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ヱビスビールの歴史が分かるARコンテンツ、恵比寿ガーデンプレイスで試してみた

KDDI・サッポロビール「XR PROJECT @YEBISU β.ver」

2021年12月20日 発表

恵比寿ガーデンプレイスの時計広場におけるXRコンテンツ

 サッポロビールとKDDIは恵比寿ガーデンプレイスにおいて、ヱビスビールブランドの歴史などを映像で解説するARコンテンツ「XR PROJECT @YEBISU β.ver」の提供を開始した。

 提供時期は、屋外コンテンツが2022年3月31日までで、ヱビスビール記念館内コンテンツが2023年3月31日まで。無料で利用できる。

 この試みでは、カメラで撮影する映像にCG描写された仮想オブジェクトを重ね合わせるARとあらかじめ撮影された360度映像に仮想オブジェクトを重ねて表示させるVRの両方のコンテンツが提供される。前者は恵比寿ガーデンプレイスの現地で、後者はどこにいても利用できる。

恵比寿ガーデンプレイスにはもともとヱビスビールの工場があり、それが「恵比寿」という地名になった

 サッポロビールとしては、今回の試みはヱビスビール製品の直接的な宣伝というより、約130年という長い歴史を持ち、「恵比寿」の地名の元ともなったヱビスビールのブランド全体をアピールすることを狙っている。

 一方のKDDIは、「au XR Door」というブランド名でさまざまなXRコンテンツを提供しており、この試みもその一環だが、新しい仕組みも導入している。

スマートフォンのブラウザから簡単に体験可能

 今回の取り組みは、KDDIによる実用試験的な意味合いも強く、さまざまな最新の技術を組み合わせたシステムが使われている。

床に貼ってあるQRコードを読み取るだけで利用できる

 技術的な特徴としては、専用アプリを使わず、スマートフォン標準のブラウザだけでAR/VRを体験できることが挙げられる。会場にあるQRコードで「XR PROJECT @YEBISU β.ver」のWebサイトにアクセスするだけでいいので、会場に訪れた人がその場ですぐに楽しみやすい。Androidスマートフォンの「Chrome」、iPhoneの「Safari」から利用できる。

一つのポータルサイトからARとVRの両方にいけるので、URLの共有もしやすい

 また、「XR PROJECT @YEBISU β.ver」では現地にいる人向けのARコンテンツに加え、どこからでも楽しめるVRコンテンツも提供される。同じポータルサイトからアクセスするので、現地に行った人がARを楽しみつつ、友人にURLを共有し、その友人はVRで楽しむ、といった使い方が想定されている。

ポータルサイトのQRコードを読み取るが、VPS技術により、ARの位置基準となるマーカーQRコードなどは不要。VPSのWebアプリ組み込みは今回が初とか

 標準ブラウザだけで利用できるので、「アプリストアからアプリをダウンロードして設定する」といった手間に比べると、はるかに簡単だ。ユーザー側としては簡単だが、ブラウザ上でXRコンテンツを動かすために、Webアプリとしては高度な作り込みがされている。

こんな感じに現実空間に仮想オブジェクトが重なって表示される。メインホールでは恵比寿像がお出迎え

 カメラで写している現実空間とCG描写の仮想オブジェクトを重ねるために、カメラ映像から自己位置や向きを測定する、VPS(Visual Positioning Service)という仕組みを使っている。

 ARコンテンツの開始時、ユーザーは始点となる場所で、指定された方向にカメラを向ける。この画像がサーバーに送信され、サーバー上のデータと比較することで、現実空間でのカメラの座標と向いている方向が解析される。スマートフォンのブラウザはこの情報をもとに、サーバーから送られてきたオブジェクトを表示する位置や大きさを調整する。

旧工場の模型では歴史などを解説するコンテンツを提供。音声もあるので、可能ならヘッドセットを用意した方がよい

 AR表示中、スマートフォンを動かすと、周囲の現実空間と一緒に、仮想オブジェクトも動く。ただしスマートフォン側の座標は初期位置に固定されていて、ジャイロセンサなどで向きの変化だけを検出する、いわゆる3DoF(Degree of Freedom:自由度)のXRとなる。そのため、歩いたりしゃがんだりすると、現実空間と仮想オブジェクトの位置ずれが生じてしまう。

ストリーミング動画ではデータ通信が必要なのでギガ残量に注意。ちなみにVPSの位置測定は最初だけなので、そちらは画像1枚で済むので割と軽量

 ARコンテンツはヱビスビール記念館内のほかにも恵比寿ガーデンプレイス内の屋外、時計広場とシャトー広場の2か所でも提供される。このうち、ヱビスビール記念館内とシャトー広場では、KDDIが事前撮影して生成した特徴点群データをもとに、現実空間と仮想オブジェクトを重ね合わせているが、時計広場だけはSturfeeの仕組みを使っている。

 Sturfeeの仕組みもVPSの一種だが、こちらは事前撮影された画像ではなく、衛星写真から作られた建物の3Dマップデータをもとにしている。ユーザーが空も映るように周囲の建物をパノラマ撮影し、サーバーに送信すると、周囲の建物の輪郭形状と一致する地点が解析され、カメラの座標と向きを算出し、仮想オブジェクト表示に使われる。

ジョエル・ロブション前のシャトー広場ではバーチャル花火を提供

 2022年2月からは、KDDIも販売中のARグラス「Nreal Light」を使ったARコンテンツも限定的に提供される。そちらは専用アプリを使うが、6DoFのXRとなるため、歩き回ることで仮想オブジェクトに近づいたり、別の角度から眺めるといったことがある程度、可能になる。

 使用する「Nreal Light」は会場側が用意するが、数に限りがあり、感染症対策もあるので、曜日限定など、少し限定的な形式での実施になる予定。