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キリンビバレッジ2024年事業方針、高付加価値商品へのシフトを加速

2024年1月25日 発表

代表取締役社長の吉村透留氏(左)と執行役員 マーケティング部長の成清敬之氏(右)

 キリンビバレッジは1月25日、2024年の事業方針発表会を開催し、代表取締役社長の吉村透留氏と執行役員 マーケティング部長の成清敬之氏が説明を行なった。

 吉村氏は、2023年を振り返り、原材料や物流コストの高騰によるネガティブな影響がありながらも、新型コロナの5類移行後も消費者の高い健康意識が持続したことで健康市場が伸長し、猛暑や残暑による需要増もあったことから、清涼飲料市場は前年比100%で着地するとの見通しを示した。

 同社の事業においては、清涼飲料の合計(販売数量ベース)では前年比95%となったが、その背景について、同氏は「『アルカリイオンの水』を2022年に終売した影響から前年比95%となったが、注力したヘルスサイエンス領域では、プラズマ乳酸菌飲料が前年比136%で大幅に伸び、ヘルスサイエンス領域の販売構成比が全体の中で13%に上昇し、高収益化に向けての道筋をつけた。『午後の紅茶』は前年比102%とプラスに推移し、『生茶』も99%とほぼ前年並み」だと説明した。

 今後の見通しとしては、中長期的には人口減少によって市場の縮小が想定されるが、コロナ禍で高まった健康への意識は一時的な流行ではなく、今後も継続が見込まれることから、物流問題などの課題に対処しながら、日常生活の質を高めるような新提案を行ない、市場を作っていくことが重要だと述べた上で、ヘルスサイエンスを軸にした事業ポートフォリオへの変革を加速させることで、ブランド力と収益力の向上を目指す方針を示した。

新発売・リニューアル発売される商品群

 プラズマ乳酸菌入り飲料については、前年比138%の1240万箱の販売を目標とし、免疫ケアの必要性を認識しながらも実行に移せていない人に向けてアプローチすることで市場の裾野拡大を目指す。

 午後の紅茶ブランドでは、茶葉や製法にこだわった「午後の紅茶 TEA SELECTION」シリーズが好評だったことから、販売を通年化。「生茶リッチ」についても自動販売機での展開を開始し、「ファイア」ブランドからは香りにフォーカスした新たなペットボトルシリーズを発売することで、生活の質を高めたいというニーズにマッチした高付加価値商品を投入していく。

 また、生茶については、パッケージデザインを大きく変更することで、コモディティ化からの脱却を図る。

 2024年の販売計画としては、市場全体(数量ベース)のが前年比99%と見込まれるなかで同101%を目標に掲げ、金額ベースでは+5%以上、ヘルスサイエンス領域においては+20%以上を目指すことで、高収益化への変革を加速させるとしている。

 続いて登壇した成清氏は、直近の消費者ニーズについて説明した。

 機能性表示食品や特保の飲料の市場や無糖飲料の市場が拡大傾向にあるというデータを示し、“体の健康”を意識している人が増えていると指摘。あわせてコロナ禍で落ち込んでいたポジティブな感情が回復しつつあり、他人との比較というよりも、自分の価値観にあったもので日々の生活を豊かにしたいという“心の健康”に対する意識も高まっているとする。

 こうした環境を踏まえ、2024年のマーケティング戦略としては、「キリンならではの新たな価値創造」をテーマに、ヘルスサイエンス、午後の紅茶、生茶の3つの注力領域を設定し、新商品の投入やリニューアルを実施していくという。

 ヘルスサイエンス領域の核となるプラズマ乳酸菌飲料では、ラインアップの拡充などによって免疫ニーズ潜在層に向けて間口を拡大を図りつつ、ラベルレスの商品を用意するなどして習慣としての定着を図る。カロリミットブランドを展開するファンケルにおいても、健康意識が高くない層に対しても訴求できるようなおいしさを追求するとしている。

 午後の紅茶では、昨年6月にレギュラーシリーズのリニューアルを実施したほか、上質感のあるTEA SELECTIONシリーズを販売することで、紅茶のおいしさを伝え、報酬感が得られるようにすることで好調に推移してきたことから、2024年もこうした取り組みを継続。4月16日に「午後の紅茶 TEA SELECTION アールグレイアイスティー」「午後の紅茶 TEA SELECTION ロイヤルブレンドティーラテ」が発売となる。

 生茶ブランドでは、昨年9月に発売した「生茶リッチ」が1か月で年間の販売目標をクリアした手応えを元に、“どれを買っても同じ”というコモディティ化からの脱却を図る。4月9日にリニューアル発売する「生茶」「生茶 ほうじ煎茶」では、パッケージデザインを大きくイメージチェンジ。これにあわせ、抽出した茶液を凍結・凝縮することで新茶のような甘みを増幅させる新技術「凍結あまみ製法」を導入するほか、微粉砕茶葉を現行品から約3倍に増やすことで苦渋みを抑え、香りやコクを演出する工夫が施されている。

 このほかでは、コーヒーのファイアブランドから「ファイア アロマブリュー ブラック」「ファイア アロマブリュー ラテ」の2商品を3月12日に発売。熱を加えることで淹れたてのような香りが生成される技術を応用した「アロマブリュー製法」により、香りにフォーカスしたシリーズとなる。