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ニッカウヰスキー「竹鶴ピュアモルト エッセンシャルズ 2026」の担当者が明かす世界に向けたチャレンジ

2026年6月16日 発売
ニッカウヰスキー「竹鶴ピュアモルト エッセンシャルズ 2026」

 アサヒビールは6月16日に発売するニッカウヰスキー「竹鶴ピュアモルト エッセンシャルズ 2026」の商品説明会を実施した。商品開発の経緯について、ブランドマネージャーの織田大原希美氏とチーフブレンダーの井関潤治氏が登壇して説明した。会場では新製品を含めたテイスティングも実施した。

 2030年に迎える「竹鶴ピュアモルト」ブランド発売30周年を見据え、5年間にわたり毎年数量限定で発売するのが新シリーズの「竹鶴ピュアモルト エッセンシャルズ」。第1弾となる「竹鶴ピュアモルト エッセンシャルズ 2026」は、創業の地である北海道・余市蒸溜所でウイスキー製造を始めた当初から継承されてきた石炭直火蒸溜に着目して製造した。竹鶴ピュアモルトらしい繊細な飲み心地はそのままに、石炭直火蒸溜由来の香ばしさや、深みのある味わいをより際立たせた。ブランド誕生の年である2000年に仕込まれた北海道・余市蒸溜所と仙台・宮城峡蒸溜所の長期熟成原酒を一部使用し、熟成感に満ちた穏やかな樽香とモルトの甘さ、ピートのコクが調和した厚みのある味わい、甘くほろ苦い余韻が楽しめる。

ニッカウヰスキー「竹鶴ピュアモルト エッセンシャルズ 2026」

発売日: 2026年6月16日
品目: ウイスキー
容器・容量: 700mL瓶
アルコール分: 43%
販売本数: 国内 1万本、海外 1万本
価格: 2万7500円

ニッカウヰスキー「竹鶴ピュアモルト エッセンシャルズ 2026」

ニッカウヰスキーが目指す世界に通用するブランド

 最初に織田大原氏がニッカウヰスキーの目指す場所について説明した。同社は2024年に創設90周年を迎え、その際に「プレミアムカテゴリー以上でグローバルでトップ10入りを目指す」ことを目標に掲げた。現状では40位~50位程度の位置であるとし、目標を達成するためにも「竹鶴ピュアモルト」をコアブランドに制定し、さまざまな施策を実施してきた。竹鶴ピュアモルトのパッケージリニューアルをはじめ、免税店向けの「竹鶴ピュアモルト グランデ」の発売、約10年ぶりとなるポップアップストアの開催など社を挙げて力を入れており、「創業者の名前を背負う弊社の中で唯一の商品ということで、非常に大事にしております」と話した。

ニッカウヰスキー マーケティング部 ブランドマネージャーの織田大原希美氏
世界でトップ10入りを目指す
「竹鶴ピュアモルト」をコアブランドに制定

覚悟を持って開発した「竹鶴ピュアモルト」

 続いて、「竹鶴ピュアモルト」が誕生するまでの背景についても説明した。国内のウイスキー消費量は1983年をピークに2007年まで減少傾向が続き、最盛時に比べると6分の1まで落ち込んだ。竹鶴ピュアモルトを発売した2000年はウイスキーにとってまさに冬の時代であり、なかなか売れない状況の中で、すでに亡くなっていた創業者の名前を商品名に使用することは強い覚悟を示すものだった。そして誕生した竹鶴ピュアモルトは、余市蒸溜所(北海道)と宮城峡蒸溜所(宮城県)のまったく異なる個性を持つウイスキーをブレンドすることで繊細な飲み心地を実現したわけだが、織田大原氏は「あえて強いものと強いものを組み合わせることで繊細な飲み心地を実現した、非常に挑戦的な商品だったと私たちは考えています」と述べた。

ウイスキー冬の時代に生まれた「竹鶴ピュアモルト」

 社史によると、商品名に創業者・竹鶴政孝氏の名前を使うと発表された際は一同が静まり返り、「とうとうここまで来てしまったのか」「ついに政孝さんの名前に手を出したのか」と、誰もが息をのんだそうだ。ある者は「政孝さんの名前を呼び捨てになんてできない!」と当時の社長に直談判するほどで、社内でも反対者が続出したことを紹介した。

竹鶴政孝氏の名前を冠した唯一の製品

 開発側からは井関氏が説明した。同氏は2001年にアサヒビールからニッカウヰスキーのブレンダー室に出向したそうで、営業統合というイベントがあり「明るい雰囲気ではないのですが、表面的な部分ではこれからに対する希望というか、変わっていけるかもしれないという、そのようなものが入り混じっている会社の雰囲気でした」と当時を振り返った。その中でも竹鶴ピュアモルトは唯一、好調に売れていた商品であり、ブレンダー室では同じ味を維持するための処方検討を頻繁に行なっていたことを説明した。

ニッカウヰスキー チーフブレンダーの井関潤治氏
チーフブレンダーとして活躍する井関氏

シリーズ第1弾は“石炭直火蒸溜”にフォーカス

「竹鶴ピュアモルト エッセンシャルズ」シリーズは、2030年のブランド誕生30周年に向けて5年間にわたって新製品を発売する。基本コンセプトは5年間変更せず、創業者・竹鶴政孝氏が本物を追い求めた精神に敬意を払いながら、竹鶴ピュアモルトの香味の枠組みの中で“新しい竹鶴を作り出す”ことを目標としている。初年度は原点である余市蒸溜所にフォーカスし、政孝氏がこだわった石炭直火蒸溜に注目して開発された。

「竹鶴ピュアモルト エッセンシャルズ」シリーズのコンセプト

 竹鶴政孝氏がこだわって導入した石炭直火蒸溜については、余市蒸溜所に7年半勤務した井関氏が詳細について説明した。現在の蒸溜は蒸気による間接蒸溜が主流だが、強力な火力による直火蒸溜にこだわっている蒸溜所もある。余市蒸溜所もその一つで、しかも石炭を現在も使っているのはここだけと言われている。それゆえに、余市蒸溜所のメンバーはほぼ全員が石炭直火蒸溜の作業をしたいから入社したと言えるほどで、「これがなくなったら会社辞めます!というメンバーが非常に多いのは事実です」と紹介した。

 しかし、その作業は過酷な作業の繰り返しだ。その日の気温など環境にも左右されるが、大体7分おきに石炭をくべていき、それをすべての釜に行なう。1回、2回であれば非常に楽しい作業ではあるのだが、それが20分~30分続くと楽しさから苦しさに変わっていくとのこと。冬は暖かいが、夏はマスクと前掛けをしながらの作業はまさに“灼熱地獄”と呼べる肉体的に厳しい作業になり、メンバーを交代させながら行なう大変な仕事になる。それでも、石炭直火蒸溜によって生み出されたモルトは香ばしくて重厚な味わいに仕上がり、科学的に見ても特徴的な蒸溜方法であると証明されているそうだ。ちなみに社員研修にも石炭をくべる作業を取り入れており、同社にとって非常に重要な製造方法であることを伝えていると話した。

ニッカウヰスキーの原点である石炭直火蒸溜

 織田大原氏は、今回の商品「竹鶴ピュアモルト エッセンシャルズ 2026」を開発するにあたり、石炭直火蒸溜の香ばしい原酒にフォーカスしたウイスキーの製造をブレンダーチームに依頼したところ、「そんな難しいことはできない」という反応があったことを明かした。それに対し井関氏は、竹鶴ピュアモルトが飲みやすさを重視してシルキーでエレガントな宮城峡の原酒を主体に使用していたため、逆に「もう少しハードな原酒を使って『竹鶴の部分をそのまま維持しろ』という難題を言われましたので、なかなか難しいというお話であったのは事実ですね」と答えた。

「竹鶴ピュアモルト エッセンシャルズ 2026」の中味設計

 さらに織田大原氏は、5年間を通じて変えないテーマとして、竹鶴ピュアモルトを発売した2000年に製造した原酒を余市、宮城峡ともに使い続けることもブレンダーチームにお願いしたことを明かした。ウイスキーをほとんど作っていなかった冬の時代において、竹鶴ピュアモルトのヒットによって会社を救った転換期の原酒を使用することで、特別な意味を持たせている。井関氏は「確かに2000年の原酒が豊富にあるわけではないですし、なおかつ今は他の製品にも使っています。数少ない中でも、この竹鶴の味わいにきちんとマッチするものを探し出す、そこから始めた部分もあります」と開発面での苦労を伝えた。

エッセンシャルズシリーズは2000年をテーマに開発

竹鶴らしさと余市らしさを同居させたブレンド力に驚く

 テイスティングセッションでは、取材陣に「竹鶴ピュアモルト」と「竹鶴ピュアモルト エッセンシャルズ 2026」、そして余市の香ばしさを感じられる特別セレクトの非売品原酒がグラスで渡された。

写真左から「竹鶴ピュアモルト」、「竹鶴ピュアモルト エッセンシャルズ 2026」、余市の非売品原酒

 通常の竹鶴は、リンゴや杏のフルーティーな甘酸っぱさ、トーストの香ばしさ、バニラの香りが特徴で、フィニッシュではビターチョコのような甘さとほろ苦さ、心地よい余韻を備えている。一方、エッセンシャルズ 2026は、余市らしいクッキーや香ばしい香りが感じられ、全体的にハードで厚みのある味わいに仕上げている。

味わいの違い

 井関氏は、燻製や消毒液などに例えられるピート香について「ピートの香りをブレンドで上手に調整することで、煙のような香りではなく、お酒自体を甘くする効果を実現しています。余市の原酒は、本当に口の中に煙が広がるような力強いピート感と熟成感を持っているのが分かるかと思います。これを竹鶴にバランスよく配合することが今回の苦労した点でした」と解説した。

 実際に口に含むと、竹鶴ピュアモルトはリンゴ由来のフルーティーな香り、少しの香ばしさ、そして伝えられているように、フィニッシュ時のピートの香りがふわりとしながら抜けていく余韻が感じられた。エッセンシャルズ 2026は、その竹鶴の特徴に加え、ずしっとした厚みのあるスモーキーな感じが全体にプラスされており、かつ甘みが上品に足された高級店のスイーツのような優雅さを感じた。バーに行くと、ボウモア、ラフロイグ、アードベッグがついつい目に入ってしまう筆者にとっては好みの味わいだ。余市の原酒は「特徴的なものを持ってきました」という通り、まさに口の中に煙がモクモクと広がる上に、熟成された甘みなどもわずかに感じ取れる味わい。言わずもがな、2つの製品にある多層的で味わいの変化というものは存在しない。これを飲むと、いかにブレンドされた製品が優れているのか、継承されてきたノウハウやブレンダーの凄さに感心しきりだ。

 最後に井関氏は、技術者として何かを実現しようとするときに、コストや作業性の制約がある中でも常に「竹鶴政孝さんだったら何と言うか」を原点として考えることの重要性を語った。「竹鶴ピュアモルト」30周年に向けて、チャレンジ精神とフロンティア精神を持ち続け、世界に対してしっかりと合致するような商品作りを意識し、胸を張って「ニッカウヰスキーの竹鶴です」と言えるようなブレンドを心がけていくと抱負を述べた。