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サントリー、マスターオブウイスキーの佐々木氏が「山崎」の構成原酒を解説

サントリー スピリッツカンパニー ウイスキー事業部シニアスペシャリストの佐々木太一氏

 サントリーは11月1日、同社のウイスキー作りに関する記者向けのセミナーを開催。スピリッツカンパニー ウイスキー事業部シニアスペシャリストの佐々木太一氏が「山崎」の特徴などを解説した。

 バレーボール選手として同社に入社し、引退後に営業職に従事するという変わった経歴を持つ佐々木氏だが、2007年に自社認定のウイスキーアンバサダーを取得。その後、2011年にはウイスキー文化研究所認定のマスターオブウイスキーの最初の取得者となった。ちなみに、同資格は2022年10月時点で保有者が全国に11名しかいない難関とされる。

 同氏は、「スコットランド人が谷に潜って密造したのがウイスキーの始まり」だとした上で、そんなスコットランドの環境によく似ていたのが、日本初のモルトウイスキー蒸溜所となった山崎蒸溜所だったと語る。水が良く、さらに桂川、宇治川、木津川の3つの川が合流し、それぞれの水温差により霧が出ることから、ウイスキーづくりに適した場所になっているという。

 山崎蒸溜所の竣工から5年が経過し、サントリー初のウイスキーとなったのが1929年発売の「白札」だが、今では真逆に高く評価されることもあるが、焦げ臭い、煙臭いといった特徴から当時の日本人には受け入れられず、大苦戦することになる。

 その結果、創業者の鳥井信治郎は資金難から1931年に蒸溜所を止めるに至ったが、残っていた原酒を熟成させ、ブレンド技術を磨いて、1937年に「角瓶」を発売し、これがヒット。

 佐々木氏によると、当時の角瓶は「サントリーウイスキー12年もの」として発売されており、そうなると白札と同じ原酒を使っていたことになり、いかに熟成とブレンドの力が優れていたかを示しており、その伝統が現在のサントリーにも受け継がれているとのこと。

 モルトウイスキーは、ビールと同じ大麦麦芽を使用するが、発酵させた後に蒸留と熟成を行なうため、商品化に長い時間を要するのがビールと異なるところ。さまざまな蒸溜所で作った原酒を融通し合う文化があるスコッチウイスキーに対し、数十の蒸溜所が各々で原酒を作り分けているのがジャパニーズウイスキーの特徴だという。

 山崎蒸溜所では、木桶とステンレスの2種類の発酵槽を使用し、蒸留釜(ポットスチル)も形状や方式が異なる8対16基を保有、さらに、材質や大きさが異なる樽を使い分け、1か所で多彩な原酒を作っている。

 実際に商品として販売される「山崎」では、ホワイトオーク樽原酒、スパニッシュオーク樽原酒、ミズナラ樽原酒、ワイン樽原酒がブレンドされており、それぞれの特徴が重なり合って複雑な風味が生み出されている。

(上段左から)ホワイトオーク樽原酒、スパニッシュオーク樽原酒、ミズナラ樽原酒、ワイン樽原酒、山崎。見た目以上に風味が異なる

 筆者も佐々木氏のレクチャーを受けながら4つの異なる樽原酒を飲み比べてみたが、大きく異なる風味となっており、それぞれの良さが完成品の「山崎」に受け継がれつつ、ブレンドされると不思議と4つの原酒には無かったような風味も感じられる面白さを体感できた。

 その後、同氏は「山崎」と「白州」にあう食事の傾向を示した。山崎には醤油や味噌などの濃い味付けのもの、白州には塩気やハーブ、燻製などの香りがあるものがオススメとのこと。

山崎向けの「チーズの味噌漬け」(左)と白州向けの「鰹のバジルソース」(右)

 また、ビンテージではない山崎と白州は、ハイボールにしたときにおいしくなるように作られていると語る同氏は、おいしいハイボールの作り方もレクチャー。

 おいしく味わうには冷えたグラスが必要となるが、冷蔵庫に入れて冷やすと庫内の食品の匂いがグラスに移り、ウイスキー本来の香りに影響してしまうため、氷を入れてかき回してグラスを冷やすことが推奨される。その際に溶け出た水はグラスから捨て、氷を足し、そこにウイスキーを注いでかき混ぜ、ウイスキーを冷やす。再び氷を足し、冷えた炭酸水を注ぎ、炭酸が抜けないように1回だけ縦に混ぜる。

 佐々木氏によれば、きちんと洗浄されているグラスを使い、この形で作ると、ウイスキーのハイボールというのは泡が立たないため、ちゃんとグラスを洗浄するのが大事とのことだ。

おいしいハイボールの作り方をレクチャーする佐々木氏