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サントリー、「金麦」シリーズを2026年10月以降にビール化

2025年9月29日 発表

 サントリーは、これまで新ジャンルとして販売してきた「金麦」シリーズを2026年10月以降はビール化すると発表した。金麦本体だけでなく、「金麦〈糖質75%オフ〉」についてもビール化される。

 酒税法上の定義では、麦芽の比率がビールでは50%以上、発泡酒では50%未満とされており、現時点では酒税額が異なるが、2026年10月には酒税額が一本化される。このため、ビールと発泡酒・新ジャンルの商品の店頭価格の差が縮まり、ビールの販売比率が高まることが予想されている。

 一方で安価で手に取りやすいエコノミー価格帯の商品に対するニーズも高まっており、同社では、価格については新ジャンルの価格帯のまま納得できる価値の強化を図ることで、エコノミー市場の活性化を目指すことにした。

 9月29日に開催されたビール事業のマーケティング施策に関する発表会では、常務執行役員 ブランド部門長 兼 ビール・RTD本部長の多田寅氏とビール開発生産本部 ビール商品開発研究部 開発主幹の水口伊玖磨氏が登壇し、その背景などが説明された。

常務執行役員 ブランド部門長 兼 ビール・RTD本部長の多田寅氏(左)とビール開発生産本部 ビール商品開発研究部 開発主幹の水口伊玖磨氏(右)

 多田氏は、1月~8月の実績を振り返り、ビール類市場全体が前年比95%と推計されるなか、同社としては市場を3ポイント上回る98%となったことを紹介。ザ・プレミアム・モルツは前年比90%となったものの、サントリー生ビールが113%、パーフェクトサントリービールが116%と好調だったこともあり、狭義のビールでは100%となった。

 エコノミーカテゴリーに位置づけられる金麦ブランドは、市場全体が92%となるなか、96%と善戦。多田氏は「大健闘」と評価した。また、業務用については、市場全体が95%と減速したのに対し、同社は102%と市場を牽引。プレモルの接点を維持しつつサントリー生ビールの取扱店舗を増加させたことが好調につながった。

1月~8月の実績

 同氏は2025年の方針として掲げた“ビールとエコノミーの両輪”の強化に引き続き注力していく方向性を示しつつ、各ブランドにおいての年内の施策を説明した。

 ザ・プレミアム・モルツについては、9月~12月にかけて4か月連続で限定品を発売することで接点の拡大を目指すとともに、ミシュランガイドと協力して品質訴求を行なっていく。

 サントリー生ビールについては、生ビールとしての認知を確立させるような施策を展開しつつ、取り扱い飲食店を年内に2万7500店まで拡大。早期に3万店を目指すとしている。

 金麦については、“日々、家で飲むのに一番ふさわしいビール類”としてのポジションを確立できたとしつつ、四季にあわせて味わいを変化させる金麦らしく、冬の金麦を展開するほか、季節限定商品を投入。冬の定番メニューの鍋料理との相性のよさを訴求していく。

 その後、多田氏は2026年10月の酒税改正の影響について、「ビールは減税、エコノミーは増税になり、350mlあたり54.25円に一本化される」が、価格差は縮小しながらも残るとの見方を示した。

 金麦が属するエコノミー市場は、1人あたりの購入量がビールより多く、安価な商品や価格に見合った価値を求めるニーズの高さを踏まえると、改めて活性化を図る必要があると指摘。「価格と価値のバランスが悪くなっており、価格以上に納得できる価値を出すこと、ビール化することで価値をつける」と、金麦のビール化の狙いを説明した。

 続いて水口氏が、金麦のビール化でこだわったところを説明した。

 同氏は金麦の進化の歴史を振り返りながら、「麦のうまみ」と「澄んだ後味」に磨きをかけてきたとし、ビール化においてもその2つの特徴が失われないようにこだわったとする。

 ビール化にあたり、麦芽の比率を高められることから、「麦のうまみの向上は期待される一方で、全体の味わいが増えることで後味が残りやすくなるという懸念があった」と、その難しさを表現。「これに対して、さまざまな醸造条件を適正化することで、金麦らしいすっきりとした後味をしっかりと保ちながら、麦のおいしさをさらに引き出し、麦のうまみを向上することで飲みごたえを強化する」と語った。

 金麦〈糖質75%オフ〉についても、「心地よい麦のうまみ」と「澄んだ後味」へのこだわりを生かしながら、金麦本体同様に飲みごたえとすっきりとした後味の両立を図り、糖質オフの物足りなさの解消を目指したという。

 今回の発表会では、ビール化された両商品の試作品の試飲も行なわれたが、いずれも新ジャンルや発泡酒にはない、ビールらしい本格的な麦の風味や飲みごたえを感じることができた。

 事前に行なった調査では、従来品の2倍近い購入意向が示されたとのことで、同社では手応えを感じている様子だ。

 なお、多田氏は「プレミアム、スタンダード、エコノミー、健康系の4つのニーズが市場に残っていく」とし、ザ・プレミアム・モルツをプレミアム、サントリー生ビールをスタンダード、金麦をエコノミーに位置づけていると説明。金麦の販売価格については、「金麦の価格を上げるとエコノミーニーズに応えられない。増税程度の転嫁を検討しているところ」だとしている。

 なお、現行商品同様に四季にあわせて味わいを変化させるかなどの詳細については検討中とのことで、しかるべきタイミングで発表するとしている。