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スアソ氏が語るスペインワイン「マルケス・デ・リスカル」の魅力

2025年5月21日 取材
マルケス・デ・リスカル 輸出担当のエロイザ・スアソ氏

 スペインワインを代表するブランドの「マルケス・デ・リスカル」。1500円~5000円程度の手頃な価格で販売されているが、スペイン王室から愛され、毎年300本が献上されており、画家のサルバドール・ダリも愛したワインとして知られる。

 国内ではサッポロビールが販売を手掛けているが、このほど、マルケス・デ・リスカル社で輸出部門を担当するエロイザ・スアソ氏が来日し、直近の取り組みについて説明した。

 1858年にバスク地方のリオハで立ち上げられた同社では、ボルドースタイルの製造法を取り入れながら成長を遂げ、1895年のボルドー博覧会においてフランスワイン以外で初めて名誉賞を受賞。その証明書は現在も同社の代表商品となる「ティント レセルバ」のラベルデザインの一部として受け継がれている。

 その後、同社では白ワインづくりに最適な場所を探し、マドリードの北西にあるルエダ地方に着目。この地方で栽培されてきたブドウのベルデホを使い、1972年から白ワインづくりに取り組むとともに、1974年からはソーヴィニヨン・ブランも導入するなど、常に革新を心がけてきたという。

 地元スペインはもとより世界中で高く評価されている同社のワインだが、ボルドー博覧会での受賞後、中身を詰め替えた偽物を販売する業者が出現。その対策としてボトルに真鍮製の網をかけ、詰め替えが行なわれていないことを示してきた。「ティント レセルバ」は150年にわたってこの形で販売されてきたが、同社では昨年、網がけを廃止するという大きな変更を決断。今年5月製造分から網がけなしのボトルで出荷されている。

約150年間続けられてきた網がけを廃止することを決断

 その理由をスアソ氏に訪ねたところ、環境への配慮が一番の理由で、網がけを廃止することで年間14トンの真鍮製廃棄物の削減が見込まれるという。同社では、このほかにも自社所有の畑において有機栽培の認証を受けたり、太陽光発電パネルを導入したり、環境に配慮した取り組みを強化しているとのことだ。

 スアソ氏は数ある同社のワインのなかで、白ワインでは「オーガニック ブランコ ソーヴィニヨン 2023」「ブランコ・レセルバ・リムザン 2023」、赤ワインでは「マルケス・デ・アリエンソ 2019」「ティント・レセルバ 2020」を勧めてくれた。

 2つの白ワインについては、いずれもルエダで作られているが、前者はソーヴィニヨン・ブラン、後者はベルデホを使用。前者がフレッシュで飲みやすい爽やかな白に仕上げられているのに対し、後者はフレンチオーク樽で発酵させた後に半年ほど熟成させることでしっかりとした味わいに仕上げられている。

 赤ワインについては、いずれもリオハでテンプラニーリョとグラシアーノを使って作られている。前者がアメリカンオーク樽で18か月熟成させて心地よいバランスとやわらかい余韻を表現しているのに対し、後者はアメリカンオーク樽で2年以上熟成させ、さらに瓶の中で1年以上熟成させることでエレガントな味わいを実現している。

(左から)「オーガニック ブランコ ソーヴィニヨン 2023」「ブランコ・レセルバ・リムザン 2023」「ティント・レセルバ 2020」「マルケス・デ・アリエンソ 2019」

 国内での販売を手掛けるサッポロビール マーケティング部 ワイン&スピリッツ事業部 マーケティング統括部 輸入ワイングループ アシスタントマネージャーの松浦一哉氏によれば、日本においては「長期熟成のテンプラリーニョは“ニクらしいほど、肉にあう!”」というキャッチコピーで肉料理との相性を訴求したところ、今年に入ってから前年比120%の販売実績を記録しているという。

 こうしたキャッチコピーは赤ワインをイメージさせるものになっているが、実は同社の白ワインは豚肉料理にも合わせやすく、とりわけ「ブランコ・レセルバ・リムザン」については、その個性との相性のよさが感じられるはずとのこと。白ワイン=魚料理という先入観を持たずに、さまざまな料理とのペアリングを試してみるのがよさそうだ。