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NTT東日本とグリラス、ICT/IoTを活用して食用コオロギを飼育する実証実験

2023年1月19日 発表

実証実験の施設内

 NTT東日本とグリラスは、食用コオロギの飼育にICT/IoTを活用する実証実験を開始すると発表した。

 グリラスは、食用コオロギ事業を手掛ける徳島大学発のベンチャー企業。人口増加と経済発展に伴って需要が拡大する一方でタンパク質の供給が追いつかなくなるタンパク質危機や、世界で食料不足が発生しているなかで大量の食品が廃棄される食品ロスといった社会課題を食用コオロギを軸に解決することを目指している。

 同社では、社名の由来ともなっているフタホシコオロギ(Gryllus bimaculatus)を飼育し、パウダー状に加工するなどして食品原料にして供給する事業を展開している。

 グリラス 生産本部長の市橋寛久氏によれば、食用コオロギは、牛・豚・鶏といった既存の家畜と比べ、生育に必要な資源(水・餌)や温室効果ガスの排出量が圧倒的に少ないため環境負荷が低いほか、他の昆虫よりも雑食性が高いため、食品ロスになってしまうような食料を飼料として活用できるメリットもあるという。

 さまざまなメリットがある一方で、市橋氏は、食用コオロギの大量養殖に最適化された飼育方法が確立できていない点が課題だと語る。飼育にあたっては人手がかかる上、室温を30度前後で維持する必要があるため光熱費がかかり、どうしても最終的な供給価格が割高になってしまう。

 今回の実証実験では、調布にあるNTT e-City Labo内に養殖ブースを設置し、各種センサーを活用し、飼育に最適な環境を維持するためのデータ収集を行なっていく。

 NTT東日本 経営企画部 営業戦略推進室 担当課長の篠原弘明氏によれば、まずは飼育室内の温度、湿度、CO2濃度をモニタリングし、最も効率がよくなる環境を確認。あわせてAIによる画像認識で異常を検知したり、食べた餌の量を測定したりすることで、飼育にかかるコストや工数の削減に繋げたいという。

 グラリスでは、年間5トンほどのコオロギパウダーを生産しているが、コオロギを乾燥させてパウダー状にするため、実際にはその5倍ほどのコオロギを飼育している。今回の実証実験はデータ収集を主な目的にしていることもあり、飼育するコオロギの数は5~10万匹、重さにして月に200kgほどという規模感となる。

飼育ケース内の様子
グラリスパウダー