突撃!グルメ探検隊

「日本回転すし化計画」を進めるスシローの狙い

スシロータクシー

 スシローでは「日本回転すし化計画」と称し、いろんなものを回転寿司に見立てたプロモーションを実施してきた。直近では人気の寿司ネタをデザインしたラッピングタクシーを都内で走らせている。

 今回は、同プロジェクトを企画したコミュニケーション企画推進部 販促課の松川貴明氏に一風変わった施策の狙いを聞いた。

――まず、「日本回転すし化計画」をスタートした背景を教えていただけますか。

コミュニケーション企画推進部 販促課の松川貴明氏

松川氏:最初は2019年5月に山手線をジャックしたのが始まりです。ちょうどその年に中期経営計画が発表されて、都心の出店を強化するということが組み込まれたんですね。それ以前はロードサイド店が中心だったので、都心部での認知が低く、スシローの体験者数が少ないということもあったので、何かその都心部で大々的に知ってもらいたい、ということで始めたのがきっかけです。

 その際には出店強化を図る意図もあったので、単純な楽しい広告という部分もありますが、同時に都心部での出店地を募集するようなキャンペーンも行ないました。どこの駅に出店して欲しいか、みたいな。意外にも大崎が1位だったりしたんですが、そういった生の声を吸い上げるのもそうですし、単純にスシローの話題を都市部で増やしていくような狙いがありました。

2019年5月の山手線ジャック

 もう一つ、やっぱりスシローってお寿司とレーンが主役なんですね。タレントでもIPでもなく、レーンで勝負したい、というところがありました。なので、広告の中心はお寿司ですし、生活者に与えるスシローの存在価値と言いますか、安くておいしいものをお腹いっぱい提供するということがコアバリューだと思っていますので、それを広告で体現したいというところですね。

――どうして山手線だったのでしょう?

松川氏:山手線は毎日、通勤・通学で使う電車で、日本一乗客数が多い路線です。そういったメディアを使って楽しいことができるといいよね、と当時の担当役員とも話をしていました。

 企業側からのゴリゴリの提案ばかりの広告って、やっぱり見てるとちょっと鬱陶しくなりますし、しつこいと見なくなってしまいます。それよりも、生活の中にちょっと笑いを届けて、かつ印象に残して、それを日々見ることで、1回ぐらいスシローに行っておこうか、みたいな効果を見てみたいというところで実施することにしました。

 山手線全体を回転レーンに見立てて、都心全域をスシローにするというコンセプトでした。

――そして第2弾ではまた趣向を変えて……。

松川氏:直後の2019年6月になりますが、東京サマーランドの流れるプールとハウステンボスのウォーターロングスライダーを回転レーンに見立てた企画を実施しました。

第2弾は東京サマーランドとハウステンボスのプールで実施

 第2弾も同じような狙いではありますが、レジャーの後は外食の需要が高まるタイミングだと思うんです。友達や家族とプールに行ったり、レジャー施設や遊園地に行ったりした後、かなりの確率でそのままどこかで外食して帰ろう、みたいな。そういう流れになるので、その中で一番最初にスシローを想起してもらえるようにしたかったんですね。

 流れるプールも見方によっては回転レーンに見えますし、親和性も高いということで実施に至りました。

――今回はスシロータクシーということですが。

松川氏:実はその間にも渋谷をジャックしたり、名古屋の地下鉄の駅や阪急の梅田駅をジャックしたりもしていました。ただ、どうしてもちょっと広告的な要素が強かったりするので、純粋に楽しんでもらうようなことよりは、販促・告知という面が少し大きかったかもしれません。

渋谷ジャック

 ちょうどコロナの影響で人流が減っていたこともあり、誰にも気づいてもらえなかったんですが、(渋谷の)スクランブル交差点をぐるっと一周囲うようにメディアを買って、連動した形で寿司がグルグル回るっていう企画でした。

 コロナも落ち着いて来ましたし、皆さんに少しでもクスッと笑ってもらえるような企画ができるといいね、というところで今回のスシロータクシーを企画しました。なので、タクシーにはお寿司とタクシーを絡めたちょっと笑えるコピーを仕込んでいます。

――ラッピングのバリエーションは5種類で、うち1種類は100台に1台のレアバージョンが「わさびバージョン」ということですが、なぜわさびだったのでしょうか?

松川氏:わさび自体、お寿司にちょっとアクセントをつけるというような調味料なので、この企画にちょっとアクセントを与えることを狙いました。これは後付けになっちゃいますが、たぶんレーンで流れているお寿司とわさびの比率もそれぐらいだと思います(笑)。

――スシローに行くと価格帯でお皿の色が違っていて、そんなお皿の色をラッピングで再現しても面白かったのかな、と思ったのですが。

松川氏:実は東京都の広告条例もあって、フルラッピングはなかなか難しいんですよね。ラッピングできる面積が決まっているので。なので、統一感を出すという意味で、あの黒系のタクシーだけで展開する形になりました。

――先ほどちょっと笑えるコピーという話もありましたが、それ以外でのこだわりはありますか?

松川氏:いつもはレーンを上から見たようなデザインなんですが、今回は斜めから俯瞰したような写真を使いました。そしてタクシーなのでスピードも出ますから、お寿司が風を受けて動く疾走感をトリックアート的に表現する要素も入れていますので、そのあたりもじっくり見ていただけると嬉しいですね。

――しかし、このタクシーに乗っちゃうと、ほかのお寿司屋さんには行きづらいですよね。

松川氏:運転手さんとお話をしていて聞いた話なんですが、たまたま某焼肉チェーン店にやってくださいというご家族を乗せたそうで、子供がスシローのタクシーを見て、どうしてもスシローに行きたいと言い出して、そのご家族は目的地をスシローに変更されたそうです。某焼肉チェーン店さんには申し訳ないですが、そういったお話はチラホラあるみたいです。

――すでに次の企画も決まっているのでしょうか?

松川氏:そこはまだ何も決まっていないというのが実状ではありますが、社内でもこういった企画が好きな人も多いので、たぶんやるんだと思います(笑)。

――次も期待しています。本日はお忙しいなか、ありがとうございました。

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