253円前後、500mL缶で330円前後。

キリンビール「キリングッドエール」

発売日: 2025年10月7日
容量: 350mL缶、500mL缶
アルコール分: 5%

「まったく新しい」をテーマにしたビール

 10月の酒税法改正を控えて多くのメーカーが「ビール製品の強化」を打ち出しており、キリンビールはその答えとして「キリングッドエール」を投入する。キリングッドエールは「まったく新しいおいしさ」を目指して、素材と製法にこだわって作られた麦芽100%のビール。

 開発のコンセプトに掲げたのは「プチ贅沢」「既存商品にはない新しさ」「明るい気持ちになれるビール」であり、それを踏まえて誕生したのが「はっとするほどフルーティーな味と香り、後味のよさ」を実現したキリングッドエールだ。マーケティング部の立野唯花氏は、商品名には2つの思いが込められており、「1つ目はキリンが目指したおいしいエールビール。2つ目は、現代を生きる皆様や日本の未来への明るい前向きな応援“エール”です。中味については、飲んだ瞬間に気持ちまで明るくなるような、そんな新しいビールの美味しさを目指しました」と説明した。

キリンビール株式会社 マーケティング部 新価値創造担当 立野唯花氏

希少な「Cryo Hop」を採用したエールタイプ

 ちょっとしたご褒美やいつもと違う美味しさ、幸せや明るい気持ちを届けるといったキーワードに合致するビールを作るために最初に着目したのが、苦味や香り付けのためにビール製造に必須の“ホップ”の選定。マーケティング部で中味開発を担当した宮下英理子氏は、華やかな香りを出すために「ホップをたくさん使ってしまうと、ホップ由来の渋みやざらつきなど、ネガティブな面も感じた」と話し、それらを解決するために選んだ一つが「Cryo Hop(クライオ ホップ)」という、特殊加工で香り成分(ルプリン)だけを取り出して濃縮したものだ。

世界有数のホップサプライヤーであるヤキマチーフ社の商品「Cryo Hop」。写真は工場で使うペレット状のもの

 このCryo Hopを使うことで、非常に華やかでフルーティーなビールが完成したが、オイル分とα酸が多いことから粘性が高く、製造工程において詰まりやすいという課題も表面化した。キリンビールでは扱ったことがなかったことから大量生産に向けて、仙台工場、取手工場、滋賀工場、岡山工場に設備投資も行なった。説明によると、発売までに設備は完成しなかったが、発売日を後ろ倒しにしないよう、現在は手作業でホップを投入して生産しているそうだ。

 製法で目新しいのは「ブライトアロマ製法」を取り入れ、“エールタイプ”のビールに仕上げていることだ。この製造方法はキリン独自のディップホップ製法によるもので、発酵開始のタイミングでホップを添加し、発酵過程でもホップをつけ込む製法であるとのこと。バランスのとれた心地よいホップの香り立ちを実現することができ、後味の渋みや雑味を抑えながら、ホップ由来のフルーティーさを存分に引き出すことに成功した。

 日本の一般的なビールは爽快な飲み口が特徴の“ラガータイプ”が多いが、キリングッドエールは華やかで味わい深い“エールタイプ”を選択している。

キリンビール株式会社 マーケティング部 商品開発研究所中味開発グループ 宮下英理子氏

ビアソムリエは香りが楽しめるグラスと発酵調味料を使った料理を提案

 トークセッションでは、日本代表としてビアソムリエワールドカップ2025に出場したビアソムリエの中島輝行氏、キリンビールのマスターブリュワーである田山智広氏が登壇して、キリングッドエールの魅力について語った。

ビアソムリエ 中島輝行氏(左)、キリンビール株式会社 マスターブリュワー 田山智広氏(右)

 中島氏はミュンヘンに滞在していた際に各国のブルワリー関係者と情報交換を行ない、今のビールに求められているのは一口目の爽快感やのど越しのほかに、少し個性のある、他とは違うものが求められているのが世界的なトレンドであると感じたそうだ。田山氏は中味開発者として担当した2002年発売の「キリン 毬花(まりばな)一番搾り<生>」をリリースした際に、試飲会で「ビールって香りなんかありましたっけ?」と聞かれたのがショックだったそうで、求められるのがのど越し優先だった時代から、その後のクラフトビール隆盛によって時代が少しずつ変化してきたことに触れた。個性的で特別なビールとしてクラフトビールがあるのだが、普段使いできるスタンダードで少し“いいもの”として提案したいのがキリングッドエールであることも話していた。

 その後は全員で乾杯の音頭に合わせて、キリングッドエールをグラスに注いで味わった。感想を聞かれた中島氏は、まず最初に“みかん”の香りが立ち昇るのが素晴らしいと答えていた。その香りを楽しむ場合は、チューリップグラスかワイングラスなど、飲み口がすぼまっている形状のグラスを用いるといいとのこと。合わせてみたい料理としては「銀鱈の西京焼き」を挙げた。エールは発酵調味料との相性がよく、付け合わせの葉生姜“はじかみ”を少しかじって飲むことで、口の中にジンジャーエールを再現したような味変も楽しめそうだと話した。

キリングッドエールで乾杯

中島輝行氏の感想

「色の印象もあるのですが、最初に飛び込んでくる香りが“みかん”ですね。みかんの明るい柑橘の香りにパーンと明るい印象を持ちます。次に感じるのは、木の芽のような少し樹脂ぽいもので、奥の方でローズマリーのようなハーブの香りがするかなというのが私の印象です。実際に飲んでみると、みかんとちょっとだけビワのような“和風”っぽい果物の香りと味を覚えます。ローストしてある麦からのほのかなキャラメルとかそういったトーンも見つけられます。最後はゴクンと飲んだ後にラガービールよりもエールの方が少し余韻がちょっと長く感じられるかと思います。上質なほうじ茶のような感じですね。滋味深い旨味にも似たようなものが口の中に残るかと思います。残ったかなと思ったらスッと消えていきます」

みかんの香りが心地よく、苦味の少ない飲みやすさ

 筆者もキリングッドエールを試飲してみた。缶をプシュッと開けると、中島氏が言っていたように“みかん”の香りが華やかに拡散する。レモンやシトラスのようにキリッとした香りではなく、陽だまりのような明るくほのぼのとした印象だ。飲み口はアナウンス通りのフルーティーな味わいで、苦味も少なく、ビールが苦手な人や女性にも受け入れてもらえるようなテイストだと感じた。少しだけ贅沢なスタンダード、それが表現されたビールだと言える。最後にトリビアとして教えてもらったのが、パッケージの聖獣麒麟のお腹がピンク色であること。一番搾りや晴れ風は赤なので、手に取って違いを比べてもらいたい。

柑橘系の香りが立ち昇るキリングッドエール