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キリン、自販機ビジネスのDX。ソフトバンクのAIを活用したオペレーション最適化サービス「Vendy」導入

2024年3月12日 発表

自動販売機ビジネスのDXを図る、AIを活用した自販機オペレーション最適化サービス「Vendy」を導入

 キリンビバレッジは、同社のグループ会社が管理する自動販売機(自販機)に、ソフトバンクが開発した、AIを活用した自販機オペレーション最適化サービス「Vendy(ベンディ)」を10月より順次導入する。

 自販機のオペレーション業務効率化や、設置先のニーズに応じた商品ラインアップの最適化、自販機のブランド育成に応じたラインアップの最適化を図り、2025年9月末までに全国で約8万台の自販機に導入予定。

日本は「自販機大国」。年間売上は約4.7兆円

 都内で開かれた「AIを活用した自販機オペレーション最適化サービス」に関する説明会で冒頭、ソフトバンク 法人事業統括 デジタルトランスフォーメーション本部 第三ビジネスエンジニアリング統括部 オペレーションデザイン事業推進部 部長の松山誠氏が自販機市場について説明。

ソフトバンク株式会社 法人事業統括 デジタルトランスフォーメーション本部 第三ビジネスエンジニアリング統括部 オペレーションデザイン事業推進部 部長 松山誠氏

 同市場の年間売上金額は約4.7兆円。約400万台(うち飲料自販機は約255万台)の自販機が日々稼働しており、自販機は人々の生活に根付いた日本が世界に誇るビジネスだと語る。

【訂正】ソフトバンクのリリースに誤りがありましたので、年間自販金額を訂正いたします。

自販機業界を取り巻く課題

 自販機は、約400万台の顧客タッチポイントや、24時間365日稼働、無人販売、災害時のライフライン、災害対策、保温保冷された商品を常時販売できるなどの強みがある。一方、ECサービスの台頭、2024年問題などの物流クライシス、労働力不足、多様化する顧客ニーズなど、自販機ビジネスを取り巻く環境の変化や課題もある。

 さらに、自販機を管理・運営するうえで、担当者が個人の経験などに基づいて自販機ごとの棚割りや補充数、巡回計画を決めるなど、属人的な業務が多く、人手不足やスタッフの業務負荷に加えて、廃棄ロスや品切れ、非効率な巡回によるCO2排出量なども課題となっている。

日本は「自販機大国」
自販機業界を取り巻く環境

自販機の維持に欠かせない「自販機オペレーション」

 自販機業界には、自販機メーカー、飲料メーカー、オペレーター、自販機設置先が関わっており、ソフトバンクが開発した「Vendy」は、自販機の維持に不可欠な管理・運営を行なう自販機オペレーションの最適化サービス。

 オペレーターは、商品補充のためのルート計画策定、商品積込、ルート巡回、商品補充・棚割変更、売上金回収、釣銭補充、空容器回収、清掃などを行なっており、アナログな運用も多く、デジタル化・効率化の余地が大きいという。

自販機業界の構造
自販機オペレーションの内容
自販機オペレーションの課題

AIを活用した自販機業界向けDXサービス「Vendy」。自販機オペレーションの課題を解決

「Vendy」に、キリンビバレッジのオンラインシステムで収集した自販機の販売データや巡回に伴なうコスト情報などの各種データを学習させると、AIで分析し、売れ行きのよい商品アイテムを選定して、最適な商品ラインアップを提案する。

 また、効率的な訪問タイミングや巡回ルート、補充本数まで自販機オペレーションに関わる一連の計画を自動で生成し、生成された計画はパソコン画面やスマートフォンの専用アプリで確認できる。

「Vendy」利用イメージ
属人的な業務を改善して、自販機のオペレーション業務効率化を図る

「Vendy」がオペレーションを最適化することで、人手不足対応、廃棄ロス削減、売上向上に貢献するとしている。

「Vendy」の機能

1. 自販機の遠隔管理やデータ収集に利用する「通信機(通信回線を含む)」
2. ソフトバンクが独自開発したAIアルゴリズムを用いて自販機のデータやコスト情報を分析して最適な巡回計画や棚割りなどを自動生成する「AI分析機能」
3. AIで自動生成された巡回計画や自販機の在庫状況などを確認できる「管理画面」

「Vendy」サービス概要
AIを活用した分析・予測
「Vendy」の特長
「Vendy」導入による業務変革
キリンビバレッジ株式会社 営業部 戦略推進担当 主務 吉岡弘隆氏

 キリンビバレッジ 営業部 戦略推進担当 主務の吉岡弘隆氏は、キリンビバレッジと共同で同社のグループ会社が運営する自販機を対象に実証実験を行なったところ、自販機のオペレーションに関わる業務時間の約1割を削減、また約5%の売上増を見込むことができ、有用性を確認できたと語った。

 売れ行きのよい商品アイテムの提案だけでなく、商品ブランド育成の観点も考慮したうえでの最適な商品ラインアップの提案も可能としており、消費者のニーズの充足と商品ブランド育成を両立できるという。

 10月よりキリンビバレッジのグループ会社が運営する自販機で導入予定で、2025年9月末までに約8万台に導入完了予定。自販機オペレーションの業務変革の実現を目指し、多くの消費者へ質の高いサービスを提供できるよう努めるとしている。

10月より「Vendy」を自販機に導入
キリンビバレッジ「Vendy」の導入目的
「Vendy」導入前後の業務フロー
「Vendy」導入効果

 また、吉岡氏は、導入によって創出された時間は、自販機の新規設置先の開拓に充てたり、属人的な業務プロセスの改善により、人材配置の柔軟性を高め、従業員育成を促進することが可能になると締めくくった。