インタビュー

在宅勤務続きで健康が気になりはじめたら……宅食サービス「ナッシュ」の魅力

健康に配慮した料理が冷凍で届く「ナッシュ」

 コロナ禍で在宅勤務が続き、運動不足でお腹まわりの肉のつき具合が気になったり、偏った食事のせいで健康が気になったりしている人も多いはず。そんな人に向けた宅食サービスを運営するのが、大阪に本社を構えるナッシュ(nosh)だ。

 冷凍で届く健康的な食事を電子レンジで温めるだけで食べられる同社のサービスの特徴について、広報担当の藤原愛氏に伺った。

――まず最初に「ナッシュ」というサービスがどんなものなのか、全体像を教えていただけますか。

藤原氏
 糖質と塩分に配慮した宅食サービスです。弊社代表の田中(智也氏)なのですが、ナッシュを立ち上げる前にWebでお葬式サービスを提供する会社を立ち上げていたのですが、その中で亡くなる方の死因の8割が生活習慣病だということに気づき、この状況を改善できるようなサービスを立ち上げようと思ったのがきっかけになっています。2018年にサービスをスタートしました。

 ただ、1日だけ食事を変えただけではダメで、「飽きさせない」「おいしくないといけない」「続けられる金額でなければいけない」という3つの軸を念頭に事業を展開しています。

 飽きさせないというところでは、Webサイトを訪問しても毎回同じメニューだったら飽きてしい、続けていただけないというところで、毎週新メニューを3品リニューアル追加しています。人気がない3品をやめて、新しい3品を投入しています。

 おいしさというところでは、糖質を抑えるような食事、例えばキャベツとかサラダチキンとか、毎日食べ続けると楽しくないというか、心が痩せ細ってしまい、それだったらもうサプリメントでいいという話になってしまいます。そこで、和洋中に加えてエスニックのシェフを常駐させ、毎日新メニューを開発しています。

 続けられる金額というところでは、高所得者向けの金額に設定しても社会全体の課題解決にはならないので、みんなが続けられる価格帯を意識しています。コストを下げるために、元々OEMでお弁当の製造をお願いしていた工場を買収し、自社工場にしました。弊社はまだ小さなベンチャーなので、直接お客さまの声を聞いて、すぐに改善するというスピード感も重視しています。

 購入した累計食数に応じて安くなるナッシュクラブというシステムも導入しており、買えば買うほど1食の値段が安くなり、最も安い場合で1食499円という価格を実現しています。

ナッシュ 広報担当の藤原愛氏

――ちなみに「ナッシュ」という言葉の意味は?

藤原氏
 英語で軽食とか間食とか、気軽に食べられるという意味です。いつでも隣にあるような、そういった食事を目指して、このような名前になりました。

――メニューは何種類ぐらいあるのでしょうか?

藤原氏
 デザートやパンを含めて、常時60種類以上をラインアップしています。

――しかし、毎週3品というメニュー開発のペースはつらくないですか。

藤原氏
 どれだけつらくてもユーザーに楽しんでもらいたいという気持ちに挑戦し続けたいと思っています。将来的には毎日新メニューを出したいと考えています。

――どのメニューが人気なのでしょうか。

藤原氏
 チリハンバーグステーキ、旨だれペッパーチキン、ロールキャベツのチーズデミが人気です。いずれもボリューム感があるものが人気になっていますね。

チリハンバーグステーキ
旨だれペッパーチキン
ロールキャベツのチーズデミ

――電子レンジで温めるだけ、という手軽さは魅力的です。冷凍でおいしさを表現する難しさもあると思いますが、どんな工夫をしているのでしょうか。

藤原氏
 後付けになるかもしれないですが、田中の言葉を借りると、「店舗販売は考えなかったのか?」という質問をよくいただくのですが、社会の全員を健康にするためには1つの店舗では周辺の人にしか提供できません。山奥の村のおばあちゃんにも届けたい。そうなると、腐らない、日持ちする冷凍弁当に行き着いた、という経緯があります。

 おいしさに対する工夫という点では、昨年4月に新工場を尼崎に設立しまして、そこに結構な額の急速冷凍機を導入しました。何がいいのかというと、作ってすぐに急速冷凍するので、まず新鮮です。それから、食材の細胞が壊れないので、ドリップ(汁)が出にくく、味が薄まりづらい、水っぽくならないというメリットがあります。

――サブスクリプションのような申込方法になっていますが、なぜそのような形にしているのでしょうか?

藤原氏
 生活習慣病の改善のために続けていただきたいというのが最初にあります。都度購入だとうっかり忘れてしまうこともありますが、定期配送にすることで自動的に届くので、忘れることがなくなります。ただ、サブスクと言っても、1回購入して、すぐに停止することもできるようになっています。

――配送の間隔とは別に、6食・8食・10食・20食と1回あたりの分量も選べるようになっていますね。

藤原氏
 食べる頻度や冷凍庫のキャパシティなど、個々のお家の条件もあるので、柔軟に対応できるようにしています。実は、ここは改善しないといけないと思っているところでして、これまで3回パッケージを変えているのですが、一番最初に収まりがよかったサイズ感で設計してそのままになっている部分で、今はわりと小さくなっていて、改良できるところではあります。10食と20食の間が欲しいとか、毎週なので7の倍数にして欲しいとか、そういった声もいただいており、社内でも議論になるのですが、手がつけられていないという、ちょっと恥ずかしいというのが現状です。

――どういう配送間隔と食数が一番よく利用されているのでしょうか。

藤原氏
 ダントツで2週に10食ですね。8割ぐらいがそのパターンです。10食だと、1食あたりの値段が安いというのもあると思います。

――「人気メニューからおまかせ」という機能も面白いのですね。

藤原氏
 実は先月新しくできた機能でして、コロナ前までは女性ユーザーが多く、自分で選びたがる傾向がありました。コロナ禍で男性ユーザーが増えて、自分で選ぶのが面倒だという声をいただき、おまかせ機能を用意したのですが、従来のおまかせ機能はシステムでランダムに詰め込んでいて、人気じゃないメニューも入っていたんです。はじめて利用していただく方に人気の無いメニューを提供すると、おいしくないと思われて解約されてしまう心配もある、ということで、人気メニューから選ぶ形にしました。2回目からは、これがおいしい、これが気に入ったみたいにご自身で選んでいただけるのかなと。

――注文前にアレルギーや苦手なものを登録しておくような機能はありますか?

藤原氏
 もちろん可能です。専用のアプリでアレルギーや入れて欲しくない食材を選べるようになっています。それで自動的にメニュー表には出てこないようになっています。

――実際にどんな方が使っているのでしょうか。

藤原氏
 宅食業界というと、ワタミさんとか、わりと高齢者向けのイメージがあったと思うんですが、そこと競争しても絶対に勝てないと思ったので、まずは女性が好みそうなサービスとしてスタートしました。ですので、コロナ前はボディメイク、ダイエットしている女性や、小さいお子さまがいらっしゃる家庭が8割でした。それが、コロナで男女比が5:5になってきました。

――ずばり、ライバルというと?

藤原氏
 めちゃくちゃ生意気なことを言うと、宅食業界というよりも、外食やコンビニがライバルだと思っているんです。コロナが落ち着いて外食が盛り上がればデリバリーが落ち込むという話もありますし、日常的に使っていただきたいというところではコンビニさんがライバルなのかなと思っています。

――そんなライバルとの差別化のポイントは何になるのでしょうか。

藤原氏
 冷凍なので保存がきくというところや、自宅に届き、電子レンジで温めるだけで温かいものが食べられるというところ。それから、コンビニで低糖質のものを選ぼうとすると、そこそこのお値段になってしまうところもあるので、極力価格を安くして、高品質なものを作っているというところでしょうか。

――ユーザー目線で考えると、別途必要となる送料も課題の1つだと思います。工場は尼崎にあるとのことですが、他の地域にも拠点を作って配送コストを下げるというような可能性はあるのでしょうか。

藤原氏
 弊社は大阪の会社で、まだまだ改善しないといけないことが多いので、目の届く範囲に工場を置いておきたいというところがあります。ユーザーは東名阪のような都市部に多く、そうしたいのは山々ですが、まだそこまでは、といった感じです。

――5月にパッケージをリニューアルされましたが、その理由は?

藤原氏
 元々、サービス開始時は、よくある黒いプラスチックの容器でした。日々の食事をするにあたって、食事と環境問題は切り離せない関係にあって、地球環境にいいものをというのと、分別の手間がかからないようにしたいということで。サステナブル素材を使用することにしました。ただ、19×19cmの大きな箱になってしまい、お客さまから冷凍庫に入らないので小さくして欲しいという要望がすごくありまして、今の形にリニューアルしました。

――ダンボールでドカンと届くと、冷凍庫に入り切らない場合もあるかもしれません。オススメの対処法はありますか?

藤原氏
 面白い質問ですね(笑)。最初に冷凍庫のサイズを測っておいてもらうしか……。

――法人向けのoffice noshも始められたそうですが、どんなサービスですか?

藤原氏
 法人の事務所に冷凍庫をレンタルして、30食単位で届けるサービスです。9月に始めたばかりですが、何社かに利用いただいています。冷凍庫は1か月2500円でレンタルしています。

――個人でも冷凍庫をレンタルしてくれると嬉しいという人もいそうですが。

藤原氏
 コロナ禍でずっと個人向けをやりたいと思っているんですが、弊社のアクティブ会員数に対応できる冷凍庫を作ってくれるメーカーさんがまだ見つけられなくて、できていないという状況ですね。法人向けはアイリスオーヤマさんにお願いしているのですが。

法人向けの「office nosh」の冷凍庫

――最後に今後の注力ポイントを教えてください。

藤原氏
 今、力を入れているのが、新メニューをどんどん投入するというのはもちろんなんですが、1つ1つの弁当の品質を上げにいこうとしています。コロナ禍でバタバタしていたところもありますが、欠品しないようにすることを第1優先にすると、メニューを新しくしても食材に偏りが出てしまい、なんだか副菜にブロッコリーが多いとか、カリフラワーが多いとか、盛り付けやすいものになってしまうんです。お客さまからも副菜が同じで飽きるという声もいただくこともあり、同じ食材ばかりを食べさせるのは申し訳ないですし、やっぱりせっかく新メニューを出すならおいしいと思っていただきたい。お弁当1つの世界観にもっとこだわって、和食であれば割烹とか、もっとクオリティを上げて、食材も変えて、というのが最優先で取り組んでいる部分です。

――ありがとうございました。