ニュース

東京農業大学とPeach Aviation、モクズガニの商品化で地域の課題解決を目指す

2023年11月30日 取材

塩茹でしたモクズガニ

 東京農業大学は11月30日、Peach Aviationと共同で商品化に取り組んでいる「北海道モクズガニ」の試食会を世田谷キャンパスで開催した。

 モクズガニは、中国で高級食材として知られる上海ガニ(チュウゴクモクズガニ)の近縁種だが、近年、北海道の風蓮湖では大量発生したことで食害の原因として駆除の対象になっていた。

 同大教授の上田智久氏によれば、廃棄されるモクズガニの有効活用もあるが、第一次産業の課題解決が念頭にあったという。オホーツクエリアでは、大規模農業が行なわれているが、南瓜やブロッコリー、長芋など、規格外として廃棄される野菜も多く、これをモクズガニの餌にすることで、マイナスとマイナスを掛け合わせてプラスにできないかと考え、学生が主体となって商品化に取り組むことになった。

冷蔵で生きたまま輸送されてきた養殖のモクズガニ

 同大では今回、北海道でモクズガニの養殖に取り組み、試食会とあわせて官能評価を実施。試食会で近隣住民や学生からの感想を元に商品化に向けた課題を確認しつつ、官能評価において餌が味に与える影響を確認する。

モクズガニの食べ方

 上田氏は、「南瓜を与えた場合はβカロテンが多いので甘みが増すとか、ブロッコリーや長芋を与えた場合はタンパク質が多く、それが身に添加されるとか、与える餌でおいしくなれば、付加価値が高くなり、廃棄野菜も生かされる」と語る一方で、あくまでも今回の商品開発は、目的ではなく、地域の課題解決のための手段だと強調する。

 今回のプロジェクトに参画するPeach Aviationは、LCCに位置づけられる航空会社だが、事業戦略企画室の越出あい香氏は、「商品化によって貨物輸送で儲けるということではなく、地域を知ってもらい、地域が活性化すると、それによって自然と人の動きが活発化する。そのお手伝いができたら」と語る。

 上田氏は、今後の見通しについて、学生次第としながらも、3年後の商品化を目指して活動を継続していきたいとしている。

東京農業大学 教授の上田智久氏(右)とPeach Aviation 事業戦略企画室の越出あい香氏(左)