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サントリー白州蒸溜所がリニューアル。プレミアムを超える見学コースをチェック&味わってきた

2024年9月20日 新ツアースタート

「サントリー白州蒸溜所」がリニューアル

 2年近くに渡って改修を続けてきた山梨県にあるウイスキー工場「サントリー白州蒸溜所」がついに2024年9月、一連のリニューアル作業を終えた。新施設をオープンするとともに、工場見学ツアーである「白州蒸溜所ものづくりツアー」も一部アップデートしている。その中身が公開されたので、どこがどんな風に変わったのか、お伝えしたい。

パワーアップした工場見学「白州蒸溜所ものづくりツアー プレステージ」

 これまで白州蒸溜所で実施してきた工場見学ツアーは、「白州蒸溜所ものづくりツアー(所要時間90分、参加費3000円)」と「白州蒸溜所ものづくりツアー プレミアム(同130分、5000円)」の2種類。今回のリニューアルに合わせて後者の「プレミアム」が終了となり、新たに「白州蒸溜所ものづくりツアー プレステージ」(以降、プレステージツアー)が9月20日からスタートする。

新設された工場見学ツアー「白州蒸溜所ものづくりツアー プレステージ」

 プレステージツアーは、以前のプレミアムツアーと変わらない130分の所要時間ではあるものの、参加費は1万円、週2回開催で各回定員10名に限られ、まさに“プレミアムを超える”工場見学ツアーとなっている。Webサイトからの事前申し込みによる抽選制で、9月・10月実施分の募集は9月3日に締め切りとなる。間に合わなかった場合は、11月以降開催分の募集開始を待ちたい。

この約2年間でさまざまな新施設が誕生
ものづくりツアーは事前申し込みが必要で、抽選制となる

 とはいえ、料金がアップして人数が絞られた分、見学コースはより特別感のある内容に進化している。新施設の開放や、麦芽づくり現場の見学、食事と白州のマリアージュ体験など盛りだくさんだ。前回本誌でレポートした1年前の2023年9月から変化した箇所も含め、完全リニューアルした白州蒸溜所を写真多めで紹介していこう。

新レストランでもっちり窯焼きピザが食べられる

 2024年に敷地内に新設および整備されたのは、白州蒸溜所の入口となるビジターセンターの先にある「バードブリッジ」と「バードサンクチュアリ」、そしてその森を抜けたところに建てられた、銅板のファサードが印象的なレストラン「Hakushu Terrace」だ。

前回紹介したビジターセンター。この建物内を通り抜けると……
2024年に完成した跨道橋「バードブリッジ」が現われる
敷地内へと続く車道をまたぐ形で設置
バードブリッジの上。階段かエレベーターで昇り、渡ることができる
バードブリッジから出口方面(東方向)と敷地内方面(西方向)を見たところ
バードブリッジを渡ると、そこは野鳥たちが住まう森「バードサンクチュアリ」の入口
森の中を歩いて白州蒸溜所のメイン施設へと向かう
歩道には頑丈な柿の木の板が敷き詰められており、雨でもぬかるんだりしない
森の音が聞ける集音器。運が良ければ鳥のさえずりが聞こえるかも
森を抜けて最初に目にするのが、新設のレストラン「Hakushu Terrace」。2024年9月1日オープン
屋根やファサードには、ウイスキーの蒸溜に使われるポットスチルをイメージさせる銅板が使われている(ポットスチルを銅板にしたものではない)

「Hakushu Terrace」では、白州はもちろんのこと、山梨の地元食材をふんだんに使用した食事メニューが提供される。目玉となるのは「白州フォレストピザ」(2200円)で、ヒトデ型のもっちりとしたパン生地にウインナーや野菜、ハーブなどがどっさりトッピングされている。テイクアウトコーナーもあり、注文したものはレストランの2階フロアにあるゆったりとした空間で、白州の森を眺めながら味わえる。

レストラン店内
中央部は吹き抜け状になっている
その名の通りテラス席も用意。白州の森を間近に感じられる
2階にはくつろぎ空間が広がる
レストランの目玉メニュー「白州フォレストピザ」。地元食材をふんだんに使用
ヒトデ型の尖った部分にはウィンナーが詰め込まれ、野菜やハーブもたっぷり
ピザは店内で1枚1枚ていねいに焼き上げられる
食事とドリンクのメニュー。白州を使った「白桃ハイボール」のような変わり種も
テイクアウトコーナー。購入したものは先ほどの2階フロアで飲食可
既設のウイスキー博物館
こちらも既設のセントラルハウス
セントラルハウスではお土産の購入が可能。この日は白州も販売していた
セントラルハウス内にある、事前予約で無料入場できるテイスティングラウンジ

将来のビンテージウイスキーの始まりの場、フロアモルティングを見学

 一方、プレステージツアーに新たに追加された見学・体験メニューは主に3種類。1つ目はセントラルハウスの特別なテイスティングラウンジでのマリアージュ体験で、こちらも地元の食材や料理人の手による軽食が用意され、白州ハイボールなどとの取り合わせの妙を体感できる。

プレステージツアーで使われる特別なテイスティングラウンジ
「湧水鱒のスモークとマリネ」や「生ハムのクリームチーズカナッペ」といった地元食材と白州とのマリアージュ体験が可能

 2つ目は、今回新たに開放された「ものづくり棟」の見学。建物としては白州蒸溜所の創設時からあったもので、当時使われていた巨大なポットスチルが立ち並ぶ展示室に足を踏み入れることができる。その厳かとも言える空間では、周囲の壁3面に映像が投影され、白州蒸溜所の歴史などを知ることが可能だ。

プレステージツアーで新たに見学が可能になった「ものづくり棟」。白州蒸溜所創設時からある古い建物だという
内部に入ると「森の彫刻」と題された作品がお出迎え
白州蒸溜所初期に使われていたポットスチルが並ぶ
向かって右側に並ぶこれらのポットスチルは再溜用、左側は初溜用となっていた
壁3面に映像を投影して白州蒸溜所でのウイスキー作りの歴史などを学べる

 3つ目は、白州蒸溜所で開始したフロアモルティングの見学。これまで原料となる麦芽については輸入に頼ってきたサントリーだが、最近になって山崎蒸溜所と白州蒸溜所の両方で、大麦から発芽させて麦芽を作り出すフロアモルティングの取り組みをスタートした。プレステージツアーではそのフロアモルティングの現場を見ることができ、そこで働く人に解説してもらう流れとなっている。

プレステージツアーではフロアモルティングの様子も見学。ウイスキー作りに携わる現場の人たちに解説してもらえる
コンクリートの床に大麦が敷き詰められていた
かつては発芽を促すのにスコップを使って大麦を「転拌」していたが、現在は主に機械を利用している
発芽した大麦

 フロアモルティングで作られた麦芽は、他の輸入麦芽と同様に今後時間をかけて発酵、蒸溜、熟成という工程を経て製品化を目指すことになるが、現在のところは具体的にどのタイミングで、どの銘柄のウイスキーに使うことになるかは未定。少なくとも数年程度で世に出ることはないという。フロアモルティングによる最適な製法を模索しながら、12年、18年などのビンテージウイスキーとして登場することになりそうだ。

白州蒸溜所では酵母の独自培養も開始したところ。この設備については繊細な酵母を扱うことから見学は不可となっている

 これら新たに追加された見学コースに加えて、プレステージツアーでは以前のプレミアムツアーにもあった貯蔵庫奥での原酒の試飲が可能。プロジェクションマッピングによる製造工程の解説、発酵・蒸溜設備の見学なども従来通りとなる。

通常のものづくりツアーでも案内される貯蔵庫
貯蔵庫の奥にある樽に囲まれた空間で、樽から取り出した原酒を試飲できる(プレステージツアーのみ)
プロジェクションマッピングによる製造工程の解説
発酵に使われている木製の樽
現在の蒸溜工程で使われているポットスチル
貯蔵に用いられる樽や道具類の展示

ふらっと立ち寄って参加できる無料ツアーもあり

 ものづくりツアーはすべて事前申し込みの抽選制で、当選倍率も高いものと思われ、すぐに参加できるとは限らない。けれども、バードブリッジとバードサンクチュアリを担当者に案内してもらいながら歩ける、無料かつ当日受付の「白州の森ミニツアー」(所要時間30分)のような気軽に楽しめるアクティビティもある。

 東京都心から電車で2時間余りの場所にある、白州という日本有数のウイスキーが生まれる地。この秋は旅行がてら訪れて、その雰囲気を五感で堪能してみてはいかがだろうか。

レストランは予約制で9月1日オープン、プレステージツアーは9月20日よりスタート!