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東京農業大学、ケニアの農工大・養殖事業者とザリガニの食用資源化を研究

2023年12月8日 取材

塩茹でしたザリガニ

 東京農業大学は12月8日、ザリガニ養殖研究に関するミニシンポジウムを開催し、ケニア共和国での取り組みの拡大を発表した。

 同研究の代表を務める教職・学術情報課程 教授の武田晃治氏によれば、食用ザリガニの代表格とも言えるアメリカザリガニは日本においては条件付き特定外来生物に指定されており、適切な管理下で逃げ出さないように飼育するなど、厳しい規制の対象となっている一方で、海外では中国や米国を中心に食材として活用されている。

 元々は教材活用するためにスタートした武田氏のアメリカザリガニの研究だが、その過程で高い抗酸化力を持つアスタキサンチンが殻に含まれることに加え、高タンパクとされる筋肉中にそのほかにも有用な成分が多数含まれることが分かってきた。

 人口増加や昨今の気候変動の結果として食糧問題が発生することが懸念されるなか、同大ではケニアのジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT)とアメリカザリガニの養殖事業を手掛けるKisumeo Organicsと共同で食用資源化についての基礎研究やケニアでの社会実装(養殖・食品加工)を行なっていくことにした。

(左から)久慈浩介氏、柳原尚之氏、武田晃治氏、Ndungu Robin氏

 Kisumeo Organics 社長のNdungu Robin氏によれば、アメリカザリガニには高タンパクで成長が早く、再生産比率が高いといった優れた点がいくつもあるという。同社では、フランチャイズ方式で養殖事業を展開しているが、こうした事業はケニアにおける収入源としても有望だと語る。

 武田氏は、「長期的、持続的な資源としての活用につなげるには、資源の管理が重要。今後は養殖の研究が必要で、日本のみならずケニアにも展開して有用な資源活用につなげたい」としている。

 今回のシンポジウムでは、食材としてのアメリカザリガニの可能性を伝えるため、柳原料理教室を主宰する近茶流宗家の柳原尚之氏が考案した「ザリガニ炊き込みご飯」「ザリガニのかき揚げ」「ザリガニの胡麻和え」が弁当形式で出席者に振る舞われた。

柳原尚之氏が考案したザリガニづくしの弁当

 柳原氏によると、ザリガニには伊勢海老や車海老にも負けない旨みが感じられる一方、身が少なく、剥くのが大変という課題もあるという。

 また、武田氏が同大で客員教授を務める南部美人 代表取締役社長 五代目蔵元の久慈浩介氏に依頼し、ザリガニの旨みを引き立てる南部美人が仕込んだ日本酒「純米吟醸 プリンセスミチコ」「特別純米酒」「あわさけスパークリング」や「糖類無添加梅酒」とのマリアージュを演出。

 このほか、地域創成人材育成学舎がZallysブランドで展開を予定している「ザリガニビスクスープ」「塩茹でザリガニ」「ザリガニ煎餅」、Robin氏が用意したケニア風のザリガニ料理も振る舞われた。

 いずれのメニューも、泥抜きされ、しっかりと下処理されていることから、臭みはほとんどない。シンプルな塩茹でのザリガニを食べる際には、殻剥きにちょっとしたコツが必要で、体長10cmほどのザリガニから小指の先ほどの身しかとれないことに愕然とするが、食感のよさは抜群だ。

食べさせる餌によって色が異なることから学校教材としての一面も