ニュース

三郎丸蒸留所、シングルモルトウイスキー「三郎丸IV THE EMPEROR」発売

2024年6月21日 発表

「三郎丸IV THE EMPEROR」(左)と「三郎丸IV THE EMPEROR カスクストレングス」(右)

 若鶴酒造(富山県)は、北陸最古の三郎丸蒸留所で製造したシングルモルトウイスキー「三郎丸IV THE EMPEROR(さぶろうまるフォース ジ エンペラー)」を本数限定で販売すると発表した。これにあわせ6月21日に都内で発表会が開催され、代表取締役社長 三郎丸蒸留所 マスターブレンダー&マネージャーの稲垣貴彦氏がプレゼンテーションを行なった。

 稲垣氏によれば、若鶴酒造では元々日本酒を製造していたが、第2次世界対戦により原料となる米の調達が難しくなり、2代目社長(稲垣小太郎氏)が米以外の原料を用いたアルコール製造の研究に取り組み、1952年からウイスキーづくりをスタート。直後の1953年には火事で設備が全焼するも、地域の人々の支援により半年で再建し、以来、ピートにこだわり、スモーキーさをウリにするウイスキーをつくり続けてきた。

 5代目となる同氏は、大学卒業後、IT企業に就職するも、1960年代に仕込まれた原酒の味わいに感動し、2015年に地元に戻り、ウイスキーづくりを志した。しかし、当時は設備が老朽化しており、ウイスキーづくりを継続するのが難しい状況で、2016年にクラウドファンディングで広く支援を呼びかけ、集まった3800万円超の資金で改修を行ない、見学者も受け入れられるほどきれいな蒸留所に生まれ変わったという。

代表取締役社長 三郎丸蒸留所 マスターブレンダー&マネージャーの稲垣貴彦氏

 同社がこだわるのは、ヘビーピーテッドモルトのみを使用したスモーキーな香りが特徴的な本格的なウイスキー。稲垣氏は「昔はピートが強いものは売れなかったが、今はスモーキーなものが人気になってきた。時代が追いついてきた」と語る。さらに、近年はジャパニーズウイスキーが世界から注目される存在となり、こうした背景を追い風に同社の売上においても、ウイスキーが日本酒を逆転している。

 今回の「三郎丸IV THE EMPEROR」は、三郎丸シリーズ第5弾となる商品で、アイルランドのハイランド地域の内陸のピートと、アイラ島の海のピートの2種類を仕込みに使用。木桶による発酵により、フルーティーさとモルティさが加わったスモーキーなウイスキーになっている。

 商品としては、アルコール度数48%の「三郎丸IV THE EMPEROR」(700ml)が1万5400円で1万2500本販売されるほか、アルコール度数60%の「三郎丸IV THE EMPEROR カスクストレングス」(700ml)が2万900円で1900本だけオンラインで抽選販売される。いずれも発売日は6月27日となる。

 稲垣氏によれば、「スモーキーなウイスキーということで、富山ならホタルイカの燻製、ビーフジャーキーが鉄板。ライムとジンジャーでカクテルにしてイタリアンにあわせることもできる」とオススメのペアリングを紹介。海外ではカクテルで飲まれることも多いことから、今後はWebサイトなどでカクテルレシピなども紹介していきたいとしている。

 稲垣氏は、同社が独自に取り組んでいるウイスキーづくりの手法についても紹介。地元の技術の一つとなる高岡銅器に着目した同氏は、お寺の鐘を作る鋳造技術を用いたポットスチル「ZEMON(ゼモン)」を制作。同氏によると、一般的なポットスチルは銅を叩いて曲げて作られており、数十年経つと穴が空いてしまうが、ZEMONは耐久性が高く、熱を逃しづらいことから従来のものの1/2のエネルギー使用量で済むという。

ZEMON

 このほかにも、地元のミズナラを使い、井波彫刻の技術を取り入れた樽づくりに取り組んだり、豊富な水資源を活用して屋根に散水することで温度管理を行なったりと、富山ならではの作り方にこだわっているとのこと。こうしたウイスキーづくりの様子は見学することも可能(完全予約制)で、同氏はJR城端線の油田駅から徒歩60秒という立地のよさをアピールしていた。

 6月22日~7月5日には、代官山蔦屋書店3号館1階(東京都渋谷区猿楽町16-15)でPOP UPイベントも実施される。同イベントでは、ZEMONをはじめとする三郎丸蒸留所の特徴を紹介する展示が行なわれるほか、土日限定でハイボール缶「三郎丸蒸留所のスモーキーハイボール」のサンプリングが実施される。