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キリン、コーヒーチェリーの果肉や果皮を独自技術で飲みごたえを生む香料に

11月25日発売の「麒麟特製 みかんサイダーサワー」で活用

2025年11月25日 発売
キリンホールディングス R&D本部 飲料未来研究所の辻さや香氏(左)とキリンビール マーケティング本部 マーケティング部 商品開発研究所中身開発グループ RTDチームの宮崎雅大氏(右)

 キリンビールは、「麒麟特製 みかんサイダーサワー(期間限定)」を11月25日に発売する。

 麒麟特製シリーズは“上質なうまさ”をテーマに展開されているサワー商品。今回の商品では、上質な味わいに加え、「コーヒーチェリー由来の発酵香料素材」を使用することで飲みごたえのある味わいを実現している。

 キリンホールディングス R&D本部 飲料未来研究所の辻さや香氏によれば、コーヒー豆の生産において使用される種子を取り出したコーヒーチェリーの果肉や果皮の多くは廃棄されており、カフェインやポリフェノールといった成分が生態系に影響を与えたり、水質・土壌汚染などが懸念されている。

 一部の産地では堆肥化や食品原料化なども行なわれているが、依然として単に廃棄している産地も多く、その廃棄量は年間で約2000万トンになるとも言われており、コロンビアではコーヒーチェリーの廃棄に環境税を課すなどの対策もとられている。

 こうした課題に対し、キリンでは2018年からコーヒーチェリーの有効活用について研究を進め、独自のワインの香気増強技術を応用し、コーヒーチェリーを搾汁し、濃縮したエキスを乳酸菌と酵母で発酵させた素材が、酒類や清涼飲料の温感や発酵感、アルコール感、果実感、コクを増強する効果を持つことを発見した。

 同社では、アルコール発酵の前にブドウ果汁を乳酸菌と酵母で発酵させることで、柑橘香成分の元となる前駆体を増やし、ワインの香りを増強する特許を取得しているが、コーヒーチェリーにおいては乳酸菌→酵母の順に発酵させることで、ダマセノンという香気成分が増加し、フルーティで甘いはちみつのような香りが出現し、コーヒーチェリー特有の土臭さもなくなった。

 この素材をキリンレモンに添加して試飲したところ、果実感とコクが増強されることが分かり、麒麟特製のようなRTD(Ready To Drink)商品やノンアルコール飲料でも試してみたところ、香味の向上が確認できたという。

 今回の商品は、この素材を活用することで、味わいに厚みを出し、お酒らしい飲みごたえや余韻を表現している。実は、4月から販売されている「麒麟特製 クリアサワー」「麒麟特製 メロンソーダサワー」でも同様の工夫が行なわれていたが、コーヒーという強いワードがどう受け取られるかという不安もあり、社内で議論を重ね、このタイミングでの情報開示となった。

麒麟特製 みかんサイダーサワー

 キリンビール マーケティング本部 マーケティング部 商品開発研究所中身開発グループ RTDチームの宮崎雅大氏は、その味わいについて、「トップからさわやかなみかんの香りが広がり、その後に報酬感のあるみかんの甘みとお酒らしい飲みごたえ感じられ、飲み進めていくとお酒とみかんが調和した複雑な旨みが感じられる。飲み込むと、嫌な苦みを抑えた心地よい余韻が楽しめる」と説明する。

 10月29日に開催された説明会では、「コーヒーチェリー由来の発酵香料素材」を使っているものと使っていないものの飲み比べも体験できた。未使用のものが凹凸のないスッキリとした印象に感じられる一方、同素材を使用している方は口に含んだ瞬間に心地よいピールの渋みとともに柑橘の香りが強調され、甘みがやって来たのち、上品な余韻が残る。その違いは歴然で、好みの問題もあるが、お酒好きなら間違いなく後者を選択するであろうことは容易に想像できる。

見た目は同じだが、口に含むとその差は歴然

 辻氏によれば、温感や発酵感などの増強に寄与するような成分の増加も確認されており、ノンアルコールビールに添加した場合、アルコールを飲んだときのような温感が感じられることから、適正飲酒のような社会課題の解決の一助になることも期待される。

 また、加熱時に香りが飛ぶといったことも懸念されるが、口に入ることで効果を生み出すことから、その影響も受けにくく、さまざまな飲料で活用できる。飲料だけでなく、調味料への応用も可能で、汎用性が高い香料素材となっている。

 2025年度は約400kgのコーヒーチェリー果肉・果皮の使用に過ぎないが、香料素材としての使用価値が広く認められれば、貧困に苦しむ産地のコーヒー農園の収入向上や環境負荷の軽減などに繋がるため、同社では利用の拡大を検討していく。

 ノンアルコール飲料での活用については、2026年以降の商品化に向けて検討を進めているとしている。