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くら寿司「くらの逸品シリーズ」を本格スタート。大手回転寿司とご当地回転寿司強みを活かした“二刀流”目指す

新鮮な地魚をくら寿司で食べる「地魚地食」

2023年4月12日 発表

2023年4月15日 開始

くら寿司株式会社 取締役副社長 田中信氏(右)、商品本部購買部 天然魚プロジェクトマネージャー 大濱喬王氏(左)

 くら寿司は、新メニューシリーズ「くらの逸品シリーズ」の記者発表会を4月12日に開き、地元の新鮮な「地魚」をくら寿司で食べるという大手回転寿司チェーン初の取り組みについて説明した。

各地域で毎週異なる天然魚が味わえる「くらの逸品シリーズ」

「くらの逸品シリーズ」とは、各地域の漁港で水揚げされた新鮮な天然魚を、地域の各店舗で、週替わりで数量限定販売するもの。その週に何がとれるかによって提供する天然魚が変わるため、毎週異なる旬の地魚を楽しめるのがメリットだ。

 全国を22のブロックに分け、まずは4月15日から、8グループの18都道府県、約360店舗でスタート。8月には全グループの全都道府県、530店舗以上での販売を開始する予定だ。

 4月15日から提供するのは、各地域、以下の商品を予定。各商品240円で提供するが、季節ごとに取り扱い魚種が異なり、各地域の水揚げ状況も異なるため、今後は価格が変動する可能性があるとする。販売メニューは当面、各グループで週1回1魚種の予定で、各店舗のくら寿司LINE公式アカウントにて告知。なお、数量限定販売のため、なくなり次第終了となる。

4月15日~21日に提供予定の第1弾フェア商品

北海道: 「天然 大切り生ほっき貝(1貫)」(苫小牧漁協)
東北: 「天然 平目(1貫)」(石巻・三陸沖)
関東: 「天然 釣り金目鯛(1貫)」(三浦半島有名漁港)
北陸: 「天然 生ホッコクアカエビ(2貫)」(三国漁港)
関西: 「天然 炙り太刀魚(1貫)」(熊野灘)
中国・四国: 「天然 うず華 はまち(2貫)」(鳴門海峡有名漁協)
瀬戸内: 「天然 活〆すずき(2貫)」(瀬戸内海)
九州: 「天然 あおりいか(1貫)」(玄界灘)
※価格はいずれも240円

第1弾フェア商品のラインアップと、今後販売を予定している沖縄の「天然 なんようぶだい(1貫)」(ちゅら海)
第1弾フェア商品と今後、販売予定の沖縄の天然 なんようぶだいを日本地図にマッピング
北海道の「天然 大切り生ほっき貝」
東北の「天然 平目」
関東の「天然 釣り金目鯛」
北陸の「天然 生ホッコクアカエビ」
関西の「天然 炙り太刀魚」
中国・四国の「天然 うず華 はまち」
瀬戸内の「天然 活〆すずき」
九州の「天然 あおりいか」
沖縄の「天然 なんようぶだい」

ほかの大手回転寿司チェーンとの差別化に向けて国産天然魚に着目

 現在、飲食店はさまざまな課題に直面している。まず原材料費や光熱費、輸送費の高騰だ。2年前に比べてマグロが約1.6倍、サーモンは約2倍へと価格が高騰するなか、くら寿司では2022年5月に創業以来初の価格改定を実施した。そんな価格高騰を受けて人々の節約志向が高まり、今年2月のリクルートの調査では、83.2%の人が外食の回数を減らすと回答している。

 これを受けて田中副社長は、「回転寿司チェーンだけでなく、ほかの飲食業との競争についてもより厳しくなる状況です。外食をする際に、くら寿司を選んでいただける強みをさらに強化していくことが重要だと感じています」と語る。

記者発表会に登壇した取締役副社長の田中信氏

 くら寿司には顧客拡大に向けた4つの強みがある。例えば抗菌寿司カバーや回転レーンの迷惑行為に対応する新AIカメラシステムの導入。非接触での予約、注文、セルフ会計ができる「スマートくら寿司」。食べ終わった皿でガチャに挑戦できる「びっくらポン」など。これらの強みは顧客にくら寿司を選んでもらえる要素になっているとするも、メニューにおいてはほかの大手回転寿司チェーンと大きな差別化ができていないという課題を抱える。

くら寿司の4つの強み

 そこで目を向けたのが国産天然魚だ。大手回転寿司では全国の店舗で同じメニューを提供することから、大量の魚の確保が必要。魚種や形が不揃いな天然魚は加工が難しいなど、国産天然魚を安定供給するためにはさまざまな課題がある。そのため国産天然魚の常時販売は大手回転寿司では立ち入ることが難しく、ご当地回転寿司の得意領域とされてきた。

「他社にはできない特徴のあるメニューが提供できれば、くら寿司の大きなアドバンテージになります。横並び脱却のために、付加価値の高い希少で美味しい国産天然魚のメニューを継続的に提供し、他社との差別化を図ります。大手回転寿司とご当地回転寿司の両方の強みを併せもつ、いわば“二刀流回転寿司”としての商品提供を実現することで、新規のお客さまの獲得が期待できると考えます」と、田中副社長は意気込む。

「くらの逸品シリーズ」によって二刀流回転寿司チェーンを目指す

国産天然魚の継続的な販売を実現する「天然魚プロジェクト」

 国産天然魚の提供において、実はくら寿司では、2011年に「ご当地フェア」と銘打って、五島列島の魚を全国で販売した経緯がある。しかし当時は地魚の安定調達や、販売メニューをタイムリーに告知する仕組みの構築が十分ではなかったため、一度断念せざるを得なかったのだそう。今回の「くらの逸品シリーズ」は、そのリベンジともいえる。

 今回、国産天然魚の安定調達を実現できたのは、2010年から推進する「天然魚プロジェクト」の功績が大きい。このプロジェクトは、新鮮な国産天然魚をより安く、より美味しい寿司ネタとして提供するとともに、漁師の収入安定化を図り、共存共栄を目指すという取り組み。現在116の漁港や漁協と直接取引し、国産天然魚用の自社の加工施設「貝塚センター」で加工する。水産子会社の「KURAおさかなファーム」では、オーガニックフィッシュの養殖や漁師の働き方改革を実現するスマート養殖への取り組みなども行なう。

 この成果で、2016年から実施している国産天然魚シリーズはほかにはないネタが食べられると好評。一方で全国販売できるほど確保できない地魚をどのように販売したらいいのかという課題もあった。そこで全国の約530店舗を22グループに分割し、各地域の漁場で水揚げされた天然魚を、新たに連携した全国13の水産加工会社で加工し、各店舗に配送する仕組みを構築。地域によって異なる地魚を使った「くらの逸品シリーズ」の実現は、全国一律販売が主流の大手回転寿司チェーンとしては初の試みになる。

貝塚センターだけだった国産天然魚用の加工施設を全国13か所に拡大

「それぞれの地域でとれた地魚を地域のお客さまに提供する仕組みの拡大は、地域の漁業関係者の支援にもつながります。このような国産天然魚を軸にしたエコシステムは飲食店ではもちろん、一次産業を含む分野では初めての取り組み。今回こうした仕組みを実現できたのは、天然漁プロジェクトをとおして地道に育んできた、地方の漁業者様の皆さまとの相互関係、信頼関係との成果だと考えています」と、田中副社長は「くらの逸品シリーズ」実現の経緯を語る。

国産天然魚エコシステムの仕組み

「くらの逸品シリーズ」は次の4つのメリットもあり、「回転寿司が抱えるさまざまな課題解決に繋がる革命的チャレンジ」だと田中副社長。最後に、「地産地消」から「地魚地食」へという言葉を掲げた。

「くらの逸品シリーズ」の4つのメリット

1. 原材料の調達と商品供給を安定化
価格が高騰を続けているマグロやサーモンといった人気魚種への依存を減らし、日本近海に豊富に存在している国産天然魚商品を増やし、原材料の調達と商品供給を安定化
2. 他社との差別化と顧客満足度の向上
ほかの回転寿司店では食べられない地魚を、リーズナブルな価格で週替わりで提供することによる他社との差別化と顧客満足度の向上
3. 新規顧客獲得、来店頻度の増加
これまで地元のご当地回転寿司に行なっていたお客さまの来店促進と、毎週違った地魚を提供することによる来店頻度アップ
4. 「天然魚プロジェクト」の加速
少ないロットでも漁師がくら寿司に納入できることで収入安定につながるなど、「天然魚プロジェクト」をさらに加速させ、漁業関係者との共存共栄により日本の水産業に貢献できる

「地魚地食」を掲げる田中副社長

最終的には全国47都道府県で毎週異なる地魚を提供できる体制を構築

記者発表会に登壇した大濱氏

 次に登壇した商品本部購買部 天然魚プロジェクトマネージャーの大濱喬王氏は、「天然魚エコシステム」と「くらの逸品」の詳細について説明した。まず全国の漁場と加工場、店舗所在地については下の表のとおり。天然魚エコシステムの構築で、今まで自社の貝塚センター1か所に集める必要があったものを、全国14の加工場でそれぞれ加工ができるため、物流コストの大幅ダウンにもつながるという。

「くらの逸品」メニュー流通網

 また、水揚げから販売までの流れについては、木曜に水揚げし、金曜に加工。土曜の早朝に各店舗に納品し、週末に販売するというスケジュールになる。当初は各グループ、3か月ごとに、旬の地魚を中心に5魚種を選定。当面は各グループで週1回、1魚種の販売となるが、今後は毎週の提供回数や1回あたりの魚種数を拡大する予定だ。各グループで販売する魚種についても、その一例を紹介した。

「くらの逸品」で販売する魚種の一例

「くら寿司で取り扱う国産魚の数を現在の30から、今年中には約130の魚種へと拡大する見込みです。最終的には全国を47ブロックに分割し、都道府県それぞれで毎週違う地域の地魚を数種類、地域の皆さまに楽しんでいただける体制を構築。日本各地の美味しい地魚の魅力をより多くのお客さまに伝えていきたい」と、大濱氏は語った。

 記者発表会で新メニューも試食した。なかでも一番だと感じたのが「天然 釣り金目鯛」。炙りが香ばしく、ふわっと上品な味わいが口に広がる。金目鯛は煮付けがポピュラーなので、寿司として味わえたのが新鮮だった。「天然 大切り生ほっき貝」もしゃきしゃきの食感と噛むほどに染み出る旨みに悶絶。「天然 あおりいか」も肉厚のあるネタがシコシコして、いつまでも味わっていられた。

(左上から右に)天然 大切り生ほっき貝、天然 平目、天然 釣り金目鯛、天然 生ホッコクアカエビ、(左下から右に)天然 炙り太刀魚、天然 うず華 はまち、天然 活〆すずき、天然 あおりいか、天然 なんようぶだい

 本来は各地域でしか味わえないものを、今回の試食では全国各地のネタを味わうことができたのは実にラッキーだった。今後は全国各地へ出かけた際には、くら寿司巡りが定番になるのかもしれない。