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「災害支援ローソン」1号店が千葉県富津市にオープン

災害時にご飯と水と情報を提供

2026年2月24日 取材
オープニングセレモニーに参列した(左から)防災監の長橋氏、ローソンの竹増社長、KDDIの松田社長、富津市の高橋市長

 ローソンとKDDIは、千葉県富津市にあるローソンを「災害支援ローソン」の1号店としてリニューアルオープンし、2月24日に現地でオープニングセレモニーが開催された。

 災害支援ローソンの1号店となったのは、千葉県富津市にあるローソン富津湊店。ローソン富津湊店は、房総半島の南西部、内房エリアを南北に貫く国道127号沿いという立地にある。館山自動車道にも近く、最寄りインターチェンジの富津中央ICからは車で4分ほどだが、店のすぐ目の前の館山自動車道上には、高速バス停(富津浅間山バスストップ)もある。

 ローソン富津湊店は、住宅が集まっている集落からはやや離れているが、交通の要衝にあるので、地元の人はもちろん、東京などからドライブに来ている人にもアクセスがしやすく、さらに海沿いの集落に比べると海抜も高く、災害対策拠点としては最適な立地にもなっている。

ほぼオフグリッドでも調理もできる好立地

敷地内の井戸。手押しポンプの奥にあるのが電動ポンプと除菌処理装置

 ローソン富津湊店は、市街地から離れていることもあり、上下水道が引かれていない。店内の水は、敷地内の井戸からポンプで汲まれた井戸水を除菌処理して使用している。また、駐車場には浄化槽が埋設されていて、排水は浄化した上で排水路に放出されている。

 そのため、水道管が破損したり、浄水場が使えなくなる災害が起きても、通常通り水が使える、というのがローソン富津湊店の特徴だ。店内で使う水は電動ポンプで汲み上げているが、電気が止まったときに備え、手動の手押しポンプも設置されている。こちらは除菌処理はされないので飲用には使えないが、トイレを流す、体を拭くといった用途で貴重な飲用水を消費しないで済む。

富津市の災害時協力井戸に登録されているので、災害時はお店を使わなくても水の提供を受けられる

 下水に関しても、地震で下水道が破断して使えなくなる、といったことはない。浄化槽はブロワポンプで空気を送り続ける必要があり、年に数回、汚泥を捨てたりする必要もあるが、災害時にそれらが一時的に途絶えても、ただちに使えなくなることはない。

 災害支援ローソンでは災害用トイレの備蓄なども行なうが、実際のところ、このローソン富津湊店は電力さえ供給されていればいつも通りに水が使える、というのも大きなポイントとなっている。

オムロンの16.4kWh蓄電池。重さ約150kg、高さ1mくらい(土台含まず)とけっこう大きめ

 電力に関しては、電線は引かれているが、店舗の屋根には約16kWの太陽光発電パネルが設置され、容量16.4kWhの蓄電池も設置されているため、災害や事故で電力供給が止まってもある程度の自立運転が可能となっている。

 太陽光発電パネルも蓄電池も一般の戸建てに比べると2倍以上の規模だが、コンビニは電力消費が大きい機器が多いこともあり、系統が遮断された場合の自立運転は、一部のコンセントのみに電力を供給する特定負荷型の運用になるという。

 このほかにもACコンセントを備えるような乗用車から電源を店内に提供するための、ACイントレットも駐車場に備えている。太陽光発電と蓄電池で足りないとき、POSレジや厨房に電源を供給するという。

 なお、ローソン富津湊店には都市ガスはもちろん、プロパンガスも導入されていない、いわゆるオール電化仕様となっている。ローソンに限らず厨房併設のコンビニは少なくないが、通常のコンビニもオール電化なので、こちらは特殊な仕様というわけではない。

災害時にも運用される「まちかど厨房」

ローソン富津湊店の厨房

 ローソン富津湊店は、調理ができるキッチン「まちかど厨房」を備えていて、平時から店内で調理した弁当やおにぎり、惣菜を販売している。こちらの設備については、他店舗のまちかど厨房と同等のもので、特別なものは基本的にない。

 ローソン富津湊店は、大規模な災害が発生した際も、電力供給が途絶えなければ、前述の通り井戸水と浄化槽で処理できるので、在庫がある限り、通常通りの商品を提供できる。

赤いのが自立電源用のコンセント。ほかの機器は200Vコンセントの機器ばかり

 ただし、厨房にある業務用電子レンジやフライヤー、業務用炊飯器は、蓄電池で稼働するには消費電力が大きすぎるため、自立電源での運用は想定されていないという。そこで、電力系統が途絶えた場合などは、ラップに包んだだけの簡易包装の白米を販売するというオペレーションも準備されている。厨房には自立電源用のコンセントも用意されており、そこに一般家庭と同じ100V電源を使う炊飯器を繋いで炊飯することになる。

店炊きごはんの作成風景。災害時向けなので手順も使う部材もシンプル

 炊飯に使う白米は、特別に備蓄するものではなく、通常時提供しているのと同じ在庫を使用する。なお、こちらは見た目はおにぎりだが、「店炊きごはん」という扱いで、食塩や海苔は入っていない。

飲用水と災害時用トイレをストック

災害支援用の保管庫。ちなみにイナバ物置だった

 ローソン富津湊店には専用の保管庫が増設され、そこに飲用水や災害時用トイレ、そのほか災害時向けの備品がストックされる。

 飲用水は普段から販売されているのと同じもので、在庫を通常の数倍ストックし、古いものから販売するローリングストック形式になっている。とはいっても、古くても3か月くらいしかストックせず、2年程度の賞味期限を持つ飲用水にとって問題ないストック期間となるようにしている。

 この飲用水のストックは、物流で使われるいわゆる「カゴ台車」に積まれており、保管庫内でカゴ台車を反時計回りに移動させていけば常に古いストックが手前にきて取り出しやすくなる、といった工夫がなされている。

災害用トイレ

 災害用トイレもストックされている。排泄物を入れるポリ袋と凝固剤がセットになった一般的なもので、数百セットが備蓄されている。前述の通り、ローソン富津湊店は井戸と浄化槽を備えているので、大きな災害でも通常通りトイレを使用できる可能性が高いのだが、なんらかの理由で揚水ポンプが使えなくなったり、利用者が多すぎて容量を超えてしまったりするケースも想定されるので、そうした備えという意味でも災害用トイレが用意されている。

通信・情報も店頭で提供

Starlink端末。個人向けのモデルに比べると一回り大きい業務向け端末が配備されている

 今回の「災害支援ローソン」の取り組みでは、ローソンの親会社の1社でもあるKDDIも大きく関わっており、衛星通信やモバイル通信も提供される。

 ローソン富津湊店には衛星通信端末のStarlinkの業務向けモデルが配備され、通信網が寸断されるような災害が発生したとき、店舗にWi-Fi回線を提供する。このWi-Fiは来店した人が利用できるよう、公開される。

卓上にあるWi-Fiルーターみたいなのがフェムトセルと呼ばれる小型基地局。免許不要な小出力で800MHz帯の4G電波を出している

 さらに周囲の携帯電話基地局が使えなくなるような災害が発生した場合、超小型の簡易基地局(フェムトセル)が店内に設置される。au回線のスマートフォンは、このフェムトセル周辺では通信が可能となり、緊急通報を含む音声発信や緊急地震速報も受け取れる。このフェムトセルのネットワーク回線としても前述のStarlinkが使われる。

スマホ充電設備。広範囲で停電しても、ローソンに来れば充電とWi-Fiが提供されるので情報収集や安否確認ができる、という仕組み

 このほかにも災害時には店頭でスマートフォンなどを充電するため充電器も提供される。こちらはau回線でなくても利用可能。一般的なUSB Type-Cだけでなく、Lightningなどにも対応する。

サイネージディスプレイで緊急速報を表示するデモ。デモは無音だったが、実際には警報音が鳴るという

 変わったところでは、店内の冷蔵ケースの上にサイネージディスプレイが天吊りされており、そこには普段はプロモーション映像などが流れているが、緊急地震速報が発報された際には、警報音とともに速報内容を表示する機能も備えている。この緊急速報は店舗スタッフが使用する業務用タブレットにも表示される。

 この緊急速報を表示する機能は、来店している人に周知する目的もあるが、店舗で働くスタッフに知らせる、という目的も強いという。店舗スタッフは業務中、スマートフォンを持っていない(ロッカーなどに置いている)ため、緊急地震速報が発報されてもスタッフはそれを知るすべを持っていない。2025年7月にカムチャツカ半島付近で地震が発生した際、広い範囲で津波警報が発表されたが、スタッフがそれに気がつけない、という事例があったという。今回、サイネージディスプレイなどで緊急速報を表示するのは、そうしたケースへの備えでもあるという。

インフラ復旧拠点としても機能

KDDIの電源車。普段はKDDIの拠点にいて、災害発生時などに出動する

 ローソンとKDDIはローソン富津湊店をインフラ復旧の拠点として活用することも想定している。今回のリニューアルオープンセレモニーでは、KDDIの電源車も派遣されて来ていたが、こちらは災害時、店舗に電源を供給するだけではなく、周囲の基地局復旧に必要な電源を供給することも想定している。

 地震や台風などの災害で基地局網が壊された場合、KDDIなどの通信会社は復旧チームを現地に派遣して復旧作業を行なう。従来、そうした復旧チームは現地の各キャリアショップの駐車場などを拠点にしていたが、当然だがキャリアショップには食料品も飲用水もなく、インフラが寸断される災害時はトイレや電源も利用できない。しかしローソン富津湊店であれば、食料も水もトイレも利用できるので、大災害発生後の初期段階でも兵站維持の負担が小さく、復旧チームが活動しやすい、という利点がある。

デモに使われたドローン

 リニューアルオープンセレモニーでは、ドローン運用のデモも実施された。こちらのドローンは主に偵察目的で、近辺の道路や電線などのインフラ被災状況を高い視点から確認する用途を想定している。KDDIでは運搬にドローンを使う実証実験なども実施しているが、ドローンでは運べる量が限定的なので、災害時に災害支援ローソンで運用するかは決まっていないという。

2030年度までに災害支援ローソン100店舗設置

 ローソンとKDDIでは、こうした災害支援ローソンを全国に展開していく予定で、2030年度までに全国に100店舗設置することを目指す。

 設置基準としては、南海トラフ地震やそれと同等の被災が想定される地域、ハザード基準(自社基準)、店舗の立地(海岸や河川からの距離、海抜など)、店舗の面積などを総合的に加味する。ローソン富津湊店は直営店舗だが、フランチャイズ店舗を災害支援ローソンとすることも想定している。