ニュース

サントリー、常温の缶を使う業務用ビールサーバーを開発

2023年10月5日 発表

nomiigo

 サントリーは、常温の缶をセットして使用する業務用の新ビールサーバー「nomiigo(ノミーゴ)」のテスト展開を10月5日にスタートすると発表した。

 従来、飲食店での生ビールの提供においては、品質保持の観点から専用の樽が一般的に用いられていたが、今回発表されたビールサーバーでは、常温の缶から同社が“飲食店の生ビール”をうたう品質のビールの提供が可能となる。同社では、これにより樽生ビールサーバーの導入が難しかった店舗でも品質の高い生ビールを提供できるとしている。

 使い勝手としては、常温の缶を使用できるため、あらかじめ缶を冷しておく必要がない。冷えた缶をセットすることもできるが、常温の缶を使っても4℃程度のビールをクリーミーな泡とともに提供できる。

 1缶注ぎ切りとなっており、1杯ずつ開けたてでの提供が可能なほか、配管内にビールが残らないため、洗浄時のビールロスも最小化できるという。

 ビールを注ぐ手順は、350ml缶をセットし、「セット」ボタンを押してビールを注いだ後、「泡モード」ボタンを押して泡を被せ、「取り外し」ボタンで缶を取り外す流れ。

 メンテナンスについては、付属の専用洗浄容器に水を入れ、ビールを注ぐ際と同じようにセットして「洗浄」ボタンを押すだけで完了する。

 10月5日に開催された発表会において、ビールカンパニー マーケティング本部長の多田寅氏は、開発の経緯を説明。時代の変化に対応する部署として2021年4月に創設したイノベーション部では、第1弾として「ビアボール」、第2弾として「サントリー生ビール」を開発・販売してきたが、今回のビールサーバーは第3弾として企画されたものとなる。

ビールカンパニー マーケティング本部長の多田寅氏(右)とビールカンパニー マーケティング本部 イノベーション部の伊藤優樹氏(左)

 同社でコロナ前後の意識調査を行なったところ、外食頻度が高まっていることや、これまでビールがあまり飲まれて来なかった飲食店で飲用意向が高まっていること、飲む際にはビールの品質にもこだわる人が若年層を中心に増えていることなどが分かり、飲食店とタッグを組んで新たな提案を行なっていく必要があると考えたという。

 nomiigoを開発したビールカンパニー マーケティング本部 イノベーション部の伊藤優樹氏によれば、樽は開栓すると品質を長期間維持することはできず、同社では3日間の利用を推奨している。樽の容量は10~20Lで、サーバーを設置できるのは一定の販売量がある店舗のみとなっていた。

 実際に利用する際には、泡立てや配管のブローなどに使う炭酸ガスのボンベが別途必要になるが、こちらは通常のビールサーバーで使用される5kgや9kgのボンベが流用できる。炭酸ガスの使用量は通常のビールサーバーの倍程度になるが、1日10杯程度の利用であれば5kgボンベで半年ほど交換不要で使用できるとしている。

炭酸ガスのボンベを繋いで使用する

 ちなみに、moniigoのネーミングについては、「飲み頃」と「飲みにGO」に由来しており、iが2つ重なっている部分で仲間と一緒にビールを飲む姿を表現しているとのことだ。

 開発にあたっては、実際に樽生ビールサーバーを置いている飲食店に出向いて、どのようにビールが提供されているのかを研究。ビールをおいしいと感じるには泡の存在と温度の管理が重要だと分かったという。

 そこでnomiigoでは、常温の缶を使用しても4℃前後のキンキンに冷えた状態で注げるように工夫するとともに、現行の樽生ビールサーバーと同じ注ぎ口を使用。炭酸ガスを活用して、低い圧力でビールをおいしく抽出し、泡を作る際には圧力を高めてきめの細かい泡を作り、最後に高圧でブローして配管をクリーンに保つ“3ステップ圧力可変技術”を国内の協力メーカーとともに作り上げた。

常温の缶をセットしてもキンキンに冷えて出てくる

 発表会の壇上では、nomiigoを使用してビールを注ぐ様子も披露された。未開封の「ザ・プレミアム・モルツ」の缶をセットしてボタンを押すと、ビールサーバーの中で缶が上昇。準備が整うと、ビールの抽出ボタンが点滅から点灯に変わり、レバーを倒すとグラスに注げるようになる。その後、泡モードで泡をのせて、おいしい生ビールが完成。最後に取り外しボタンを押すと配管をブローする音が聞こえ、空になった缶が下に降りてきた。一連の動作は1分ほどで完了する。

350ml缶をセット
扉を閉じてボタンを押すと缶がせり上がっていく
準備ができたらジョッキを傾けてビールを注ぐ
7割ほど注いだら泡を作って仕上げ

 なお、注ぐビールの量と泡の量は手動でコントロールする必要があり、1本の缶を無駄なく使用するには少し慣れが必要なようだ。缶1本分をそのまま使用するのであれば、事前に泡のぶんだけビールを吸い上げておき、残りのすべてをグラスに注ぐようにすれば、コンビニエンスストアのコーヒーマシンのように全自動化できそうな気もするが、このあたりは今後の進化に期待したい。

 今回のテスト展開では、「ザ・プレミアム・モルツ」のレギュラー商品のみを使用する形で店舗側と契約を結び、それを条件に本体をレンタルするという形になる。実際にはその他の缶ビールをセットしても抽出することは可能で、同社内でプレモルシリーズの他の商品と併用しても匂い移りなどは気にならなかったが、含まれる成分によっては衛生面が課題になる可能性もあり、今回は1商品のみに限定したとしている。

 2023年のテスト展開ではまずは首都圏を中心に100店舗への導入を図り、中期目標として1万店舗まで拡大していくことを目指す。具体的には、ファストフードやラーメン店、ファミリーレストランといった食中心の飲食店で、1日10杯未満といった規模感の店舗での導入をイメージしているとのこと。

 同社では、現段階では業務用のみの展開だが、家庭用についても検討していきたいとしている。