ニュース

キリン、海老名物流センターに自動ピッキングソリューション導入

2024年12月12日 発表

海老名物流センターに導入された「自動ピッキングソリューション」

 キリンビバレッジとキリングループロジスティクスは、海老名物流センターに「自動ピッキングソリューション」を導入し、12月から稼働すると発表した。

 新たに導入されたのは、三菱重工業が開発し、三菱ロジスネクストとともに提供する、さまざまな機械システムを協調動作させる「ΣSynX(シグマシンクス)」によって飲料倉庫のピッキング作業を自動化・知能化するソリューション。

 これまで物流現場の作業者自身が考えながら行なっていたパレット上に段ボールを積み付ける作業を、無人フォークリフト、無人搬送車、ピッキングロボットを連携させながら自動化・知能化するもので、コンベヤーなどの固定設備が不要となることから倉庫のレイアウトや拡張などの汎用性が高いとされている。

無人フォークリフト
無人搬送車とピッキングロボット

 2022年11月~2023年6月にかけて実施された共同実証では、生産性が42%向上。自動化・知能化することにより、庫内の搬送機渋滞削減、オーダー処理順の最適化につながったという。

 今回のソリューションの導入により、現場の作業環境が改善され、物流センター全体の人手不足の解消や、待機車両時間の短縮も可能となることから、2024年問題対策になることが期待される。

 12月12日には海老名物流センター内において自動ピッキング稼働セレモニーが開催され、3種類のロボットが協調動作する様子が報道関係者向けに披露された。

海老名物流センターに導入された「自動ピッキングソリューション」

 センター内では、ラックへの荷物の補充を行なうAGF(無人フォークリフト)4台と積み付け前後のパレットの移動を行なうAGV(無人搬送車)11台、オーダーにあわせてパレットに積み付けを行なうパレタイザー(ピッキングロボット)1台が稼働。

 最寄りのキリンビバレッジ湘南工場をはじめ、近隣の工場で製造された数千箱の飲料が毎日トラックで運び込まれ、有人のフォークリフトによりロボットの稼働エリア内に荷物を運び込む。2026年3月をめどにこうした搬入・搬出作業の自動化も目指すとのことだが、現時点ではオーダーに応じてパレットに積み付けを行なうところまでを請け負う形になっている。

(左から)三菱ロジスネクスト 代表取締役会長の御子神隆氏、三菱重工業 執行役員 ドメインCEO 物流・冷熱・ドライブシステムドメイン長の佐々倉正彦氏、キリンホールディングス 常務執行役員の岩崎昭良氏、キリンビバレッジ 常務執行役員 生産本部長の坂口典優氏、キリングループロジスティクス 代表取締役社長の安藤弘之氏

 三菱重工業 物流・冷熱・ドライブシステムドメイン ソリューション事業統括室長の中尾正芳氏によれば、個々のロボットの部分最適ではなく、最適化エンジン(SynX OPT)により全体最適を図るのが特徴とのこと。

三菱重工業 物流・冷熱・ドライブシステムドメイン ソリューション事業統括室長の中尾正芳氏

 同じ場所にパレットを固めると複数のAGVが渋滞を起こすこともあるため、あえてパレットを分散して配置することで渋滞を発生させなくしたり、オーダー処理の順番を最適化することで無駄な動きを最小化したりする。さらに、27箱が乗ったパレットから22箱を出荷する場合、パレタイザーで22箱を移動させるのではなく、5箱だけ移動させ、22箱が残ったパレットを出荷に回すといった形で局面ごとの最適化も行なわれている。

「自動ピッキングソリューション」の特徴

 キリングループロジスティクス 代表取締役社長の安藤弘之氏によると、1箱10kgほどある飲料商品のピッキングを行なうのはかなりの重筋作業で、腰痛を発生させるリスクも大きい。近年の猛暑の下、空調が効きにくい倉庫内では過酷さが増してしまう。作業の大半を機械に任せられれば、こうした作業者の負担を軽減し、他の業務への配置が可能になることから、2025年以降のキリングループ全体への展開も視野に同施設での検証を進めていくとしている。