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サントリーが水素でウイスキーの直火蒸溜に挑戦、白州蒸溜所で実用化へ

2024年4月11日 発表

パイロットディスティラリーに設置された蒸溜釜

 サントリーホールディングスは、東京ガスグループ、SRCと共同で、水素を燃焼させて直火蒸溜して、従来のガスによる直火蒸溜と同様の味わいのウイスキーを実現できることを確認したと発表した。

 モルトウイスキーの蒸溜では、大きく分けて1000℃以上の高温で加熱する直火蒸溜と、120℃程度の温度で加熱する間接蒸溜の2通りの手法が用いられているが、サントリーでは、コクがあり力強い味わいを生み出せる直火蒸溜にこだわってウイスキーを作ってきた。

 同社ではカーボンニュートラルに向けた目標を設定し、CO2やメタンなどの温室効果ガスの排出量削減を目指しており、生産プロセスの省エネルギー化などにも取り組んでいるが、蒸溜のように大きな熱需要がある工程においては、既存の技術だけでは目標の達成が難しく、燃焼しても炭素を排出しないグリーン水素に着目するに至った。

 しかし、メタンを主成分とする一般的な都市ガスと比べると、水素は気体としての特性が異なり、燃焼速度が遅いために炉内の温度分布に差が生まれたり、燃えやすいために追加の安全対策が必要になったりと、従来のガス用の機器をそのまま使用することができない。

 そこで、燃焼技術についてのノウハウを持つ東京ガスグループと燃焼設備メーカーのSRCの協力の下、山崎蒸溜所内のパイロットディスティラリーに水素で直火蒸溜する試験用のポットスチルを設置。こうした取り組みは世界でも初めてということで、安全面でのリスクの評価をはじめ、イチから検討をスタートしたという。

(左から)東京ガスエンジニアリングソリューションズ 産業技術部 部長の家中進造氏、サントリー スピリッツ生産部 部長の小山泰弘氏、サントリー ブレンダー室長の野口雄志氏

 さまざまな違いがある中で、ガス釜での蒸溜をいかに再現するかにフォーカスし、水素を使った蒸溜にチャレンジしたところ、「コクと力強さが確認でき、環境負荷の低い方法でおいしいウイスキーが作れた」(サントリー ブレンダー室長の野口雄志氏)とのことで、同社では今後、白州蒸溜所において実用化に向け、製造設備規模での技術検証に取り組んでいく。

 なお、サントリーでは、パイロットディスティラリーにおいて電気を用いた蒸溜にも取り組んでおり、直火とは異なり、温度帯を自由に調節できることから、こうした特徴を活かした作り方を検討していきたいとしている。

水素直火蒸溜(右)と都市ガス蒸溜(左)のニューポット(蒸溜を終えたばかりの無色透明な原酒)