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日立、顔認証を利用した小型無人店舗の実証実験~オフィスグリコとコラボ

日立が開発した小型無人店舗のサービスコンセプト「CO-URIBA」

 日立製作所は2月22日、「オフィスグリコ」を運営するグリコチャネルクリエイトの協力のもと、顔認証を利用し手ぶらで決済が行なえる小型無人店舗の実証実験を日立の事業所内で開始すると発表した。

 この実証実験では、日立が開発した小型無人店舗のサービスコンセプト「CO-URIBA(コウリバ)」を利用して実施される。

 CO-URIBAは、日立が持つ顔認証技術や、3D LiDARを利用したセンシング技術などと、イスラエルのShekel Brainweigh社が開発した重量センサー付き商品棚を組み合わせることで小型の無人店舗を実現。サイズは幅が1mほど、奥行きが40cmほどで、4段の棚を設置。棚には区画ごとに重量センサーが設置されており、区画ごとに同一の商品を置いて販売することになる。設置場所は、オフィスなど限られた人のみがアクセスできる場所の空きスペースを想定している。

 利用時には、顔認証カメラが備わる入店用ユニットを利用して顔認証でチェックインし、チェックイン後は好きな商品を手に取ることになる。商品棚上部には、解像度がVGA(640×480ドット)、センシング範囲は60度で、ミリ単位の測距が可能な性能を備える3D LiDARを2基設置。そのうちの1基で人の動きを、もう1基で手の動きを検知する。この2基の3D LiDARの情報と商品棚の区画ごとに設置されている重量センサーの情報を連動させ、人物と手に取った商品の特定を行なう。

 商品を手に取ったあとは、精算作業を行なうことなくその場を離れられる。最終的な精算確認は、スマートフォンなどに届く通知で行なうことになる。決済手段としてはさまざまな手段が利用可能とのことだが、今回の実証実験ではクレジットカード決済が利用される。

 また、商品棚や顔認証用のユニットにはデジタルサイネージも備わっている。そのうえで、来店したユーザーが手に取った商品の情報を表示したり、ユーザーの属性情報を活用したターゲット広告を表示することも可能。広告を表示することで、実際の商品販売だけでなく、広告表示による収益も上げられるようになっている点も大きな特徴となっている。

 CO-URIBAでは、顔認証によるユーザー認証や3D LiDARや商品棚の重量センサーによる人の動きや商品取得などの解析、商品の在庫管理などは、すべてクラウドで行なっている。顔認証については、顔の特徴点の情報のみを暗号化して転送し、暗号化して保存している顔情報と照合することで行なわれる。顔認証に関わる部分は全て暗号化されているため、万が一データが流出したとしても問題がないという。

 また、ユーザーの属性情報として性別や年齢、居住地なども活用でき、購入した商品とユーザーの属性情報を組み合わせることで、属性ごとの細かな購買情報も収集可能。このほか、実際に手に取りながら購入に至らなかったり、時間帯ごとにどういった商品が売れているか、といった細かな購買行動履歴も得られるため、消費行動に合わせた細かな販売戦略を組み上げることが可能とのこと。なお、顔情報と合わせ、ユーザーの属性情報を利用する場合には、個人を特定できないような形で活用することで、個人情報を保護するよう配慮しているそうだ。

 そして、必要な処理を全てクラウドで行なうようにしたことで、実際に設置されるCO-URIBAには処理用の機材が不要となり、大幅なコストダウンを実現しているという。まだ実証実験の段階のため具体的な価格は非公開だが、一般的な無人店舗を実現する場合にかかるコストの1/10以下になるとのことで、非常に安価に導入可能とのことだ。

顔認証でチェックインしたうえで商品を購入することになる
商品購入時には、商品棚から好きな商品を手に取るだけ
CO-URIBA上部に設置されている2基の3D LiDARを利用して、人物の動きと、人物が商品を取る手の動きを検知
3D LiDARはミリ単位での測距が可能で、手の動きを細かく捕捉。こちらと商品棚の重量センサーの情報を組み合わせ、手に取った商品を正確に捕捉する
商品棚の区画ごとに重量センサーが用意され、3D LiDARと重量センサーの情報を組み合わせて手に取った商品を特定する
今回の取材ではチェックアウト用のサイネージも置かれていたが、通常は精算情報はスマートフォンに届くため、チェックアウトすることなくその場を離れられる
3D LiDARの測距精度はミリ単位のため、複数人同時に購入しようとしても問題なく手に取った商品を認識できる
入店用サイネージには、上部に顔認証カメラを設置。サイネージにはチェックインの情報を表示するだけでなく、広告やアンケートなども表示できる
商品棚上部にもデジタルサイネージを装着でき、天気予報などの情報だけでなく広告なども表示できる
利用者の属性に合わせたターゲット広告も表示可能で、広告表示による収益も期待できる
顔認証によるユーザー認証や3D LiDARや商品棚の重量センサーによる人の動きや商品取得などの解析、商品の在庫管理などは、すべてクラウドで行なう。ユーザー属性や時刻なども組み合わせた細かな購買行動履歴の参照も可能

お菓子はもちろん、雑貨や書籍など、さまざまな商材に対応可能

 先に紹介しているように、今回の実証実験はオフィスグリコを運営するグリコチャネルクリエイトの協力により、商材としてグリコのお菓子を採用している。

 これまでオフィスグリコは、オフィスに専用の什器を設置し、1週間に1度ほどのペースで商品の補充と料金の回収などを行なうだけで、利用者がどういった商品を好んで購入しているのか、といった購買情報などを全く収集していなかったという。また、ある商品が早い段階で売り切れても定期的な商品補充タイミングまでは補充されないため、機会損失も多くなっている。

 しかし、CO-URIBAのような仕組みを利用すれば、性別や年齢、時間帯といった属性と合わせて細かな購買情報が入手できるのはもちろん、商品の在庫もリアルタイムで把握できるため、求められている商品を機会損失なく販売できるようになり、収益向上が望める。あわせて、補充も必要なタイミングで必要な場所に必要な商品のみを届ければよくなり、人件費も抑えられるようになる。

 こういったことから、グリコチャネルクリエイトも以前よりオフィスグリコのDX化を検討課題としており、CO-URIBAのような仕組みに大きな興味を抱いて実証実験に協力することになったそうだ。なお、現時点ではあくまでも協力であり、グリコチャネルクリエイトがオフィスグリコの什器としてCO-URIBAを採用するといったことは何も決まっていないとのことだ。

 また日立としても、CO-URIBAとして扱う商材としてお菓子だけを考えているわけではない。食品としては飲料やお弁当はもちろん、雑貨類や化粧品、書籍など、商品棚に置けるものであれば問題なく対応できるとのこと。そのうえで今後は、オフィスグリコだけでなく、さまざまな業種、商材を扱う企業とコラボレーションしたいという。

 なお、CO-URIBAは2022年3月1日~4日の期間、東京ビッグサイトで開催される「リテールテックJAPAN 2022」の日立グループブースに展示されるため、興味のある方はそちらでチェックしてもらいたい。

今回の実証実験ではグリコチャネルクリエイトの協力でグリコのお菓子が商材となっているが、オフィスグリコでCO-URIBAが使われるといったことは何も決まっていない