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Wolt、リテール分野の拡充と法人向け即時配送「Wolt Drive」を開始

2022年4月14日 発表

 Wolt JapanとWolt Market Japanは、4月14日に「Wolt Qコマース戦略説明会」を開催し、注力分野のリテール(小売)デリバリーサービスの全国拡大や、法人向け即時配送プラットフォーム「Wolt Drive」の運用開始など、今後の戦略について発表した。

 Woltはヨーロッパとアジアでフードデリバリー事業を展開する、フィンランド発のテクノロジー企業。現在、世界23か国245都市以上でサービスを行ない、日本では2020年3月のサービス開始以降、22都道府県38エリアに広がる(4月14日時点)。

Woltの国内のサービス拠点

 Wolt Japan 代表の野地春菜氏は、「Woltはフードデリバリーだけでなく、食料品や日用品の配送にも力を入れています。全国のコンビニエンスストア、ドラッグストア、百貨店、スーパーマーケットなど様々なパートナーに加盟いただき、より日常に取り入れやすいライフスタイルのデリバリーを展開しています」とサービスについて説明する。

Woltのサービスについて説明する代表の野地春菜氏(画面左)

 Woltの特徴は、地元の名店から全国チェーン、スーパー、コンビニ、ドラッグストアまで、幅広い品揃えを用意。50円からという手頃な配達料金で、かつ注文から30分程度と迅速に届ける。「フィンランドで培った高い配達効率によって、この安価で迅速な配達が可能になっている」と野地氏。そして欠かせないのが、質の高い配達パートナーとの強固なサポート体制だ。Woltでは適性テストに合格した配達パートナーのみが配達を行ない、専属スタッフが注文到着までモニタリングすることで、安心安全な配達を実現させる。

食料品や日用品のデリバリーでは業界最高水準の品揃えを提供

 そんなWoltのリテールデリバリーサービスにおいて、4月には仙台三越、イオン仙台一番町店、文化堂豊洲店など、東北と東京を中心に、複数の新規パートナー企業とのサービスがスタート。5月には名古屋でもサービスを開始する予定だ。これによりサービスが全国に拡大する。

Wolt のリテール提携先

Woltのリテール事業について

 Wolt Japan リテール事業本部長の髙木慶太氏は、Woltのリテール事業について、「ポケットの中にショッピングモールを作り上げることです」と例える。その意味についてWoltの創業者であるミキ・クーシ氏の言葉を用いて、「今、我々はショッピングモールの最上階にあるフードコートと、1階にあるスーパーマーケットやドラックストアなど、食料品や日用品を揃えるフロアを作り上げているところです。あくまでフードデリバリーはその入口。2階や3階にあるライフスタイル商品や家電などの商品も見据えて、事業を展開しています」と説明する。

Wolt Japan リテール事業本部長の髙木慶太氏

 クイックコマースの一番の売れ筋は、卵や牛乳、肉、野菜といった生鮮食料品。30分で届く即時配達なので、忙しくて買い物に行く時間がなかったり、うっかり買い忘れた食材を依頼しやすいためだと髙木氏は想定する。主な利用者は30代の共働き世帯や子育て世帯。使い慣れているスマホで簡単に注文ができ、すぐに食料品が届くサービスは、普段の生活をラクにしてくれるという声が多い。

アプリ画面で手軽に買い物できる

 日々の食材を配達してくれるという意味ではネットスーパーと同じように捉えられそうだが、「クイックコマースとネットスーパー事業はカニバらない」と髙木氏。ネットスーパーの利用者は普段、その店舗を利用している40~50代の顧客層が中心で、Webブラウザからの注文が多い。重かったり、かさばるものをまとめて運んで欲しいといったニーズがメインだと想定されるので、クイックコマースの需要とは異なるとする。

クイックコマースの特徴とネットスーパーとの需要の違い

 また、ネットスーパー事業では配送キャパシティに制限があるため、需要はあるものの、配達できないという問題が課題となっている。だがWoltでは、ユーザーがアプリで注文した商品を、パートナー企業の店舗スタッフがピックアップした後は、Woltの配達パートナーがお客さまのところまで届ける。集客やカスタマーサービスの部分をWoltが行なうため、新たな投資をすることなく事業が開始でき、若い世代の新規獲得にもつながると利点を述べる。

Woltの注文から配達までの流れ。即時配達以外に1週間先まで5分刻みでの予約もできる

 髙木氏曰く、「今年はクイックコマース元年と言えます。ここでトップを取っていきたい」と発言。流通取引総額(GMV)においても昨年比の15倍という強気の目標を掲げ、「十分、達成可能だと考えます」と意気込む。

「Wolt Market」の事業展開について

 Woltは2021年4月から、ダークストアと呼ばれる自社で運営する配達専用スーパー「Wolt Market」をスタート。フィンランドとギリシャの2か国3拠点で始まったが、1年後の2022年4月には14か国58拠点へと拡大。日本ではWolt Market Japanが札幌の2店舗からスタートさせ、現在、札幌4拠点、函館、旭川、広島、呉の8店舗に広がっている。

Wolt Marketのグローバルでの展開
Wolt Marketの国内での展開

 その特徴は、各地域に根付いた2000点以上の商品と、一般の食料品店と変わらない価格、30分程度という即時配達、人による的確なサポートが挙げられる。「北海道なら人気店舗のスープカレー、日本ハムファイターズの商品なども販売しています。コストコの商品は小さいロットで非会員でも購入できるところがメリット」と、Wolt Market Japan エクスパンションマネージャーの福井優貴氏。

Wolt Market Japan エクスパンションマネージャーの福井優貴氏

 初夏には東北、今年後半には全国各地に拡大していく予定。「引き続き質の高いサービスと充実した品揃え、高いお客満足度を提供することで、国内のダークストアのパイオニアになっていきたい」と、福井氏は今後の展開を説明した。

Wolt Marketの今後の展開

法人向けサービス「Wolt Drive」の運用を開始

 Wolt Japanは4月14日から、法人向け即時配送プラットフォーム「Wolt Drive」を運用開始することも発表。これは30分程度で今すぐ届けたいというニーズを、あらゆるサービスで訴求できる新しいサービス。Woltへの掲載は必要なく、「Drive UI」(Wolt Driveの専用管理ポータル)を利用してWeb上から配送をWoltに依頼したり、「Drive API」でAPI連携することで、企業のオウンドサイトとのシームレスな連携も可能になる。

Wolt Driveのサービスの特徴

 具体的には、医師と患者をつなぐ情報発信やサービスを行なう「メディカルノート」と提携し、新宿のeHealth clinicを含む2クリニックで、院内処方薬即時配送の実証実験をスタートさせる。これは新型コロナの拡大でオンライン診療を導入するクリニックが増加する一方で、患者は調剤薬局で処方薬を受け取っている現状に対応するもの。患者がクリニックから半径3km圏内の場所へ薬の配送を希望する場合、院内処方薬をWoltで即時配送する。患者の利便性を向上させ、オンライン診療ニーズの相関性を検証するのが目的だ。

院内処方薬即時配達の実証実験の内容

「Woltはデリバリー企業としての知見と、最新のテクノロジーによって、即時配達サービスをさらに拡充し、今すぐ受け取りたい、今すぐ届けたいという日常のあらゆるニーズをサポートする、ライフスタイルデリバリーとして進化していきます」と、代表の野地氏は今後の展望について語った。

Wolt Japan 髙木慶太氏(中央)、Wolt Market Japan福井優貴氏
Woltの取り扱い商品の一例

クイックコマースに関するトークセッションを実施

 説明会の後半では、クイックコマースに関するトークセッションが実施された。提携先であるイオン九州 コーポレートトランスフォーメーション(CX)推進本部 デジタル推進部 部長の板木伸也氏と、ラッシュジャパン ブランドコミュニケーションマネージャーの丸田千果氏、流通アナリストの渡辺弘明氏を交え、Woltのクイックコマースを導入しての感想などについてトークセッションを行なった。

左から、Wolt Japan リテール事業本部長 髙木慶太氏、イオン九州 コーポレートトランスフォーメーション(CX)推進本部 デジタル推進部 部長 板木伸也氏(リモート参加)、ラッシュジャパン ブランドコミュニケーションマネージャー 丸田千果氏、流通アナリスト 渡辺弘明氏

 Woltのパートナーシップについて、「サービスレベルが他社さんと比較して高い印象があります。『一緒にやっていきましょう!』という雰囲気作りをしていただけるので、大変やりやすいと感じています」とイオン九州の板木氏。「お店でゆっくり買い物を楽しんでもらいたいというリテールビジネスのコンセプトに対して、ECの『お店に行きたいけれど、面倒』、『夜勤で時間帯が合わない』など、お客様のニーズがさまざまであるということを気づかせていただいています」とラッシュジャパンの丸田氏。

 クイックコマースの展望について、流通アナリストの渡辺氏は、コロナ禍でフードデリバリーが一般的に定着した現状を採り上げ、「今年はクイックコマース元年となり、Woltはそのトップを走っていると思います。クイックコマースの利便性は、全国にコンビニがあり、せっかちな傾向にある日本人向きだと感じています。また、小売店舗も人々が住んでいる場所に密集しているので、サービスの拡大が期待できると思います」と、その可能性について語った。