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“ハンバーガーの作り方は教えない”マクドナルドの「ハンバーガー大学」とは?チームワークの秘訣は、人材育成がカギだった!

2026年9月2日 取材
マクドナルドの「ハンバーガー大学」を体験

 マクドナルドの店舗に行ってよく思うのは、スタッフが各役割ごとにきびきびと働いていること。また、大量の注文に対しスムーズに対応し、最近は空席を案内してくれたり、客席に商品を持ってきてくれることもある。これらの一連の流れを不思議に思う人もいるだろう。

 その秘密が、実は日本マクドナルドが社員およびアルバイトを含めたクルーに対して行なう「ハンバーガー大学」に詰まっている。同社は「マクドナルドはハンバーガービジネスではなく、ピープルビジネスである」という創始者レイ・A・クロックの考え方のもと、人材育成を事業運営の重要な基盤の1つと位置付けている。ハンバーガー大学では、リーダーシップやチームビルディング、マネジメントなどをテーマに、最新の教育理論や手法を取り入れたカリキュラムを実施。年間約1万5000人が受講しているという。

 このたび同社で7年ぶりに「ハンバーガー大学」の体験会を実施したので、その模様をレポートする。

 まず取締役 チーフ・ピープル・オフィサー 斎藤由希子氏がマクドナルドの「ピープルビジネス」と「ハンバーガー大学」について説明した。

日本マクドナルド株式会社 取締役 チーフ・ピープル・オフィサー 斎藤由希子氏

 斎藤氏は2020年代に入り、ブランドの刷新やメニュー強化、デリバリー・モバイルオーダーなど販売チャネルの多様化を進めたことで、店舗数はほぼ横ばいながら1店舗あたりの売上が伸び、売上は2025年9000億円に達したことを紹介。一方でデリバリー・モバイルオーダーなどで煩雑な注文も増えたことでオペレーションの負荷も高まっており、新型キッチンの導入や店舗レイアウトの変更といったハード面に加え、クルーの人材教育というソフト面の強化を進めているという。斎藤氏は「5年前にいたクルーが再び戻って働くとまったく別の会社ではないかと思うくらい、機材やオペレーションが変わっている」と語る。

マクドナルドの店舗数と売上高
注文の多様化でハード面、ソフト面の両面を強化

 そして、セルフオーダーなどの普及によって人員削減につながるのではということに対し、斎藤氏は「お客さまや働いている方との対話にもっと時間を費やすことができると考えている」と話す。それは創始者の「私たちはハンバーガーをお客さまに提供するビジネスではなく、ピープルビジネスでハンバーガーを提供している」という言葉を体現しているものだという。「まず働きやすく生き生きと楽しめる職場環境を作り、信頼関係や愛着心を高めることで、ブランドに対してコミットしてくれる従業員を増やす。そのうえで顧客サービスを向上させ、ビジネスの成長を目指していくという考えのもと進めている」と斎藤氏は語った。

マクドナルドのピープルビジネス
Feel-Goodな職場がビジネス成長の原動力

 従業員が安心して働け、やりがいや成長を感じられるようにトレーニングやキャリアパスなどを経て、退職してアンバサダー(顧客)になるまでを示した「クルージャーニー」が設定されており、そのなかで「ハンバーガー大学」は人材育成の中核を担う役割であることを説明。「ハンバーガー大学では、成長し続けられるようトレーニングやコーチングを行ない、働くうえでの動機づけと教育投資を行なっている」と斎藤氏は述べた。

クルージャーニー

 続いて、ハンバーガー大学 学長の中原薫氏が「ハンバーガー大学」について解説した。中原氏は冒頭、「ハンバーガー大学では、ハンバーガーの作り方は一切教えていない。教えているのは、年齢も性別も価値観も異なるメンバーをまとめ上げ、1つの強いチームにしていく力」と述べた。

日本マクドナルド株式会社 ハンバーガー大学 学長 中原薫氏
ハンバーガー大学で教えるのは一生もののリーダーシップ

 ハンバーガー大学は、1971年7月に日本1号店が誕生する前の同年6月に設立。中原氏は「『商品を売る前に、まず人を育てる』というピープルビジネスの信念が今も脈々と続いている」と紹介。現在は年間500超のクラスが開講されており、アルバイトのクルーから店長、FCの経営者までが受講。全国どの店舗でも全く同じQSCを届けられるのは、ハンバーガー大学が“知のインフラ”として機能しているからだという。

1号店より先にハンバーガー大学を設立

 中原氏は「一生ものとなるリーダーシップを養うことを目的に、リーダーシップ、チームビルディング、マネジメントなどを学ぶ。受講後は店舗で実践し、共通の価値観や育て合う環境を現場に広げていく。習得した論理的思考や対話は、マクドナルドを卒業した後も、社会で通用する一生ものの財産になる」と語った。

成長を循環させる設計思想

 そして筆者を含む参加者がその講座を体験。ハンバーガー大学 カリキュラムデザイン&デプロイメント マネージャー 佐藤三恵子氏がファシリテーターになり、4名が1つのチームで、協力し合いながら4分の制限時間内で折り紙のコップを見本通りに何個作れるかというワークを行なった。

日本マクドナルド株式会社 ハンバーガー大学 カリキュラムデザイン&デプロイメント マネージャー 佐藤三恵子氏

「見本通りの折り紙のコップを作る」というゴールに対し、「どのような役割が必要か」「どんなプロセスが必要か」「全員の力をどのように引き出すか」などを、チームで話し合いながら準備を行なう。簡単なワークではあるが、重要なのは「どのようにしたらチームのパフォーマンスが上がるのか」ということを考え、案を出し合い、実践すること。

ワーク内容

 実際に制作が始まると、うまく折れなかったり、作成したものの折り目が正しくなかったりと、苦戦する場面も。厳しい審査を通ってできあがったのは4個。それを踏まえ、2回目にもっとよい結果にするにはどうしたらよいかをチームで話し合う。各人の役割はどのようにしたらよいか、どんなことがコツなのかなど、改善に向け意見が出され、2回目を実施。すると、前回を上回る6個ができあがった。

1回目は4個出来上がった
チームパフォーマンスを向上させるためにはどのように取り組むかを話し合った結果、2回目は6個完成

 受講してみて、ゴールを達成するためにいかにさまざまなプロセスが必要かがよく分かり、方法や役割分担、改善のためのノウハウの共有など、チーム内でのコミュニケーションが大切なのかを体感できた。佐藤氏は「ワークを通じた気づきを、ぜひご自身の業務に落とし込んで考えてみてほしい」と語った。

 マクドナルドの成長やスタッフの強さが垣間見えた体験会だった。斎藤氏は「クルーや社員は日々のトレーニングを積み重ね、循環を生み出している。今後も人々の強みに目を向け、それぞれが力を発揮できるよう取り組んでいく」と締めくくった。