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サッポロビール、酒税改正でビール回帰へ過去最大級の投資。重要なタッチポイント「銀座ライオンビル」をリニューアル

2026年8月26日 発表
サッポロビール 執行役員 マーケティング本部長の中村洋一氏(左)と、マーケティング本部 ビール&RTD事業部長の下和田勇氏(右)

 サッポロビールは「酒税改正に伴うビール&RTD戦略発表会」を開催した。10月の酒税改正でビールと新ジャンルの税率が一本化されることを最大の成長機会と位置付け、主力の「サッポロ生ビール黒ラベル」と「ヱビス」に過去最大級のマーケティング投資を行なう。その象徴となる新しいブランド体験拠点として、銀座ライオンビル4階に「サッポロ生ビール黒ラベル BEER AJITO」と「YEBISU BEER HALL TOKYO」を10月27日に開業する。

 登壇したのは執行役員 マーケティング本部長の中村洋一氏と、マーケティング本部 ビール&RTD事業部長の下和田勇氏。中村氏が中期戦略と市場予測を、下和田氏が酒税改正期間の成果と改正後のマーケティングアクションを説明した。

会場に並んだサッポロ生ビール黒ラベル、ヱビスビール、サッポロラガービールと、「サッポロ 超・濃いめのレモンサワー」「デュワーズ12年ハイボール」

プレミアム化は価格の話ではない。中村氏が示した中期戦略

サッポロビール株式会社 執行役員 マーケティング本部長 中村洋一氏。ミツカン、コカ・コーラ、ハルメク、日清食品を経て、2026年7月に現職へ着任した

 サッポロビールは2026年7月に事業持株会社化し、これを機に新しい経営理念「より豊かな未来を開拓する(Pioneering The Legacy of Tomorrow)」を定めた。実現に向けた戦略軸は「Bonds with Community」と「Healthier Choice」の2つ。前者はつながりを育み感情の質を高める顧客体験の創造を、後者は好きなものをより長く楽しめる新しい健康的選択肢の提供を指す。

 国内酒類事業では「JAPAN PREMIUM BEER No.1 SAPPORO」を目標に掲げる。ここで言うプレミアムについて中村氏は「単に価格が高いことを表わしているのではない。このブランドだから選びたいと思っていただける独自の価値が必要になってくる」と説明。その価値を生む強みとして、街の名を冠した個性的なブランド、物語性のある体験創出、自然の恵み・素材へのこだわりという3つのコアコンピタンスを挙げた。

7月の事業持株会社化を機に定めた新経営理念「より豊かな未来を開拓する」と、2つの戦略軸

 10月の酒税改正では、ビールが減税、新ジャンルが増税となって税率が一本化される。同社の予測では、酒類市場全体に占めるビール(プレミアム+メインストリーム)の数量構成比は2025年の23%から2030年に26%へ、旧新ジャンルから移行する「ビール化する新ジャンル」は0%から8%へ広がる。一方で新ジャンル+発泡酒は23%から10%に縮小する。RTDは増税の対象ながら、価格優位性とエントリーユーザーの取り込みにより31%から35%へ拡大すると見込む。

 中村氏はこの変化を「メリハリ消費の定着」と「価値重視型消費へのシフト」と捉える。「価格差が縮まることで、お客さまが価値を基準にブランドを選ぶ機会が増えていく」として、ビール回帰の流れを最大の成長機会と位置付けた。

ビールの数量構成比は2025年の23%から2030年に26%へ。RTDも31%から35%に拡大すると予測する

 体験を軸としたマーケティングの実績も示された。ビールカテゴリー〈缶〉の総需要が2014年比1.13倍だったのに対し、同社の出荷実績は1.54倍。一貫したブランドコミュニケーションによる情緒的なつながりと、リアルな場でのブランド体験による直接的なつながりを、両方とも継続して育ててきた結果だという。

ビールカテゴリー〈缶〉は市場が2014年比1.13倍のところ、同社は1.54倍に伸長した

 酒税改正後の方針は、ビール事業が「ブランド体験の創出・拡大を通じた購買機会の創出」、RTD事業が「多様な価値提案を軸とした需要創造を推進」。ビール事業では10~12月に過去最大級のマーケティング投資を実施する。規模は2025年比で約1.1倍、2024年比で約1.3倍となる。

ビール事業では10~12月に過去最大級のマーケティング投資を実施。2025年比約1.1倍、2024年比約1.3倍となる

新商品に頼らず既存ブランドを磨く。上期のビール計は前年比104%

サッポロビール株式会社 マーケティング本部 ビール&RTD事業部長 下和田勇氏

 下和田氏は、2016年に酒税法改正が発表されて以降の8年間を振り返った。ビールが減税になることから、ビール4社が狭義ビール(発泡酒や新ジャンルを含まない従来のビール)を強化する方針は共通だったが、同社は新商品に頼らず既存ブランドを磨き上げる道を選んだ。結果として、ビールカテゴリー〈缶〉は2018年比で総需要が1.17倍のところ同社は1.28倍と、10ポイント以上引き離している。

 その中心が黒ラベルだ。総需要が縮むなかで缶の出荷量は2014年を底に伸び続けており、下和田氏はその過程を4つのフェーズで説明した。2010年に放映を開始した「大人エレベーター」による世界観の醸成、その世界観を若年層がSNSで広げたことによる間口拡大、営業とマーケティングが噛み合った西日本エリアの拡大、そして酒税改正と広告投資強化によるボリューム層の拡大となる。

黒ラベルの缶は2014年を底に成長。4つのフェーズで間口とボリューム層を広げてきた

 同じモデルはサッポロラガービール(赤星)でも機能している。創業150年を迎えたサッポロビールの、その翌年に誕生した149年の歴史を持つブランドだ。瓶ビール市場が2016年からの10年間で約半分に縮むなか、出荷数量は約3.5倍に伸長した。「瓶ビールを仲間と注ぎ合うことでブランドとの物語ができ、その物語をまた違うお客さまに伝えていく。お客さまと飲食店に育てていただいたブランドだ」と下和田氏は語る。

瓶ビール市場が10年間で約半分に縮むなか、サッポロラガービールの出荷数量は約3.5倍に伸長した

 2026年1~7月は、黒ラベルの広告に1月から松任谷由実氏、7月から山本由伸選手を起用。7月には「サッポロ生ビール黒ラベル THE BAR OSAKA」を開業した。上期の実績は黒ラベルが前年比101%、ヱビスビールが99%で、ビール計は104%。サッポロクラシックが102%、ラガー瓶が122%、SORACHI1984が121%と大幅に伸びている(いずれも全容器計)。

2026年1~7月のビール実績。ビール計は前年比104%と伸長した
サッポロ生ビール黒ラベル
ヱビスビール

銀座ライオンビル4階に「BEER AJITO」と「YEBISU BEER HALL TOKYO」

 酒税改正後のアクションの中心に置かれたのが、銀座の新しいブランド体験拠点だ。1899年に銀座8丁目で日本初のビヤホール「恵比寿ビール ビヤホール」が誕生して以来、銀座はビヤホール発祥の地として歴史を刻んできた。1934年に建てられた銀座ライオンビルはその銀座7丁目に位置し、1階から3階では「ビヤホールライオン」「ビヤレストラン ライオン」「和食ビヤホール 枡々益」が営業している。

1899年の恵比寿ビヤホール開業から始まった銀座とサッポロビールの歴史。1934年には大日本麦酒銀座ビル(現在の銀座ライオンビル)が誕生した

 このビルが「乾杯で人をつなぎ、思い出で歴史をつなぐ」をコンセプトに10月27日にリニューアルし、4階に「サッポロ生ビール黒ラベル BEER AJITO」と「YEBISU BEER HALL TOKYO」が開業する。12月には5階にサッポロライオンの新業態も予定する。

「サッポロ生ビール黒ラベル BEER AJITO」と「YEBISU BEER HALL TOKYO」は10月27日17時にグランドオープンする

 「BEER AJITO」のコンセプトは「大人たちが自分らしくビールを嗜む隠れ家」。「CLUB黒ラベル」会員だけが利用できる31席限定の会員制ビヤバーで、数十種類のグラスと複数の注ぎ分けにより、一杯ごとに異なる黒ラベルの表情を味わえる。

 黒ラベルは2019年から銀座にフラッグシップビヤバー「サッポロ生ビール黒ラベル THE BAR」を、7月からは大阪に2拠点目を構えている。BEER AJITOはこれらに加わる新しい体験拠点となる。

「サッポロ生ビール黒ラベル BEER AJITO」の店内イメージ

サッポロ生ビール黒ラベル BEER AJITO

開業日: 2026年10月27日17時
所在地: 東京都中央区銀座7-9-20 銀座ライオンビル4階
営業時間: [月曜~木曜、日曜]17時~22時、[金曜・土曜]17時~22時30分
席数: 31席(カウンター席のほかテーブル席・個室)

※CLUB黒ラベル会員限定。個室は開業後に順次オープン予定。予約開始日と予約方法は決定次第案内

 「YEBISU BEER HALL TOKYO」のコンセプトは「日本で初めてビヤホールを誕生させたヱビスが贈るプレミアムビヤホール」。飲み放題付きのコースのみの提供で、スタッフが店内を巡りながら料理や食材を紹介するラウンドサービスにより、ビヤホールならではのライブ感を演出する。ヱビスビールは、1899年当時のビヤホールで使われていたものを現代的に再解釈したオリジナルタンブラーで提供する。ヱビス プレミアムブラック、琥珀ヱビス、ヱビス プレミアムエールなども味わえる。

「YEBISU BEER HALL TOKYO」の客席イメージ

YEBISU BEER HALL TOKYO

開業日: 2026年10月27日17時
所在地: 東京都中央区銀座7-9-20 銀座ライオンビル4階
営業時間: [月曜~木曜]17時~22時、[金曜]17時~22時30分、[土曜]15時~22時30分、[日曜]15時~22時
席数: 93席

※飲み放題付きコースのみの提供。予約開始日と予約方法は決定次第案内

「大人エレベーター」は約16年ぶりの新展開。ヱビスは飲食店での体験を強化

 黒ラベルは9月16日から、「大人エレベーター」で描いてきた世界観を拡張する新しいコミュニケーションを始める。約16年ぶりとなる新展開で、実在する飲食店を舞台に生のうまさを伝える内容になるという。

「大人エレベーター」は9月16日から約16年ぶりの新コミュニケーションをスタートする

 ヱビスは飲食店での体験強化を続ける。高品質なヱビスを提供する「絶品ヱビスの店」と、提供品質を高める認定制度「MASTER OF YEBISU」を軸に、10月からは新CMの飲食店編をスタート。9月19日~27日には「YEBISU ビアグルメグランプリ」、11月19日~21日にはラーメン店の飯田商店との共創企画を予定する。下和田氏は、矢沢あい氏とのコラボデザイン缶なども含め「一度体験で触れていただいたお客さまが、何かきっかけがあった時にまた飲んでくださる」と、新規客の獲得につながっていると説明した。

「濃いめ」が「超・濃いめ」に。デュワーズ12年のハイボール缶も登場

 RTD事業は「濃いめ市場」の活性化と高付加価値強化の2本立てで臨む。2026年1~7月のRTD缶計は前年比90%、濃いめブランドは約1割減となった一方、ノンアルコールRTDの「濃い搾り」ブランドは約3割増と好調に推移した。同ブランドは2024年から2025年でも約1.7倍に伸びている。

 同社の調べでは、商品名に「濃い」が付き味わいの濃さを訴求する「濃いめ市場」の売上は2021年から2025年で約1.6倍に拡大。そのうち76%を同社の濃いめブランドが占める。下和田氏は「生活防衛意識が高まると、同じ価格を支払って満足感を求める、濃い味が求められる傾向が強まる」として、濃い味わいの価値をさらに広げるとした。

「濃いめ市場」は2021年から2025年で約1.6倍。そのうち76%を同社の濃いめブランドが占める

 その中核となる濃いめブランドは、同社のRTDで史上最大の販売数量を持つ。今回はブランド名そのものを「サッポロ 超・濃いめ」に改めてリニューアルする。「サッポロ 超・濃いめのレモンサワー」は自家製レモン漬け込み酒を一部使う「濃いめ製法」に加え、新たに「まるごとレモンエキス」を使って果実の酸味と味の濃さを強化。「レモンサワー 重ね檸檬」「グレフルサワー」も同時に切り替わり、パッケージは果実のイラストをよりリアルなものへ変更する。

 缶のRTD商品は8月中旬製造分から、氷やソーダで割って飲む「サワーの素」などのRTS商品は10月製造分から順次切り替わり、10月12日の週に店頭での立ち上げを強化する。

 あわせて、ブランド初の無糖商品も10月14日に登場する。「サッポロ 超・濃いめのレモンサワー 無糖」を全国で数量限定発売し、同日に「サッポロ 超・濃いめのレモンサワーの素 無糖」(500mLびん、アルコール分25%)も発売する。奥行きのある香りとコクが特徴という柑橘エキスを使い、無糖ながら満足感のある濃さとキレを両立したとしている。

発表会で紹介されたRTD商品。「サッポロ 超・濃いめ」ブランドと「デュワーズ12年ハイボール」、ノンアルコールの「サッポロ 濃い搾り」ブランド

サッポロ 超・濃いめのレモンサワー

発売時期: 2026年8月中旬製造分から順次切り替え
販売地域: 全国
容量: 350mL缶、500mL缶
品目: スピリッツ(発泡性)
アルコール分: 7%
価格: 350mL缶159円前後、500mL缶216円前後(いずれも税別)
※10月1日以降はオープン価格
※「レモンサワー 重ね檸檬」(アルコール分4%)「グレフルサワー」も同時にリニューアル。「サワーの素」は10月製造分から順次切り替えで、500mLびん650円、1.8Lペットボトル1650円(いずれも税別)

サッポロ 超・濃いめのレモンサワー 無糖

発売日: 2026年10月14日
販売地域: 全国(数量限定)
容量: 350mL缶、500mL缶
品目: スピリッツ(発泡性)
アルコール分: 7%

 高付加価値の提案としては、「デュワーズ12年ハイボール」を11月17日に全国で数量限定発売する。デュワーズは1846年にスコットランドで誕生し、180年にわたって世界で愛されてきたスコッチウイスキー。インテージSRI+(2024年7月~2025年6月のスコッチウイスキー販売金額、7業態計)ではスコッチウイスキーブランドの国内売上1位となっている。

 ハイボール缶に使うのは、12年以上熟成したアバフェルディを中心に40種類以上の原酒をブレンドし、1stフィルバーボン樽で2度目の熟成を行なった「デュワーズ12年」の原酒。なめらかな味わいと芳醇な香りが特徴で、パッケージも洗練された色の組み合わせとメタリックな質感で高級感を表わした。

「デュワーズ12年ハイボール」は11月17日に数量限定で発売する

デュワーズ12年ハイボール

発売日: 2026年11月17日
販売地域: 全国(数量限定)
容量: 350mL缶
品目: ウイスキー(発泡性)
アルコール分: 7%
価格: 340円前後(税別)

 「酒税改正を大きな事業機会と捉えている。これまで磨き続けてきたブランドの個性や物語、そして体験価値をさらに進化させていく」と下和田氏。10月27日に開く銀座の2店舗は、その言葉がもっとも分かりやすい形で現われる場所になりそうだ。