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クルーに代わって役員が店舗を運営、ドミノ・ピザ 熊本迎町店の1日に密着

2022年9月9日 取材

ドミノ・ピザ 熊本迎町店の運営を任された6人の役員

 ドミノ・ピザ ジャパンは9月9日、ドミノ・ピザ 熊本迎町店で店舗のスタッフに代わって執行役員が店舗を運営する企画を実施した。本誌では、開店準備からの1日を取材した。

 同社では、7月末に実施した「デリバリーLサイズピザを買うとMサイズピザ2枚無料!リベンジ」キャンペーンで、利用者の中で最も評価が高かった店舗の店長とアルバイトを含むクルー全員に特別有給休暇1日を付与するとしていた。

 そして、936店舗中で1位となったのが熊本迎町店。休暇を取得するスタッフに代わり、6名の執行役員を含む本部スタッフ約20名が現地に出向き、ピザを作って配達することになった。

 役員6人の中で最も早く現地入りしたのはCOOのベン・オーボーン氏。同店は11時オープンということで、10時前に店舗を訪れたところ、ほぼ同じタイミングで同氏が出勤。赤いエプロンを身につけると、さっそく地元テレビ局を中心とする報道関係者のインタビューに応じた。

COOのベン・オーボーン氏

 同氏は「もちろんお客さまに最高のサービスを届けるというのが今日の目的になる。提供時間や利用者による評価といったものを常に計測しているが、そういった数値でも高いスコアを出していきたい」と意気込みを語った。その後、同氏は打ち合わせもそこそこに、材料のセッティングなど、率先して開店準備に取り掛かった。

 その様子を「恐れ多い」と言いながら眺めていたのは、同店の店長 近藤風歌さん。本来は有給休暇のはずだが、店舗の運営を丸一日任せる不安もあり、様子を見に来たという。普段はランチタイムで2人、ディナータイムで5人ほどで店舗を運営しているとのことだが、役員を含め20人が集結するとあって、盆と正月が一緒に来たような状況に驚いていた。

熊本迎町店 店長の近藤風歌さん

 思いのほか手際よく準備を進めるオーボーン氏を見て安心した近藤さんは、店舗のクルーたちと一緒にバーベキューに行くと明かし、お店を後にした。たしかに年中無休で毎日お店を開けないといけないとなると、みんなでプライベートで集まるのも難しい。そんなチームワークの良さが全国1位につながったのかもしれない。

 開店の10分前にはそのほかの役員も集結。それぞれユニフォームに着替えると、執行役員 兼 営業部長の柿内宏之氏が中心となって朝礼スタート。同氏が「今日の目標はNPS(Net Promoter Score)50%。日本全国のドミノのチーフから役員はすごいと言われるような1日にしたい」と語ると、役員一同でWe can doのコールで気合いを入れていた。

 そして開店の時刻になると、来店客やデリバリーの注文が徐々に増えていく。ピザ生地の仕込みやトッピング、梱包、接客、配達と、それぞれに持ち場を与えられた役員が全国のクルーの手本となれるように精力的に取り組んでいたのが印象的だった。

 ランチタイムがピークを過ぎたころ、一旦ホテルに戻った筆者は、部屋へのデリバリーを頼んでみた。待つこと10分ほど。ホテルのフロントから電話があり、ピザの到着を伝えてくれた。そして部屋のドアを開けると、オーボーン氏が笑顔でピザボックスを手渡してくれた。ドミノ・ピザの役員からピザを受け取れる機会など、そうは無いだろう。

ホテルの部屋からピザを注文すると、オーボーン氏が配達してくれた

 オーボーン氏が運んでくれたピザを食べた後、再び店舗を訪れると、役員たちが作ったまかないピザを和気あいあいと食べながら休憩する姿があった。

 夕方になると来店客が途切れることなく訪れるようになる。中にはネットやテレビで役員が店舗を運営していることを知り、様子を見に来たという人や、甲子園で地元の高校を応援するように、地元の店舗が全国1位になったと聞いて喜び、商品を買って応援しようと来店した人も。記念撮影を求められた役員たちもノリノリで応じていた。

 途中、柿内氏に今回の取り組みについて聞いてみたところ、「元々デリバリーでやってきたこともあり、来店よりもデリバリーの満足度が高い傾向があり、来店の満足度をいかに高めていくかが課題で、まだまだ伸びしろがある」とコメント。

 その上で、「寒い日にスターバックスに行くと、『今日はコーヒーを熱くしますか?』と聞かれ、そんなことができるのかと驚いた。早さの分野では圧倒的にリードしているが、マニュアルには無いような体験価値を提供できるようにしていきたい」と語り、自ら来店客に12日にキャンペーンをスタートする「エビマヨネーズ」やオプションの新生地「セサミガーリッククラスト」の試食を勧めるなど、積極的に接客していた。

 同社としても初の試みとなる今回の企画だが、参加した役員たちは、立場上、なかなかできない体験を新鮮に感じるとともに、現場を経験することで各々の担当部門における業務改善のアイデアを得たようで、「また実施したい」と述べていた。