ニュース

サントリー登美の丘ワイナリーで、4産地の甲州をブレンドした新ワインの醸造現場を見てきた。10月からは畑を歩くツアーも

サントリー登美の丘ワイナリーのぶどう畑で実る甲州

 サントリーは日本ワインブランド「SUNTORY FROM FARM」から、「THE 甲州 テロワールアンサンブル 2025」や、新ヴィンテージの「登美の丘 赤 2023」「岩垂原(いわだれはら) メルロ 2022」などを数量限定で発売した。それに合わせ、山梨県の「サントリー登美の丘ワイナリー」と長野県の「サントリー信州塩尻ワイナリー」でメディア向けに見学会を開いた。

 登美の丘ワイナリーは山梨県甲斐市にあり、1909年に「登美農園」として開園し、1936年にサントリーが経営を継承した。南に富士山を仰ぎ、眼下に甲府盆地を望む約150ヘクタールの丘に自家ぶどう園が広がり、ぶどうの栽培から醸造、瓶詰までを一貫して行なっている。日本ワイナリーアワードでは9年連続で5つ星を獲得している。

登美の丘ワイナリーのぶどう畑からは甲府盆地が一望できる。10月からは、収穫期の畑を歩いて新ヴィンテージを味わえるツアーも開催する

サントリー登美の丘ワイナリー

所在地: 山梨県甲斐市大垈(おおぬた)2786
アクセス: 金・土・日曜・祝日限定でJR甲府駅南口「貸切バス専用のりば」から無料のシャトルバスを運行(不定期運行)
TEL: 0551-28-7311(受付は9時30分~16時30分)
営業時間: 10時~17時(最終入場は16時30分)
休業日: 水曜、年末年始、その他
Webサイト: サントリー登美の丘ワイナリー

登美の丘ワイナリーの看板(画像提供:サントリー株式会社)

 その登美の丘ワイナリーで2025年9月に稼働したのが、約7億円を投じた「FROM FARM醸造棟」。区画・畑ごとに多彩な原酒をつくり分けられる設備を備え、仕込み用のタンクは26台(2026年9月時点)、製造数量は年間1000ケースとなっている。

 醸造の基本的な考え方は、小区画ごとに個別に仕込むことと、ぶどうを優しくていねいに扱う「ジェントルハンドリング」の2つ。収穫したぶどうは1階で、着色不良や病害・腐敗のある房を取り除く房選果、茎を取り除く除梗(じょこう)、一粒一粒の品質を確かめる粒選果を経てタンクへ送られる。

ぶどうの選果や除梗を行なう醸造棟1階の作業スペース

 タンクへぶどうを移す工程には「キュボン」を用いたシステムを導入。ポンプを使わずに運ぶことで、果粒へのダメージを抑えている。白ワイン用には、それまでのバルーン型に代えてコカール社の圧搾機「PAI」を導入した。中の板が水平に動いて均一に優しく搾り、板の動きでぶどうが自然にほぐれるため酸化が起きにくく、搾った果汁もすぐに冷却できる。

ぶどうをていねいに扱う「ジェントルハンドリング」のための設備が並ぶ
「キュボン」を用いた移送システムで、ぶどうを過剰につぶさずにタンクへ投入する
白ワイン用の圧搾機「PAI」(「サントリー信州塩尻ワイナリー」で撮影したもの)

 赤ワイン用の垂直式圧搾機は圧力を細かくコントロールでき、平らな面で優しく均一に搾れる。種子がつぶれて過度な渋みや苦みが出るのも抑えられるという。

赤ワイン用の垂直式圧搾機

 仕込みに使うのは小容量のサーマルタンクで、2~3階を貫く固定式と、場内をエレベーターで移動できる800L・900L・1200Lの移動式の両方を配置している。タンクごとに加温・冷却を制御でき、区画・畑ごとに小ロットで仕込んで個性の異なる原酒をつくり分けたうえで、畑単位のワインや、各原酒の特徴を活かしたアッサンブラージュ(ブレンド)のワインに仕上げていく。

区画・畑ごとの小ロット仕込みに使う小容量のサーマルタンク

 醸造棟は3階建てで、原料や資材の出し入れが発生する受け入れや除梗、圧搾、瓶詰、樽詰などの工程を1階に集約。1階は生産者だけが入るエリアとし、見学者の動線は2~3階に設けている。

FROM FARM醸造棟は、フロアごとに作業や機能を分けている

 ぶどう畑では2015年から、日本固有のぶどう品種である「甲州」の山梨県の優良選抜系統3種(よい香りがする「KW01」、たくさん獲れる「KW02」、糖度が高くなる「KW05」)を、畑・区画ごとに植え分けている。ぶどうの個性を活かし、多様な味わいのワインをつくるためだという。

ぶどう畑は細かい区画に分けて管理しており、区画ごとの個性を活かしたワイン原酒を生み出している
登美の丘ワイナリーで一番古い甲州の古木

 登美の丘ワイナリーは、収穫期のぶどう畑を歩く期間限定ツアー「秋のハーベストワイナリーウォーク ~秋風に包まれるぶどう畑めぐり~」を10月2日から開催する。ワイナリー内の「甲州ぶどう畑」と、同ワイナリーで栽培しているさまざまな品種を集めた「見学用ぶどう畑」を歩いたあと、発売したばかりの新ヴィンテージ「登美の丘 甲州 2024」「登美の丘 赤 2023」をテイスティングする。

 テイスティングはぶどう畑の中で行なう(天候により屋内に変更する場合あり)。2種とも同ワイナリー産ぶどうを100%使ったワインなので、ぶどうが育つ畑でそのワインを味わえる。

 醸造棟や熟成庫は、休業日を除く毎日開催している「FROM FARM 登美の丘ワイナリーツアー」や、眺望台にも立ち寄る「FROM FARM 登美の丘ワイナリーツアー〈プレミアム〉」(金・土・日曜・祝日、約120分、8000円)で見学できる。

秋のハーベストワイナリーウォーク(有料)

開催日: 2026年10月2日~11月29日の金・土・日曜・祝日(11月7日・8日を除く)
時間: 10時30分、15時30分(各回約40分)
料金: 2000円(20歳未満は無料・要予約)
見学場所: 甲州ぶどう畑、見学用ぶどう畑
テイスティング: 「登美の丘 甲州 2024(45mL)」「登美の丘 赤 2023(45mL)」
※11月開催分の予約は10月1日9時30分から。ドライバーには「信州産メルロぶどうジュース」を用意

FROM FARM 登美の丘ワイナリーツアー(有料)

開催日: 休業日を除く毎日
料金: 3000円(約80分・要予約)
見学場所: 甲州のぶどう畑、FROM FARM醸造棟、熟成庫
テイスティング: 「登美の丘 赤 時のかさね(45mL)」「登美の丘 甲州 2023(45mL)」
※20歳未満は参加不可。テイスティングのワインは変更になる可能性あり

SUNTORY FROM FARM THE 甲州 テロワールアンサンブル 2025

発売日: 2026年9月8日
販売地域: 全国(数量限定)
容量: 750mL瓶
色/タイプ: 白/辛口
アルコール度数: 12%
品種: 甲州 100%
ぶどう産地: 長野県立科町 42.0%、山梨県南アルプス市 33.7%、山梨県甲斐市 13.1%、山梨県中央市 11.3%
醸造地: 登美の丘ワイナリー
製造数量: 約2万4000本(約2000ケース)

 見学会では、新商品「THE 甲州 テロワールアンサンブル 2025」も紹介された。長野県と山梨県にある4つの自社管理畑の甲州原酒をアッサンブラージュし、登美の丘ワイナリーで醸造した白ワインだ。

SUNTORY FROM FARM THE 甲州 テロワールアンサンブル 2025

 サントリーは登美の丘での長い経験や培ってきた技術を活かし、約10年前から冷涼地を含む複数の産地で甲州の栽培に取り組んできた。「THE 甲州」は、それぞれの畑が持つ個性を重ね合わせることで、1つの産地だけでは難しい「はつらつさと凝縮感の両立」を実現したという。

 使っているのは、長野県の「立科圃場」と、山梨県の「南アルプス圃場」「双葉圃場」「豊富圃場」の甲州。立科圃場は、甲州の新たな魅力を引き出すために冷涼地を選んで畑づくりから始めた標高約780メートルの畑で、垣根栽培による細かな管理でより高い熟度を目指している。南アルプス圃場は約10ヘクタールあり、甲州の一枚畑としては日本最大規模になるという。

 同社は産地ごとの香りの違いとして、豊富はふくよかさ、南アルプスは果実感と清らかなアロマ、双葉は華やかな香り、立科はのびやかな酸を挙げており、これらを組み合わせることで、単一産地では生み出せない多層的な香りに仕上げている。

 サントリーの甲州ワインのラインアップには、登美の丘ワイナリーの自園産ぶどうでつくる「登美 甲州」「登美の丘 甲州」や、購入ぶどうが中心の「甲州 日本の白」などがある。「THE 甲州」はそこに加わる自社管理畑のぶどうを使ったワインで、新たなつくりや味わいで甲州の魅力と体験を広げる役割を担う。製造数量は2035年に約9000ケースまで増やす計画だ。

 同社によると、白身魚の刺身など素材の味わいを活かす料理と相性がよく、しっかりした果実味が素材の味を引き立て、心地よい酸味が柑橘を搾ったような風味を与えて味わいを引き締めるという。

 また、登美の丘ワイナリー産ぶどうを100%使った新ヴィンテージとして、「登美の丘 赤 2023」「登美の丘 甲州 2024」「登美の丘 ロゼ 2025」の3種も発売した。赤はボリューム感がありながらも調和の取れた味わいのミディアムボディ、甲州は和柑橘を思わせる爽やかな香りにふくらみのある果実味となめらかな酸味が調和する辛口、ロゼはいちごやラズベリーを思わせる香りと自然な甘さを伴うやわらかな果実味が特徴の辛口となる。このうち赤と甲州は、「秋のハーベストワイナリーウォーク」でテイスティングできる。

 都内で開かれた「THE 甲州 テロワールアンサンブル」の発表会と試飲の様子は、こちらの記事で紹介している。

テイスティングしたワイン

 見学会で味わったのは、「THE 甲州 テロワールアンサンブル 2025」のほか、「登美 甲州 2024」、新商品の赤ワイン「結の香(ゆいのか) テロワールアンサンブル」、信州塩尻ワイナリーの「岩垂原 メルロ 2022」の計4種。

「登美 甲州 2024」は、登美の丘ワイナリーの最高峰「登美」の甲州。自園産の甲州を100%使い、この2024年ヴィンテージから樽に頼らないスタイルを確立した。「登美 甲州」は2022年と2024年のヴィンテージで、デキャンター・ワールド・ワイン・アワード、インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション、インターナショナル・ワイン・チャレンジの3つのコンクールで金賞以上を獲得した日本唯一の白ワインだという。

「結の香 テロワールアンサンブル」は、登美の丘ワイナリーと信州塩尻ワイナリーの協働で生まれた赤ワイン。塩尻のメルロ原酒と、主にウイスキーの熟成に用いる日本産のミズナラ樽で熟成させたマスカット・ベーリーA原酒、登美の丘のプティ・ヴェルド原酒などをアッサンブラージュしており、味噌や醤油など日本の発酵調味料を使った和食とも相性がよいという。

「岩垂原 メルロ 2022」は、長野県塩尻市の岩垂原地区で育ったメルロを100%使った赤ワイン。岩垂原は「岩垂」の名の通り岩がごろごろとした、水はけのよい土地だ。長く原料となってきたのは同地区の山本園のぶどうで、最も古い木は1980年に植えられた。サントリーも2016年から垣根仕立ての自社管理畑を広げ、現在は合計3ヘクタールになっている。

「THE 甲州 テロワールアンサンブル 2025」は、酸味などの甲州らしさはありつつ、飲み応えや落ち着きも感じられる。料理に寄り添うタイプのワインに仕上がっている印象。「登美 甲州 2024」は、甲州で高い糖度を実現した努力に感謝。果実感と繊細さがていねいに描かれている。

「結の香 テロワールアンサンブル」は、ワインの主要品種であるメルローに、日本の赤ワイン品種の代表選手であるマスカット・ベーリーAなどが合わさっているため、焼鳥のタレとも合いそう。「岩垂原 メルロ 2022」は、ベリー感などの果実感がギュッとした感じや土の感じが伝わってきて、しっかりとした飲み応えもある。

テイスティングした「THE 甲州 テロワールアンサンブル 2025」「登美 甲州 2024」「結の香 テロワールアンサンブル」「岩垂原 メルロ 2022」
SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2024

SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2024

容量: 750mL瓶
色/タイプ: 白/辛口
アルコール度数: 12%
品種: 甲州 100%(登美の丘ワイナリー自園産)
コメント: ライラックや瑞々しい白桃、王林りんごを思わせる甘い香りに、和柑橘のアクセント。ふくらみのある果実味と伸びやかな酸味、きめ細やかな質感が溶け合い、果実の凝縮感を伴う緻密な味わいが余韻まで続く

SUNTORY FROM FARM 結の香 テロワールアンサンブル

SUNTORY FROM FARM 結の香 テロワールアンサンブル

発売日: 2026年9月8日
容量: 750mL瓶
色/タイプ: 赤/ミディアムボディ
アルコール度数: 12%
品種: メルロ 59.9%、マスカット・ベーリーA 32.6%、プティ・ヴェルド 6.4%、カベルネ・ソーヴィニヨン 1.1%
コメント: ミズナラ樽由来のココナッツや白檀を思わせる香ばしい香りに、キイチゴやカシスを思わせる果実香。なめらかさと複雑さ、しなやかな余韻

SUNTORY FROM FARM 岩垂原 メルロ 2022

SUNTORY FROM FARM 岩垂原 メルロ 2022

発売日: 2026年9月8日
容量: 750mL瓶
色/タイプ: 赤/フルボディ
アルコール度数: 12.5%
品種: メルロ 100%(長野県塩尻市岩垂原地区産)
コメント: 熟したチェリーや、シダ植物、湿り気を帯びた土のような香り。果実味と、まろやかな酸味、骨格のあるタンニンのバランスの取れた味わい

サントリー信州塩尻ワイナリー

 見学会では、長野県塩尻市の「サントリー信州塩尻ワイナリー」も訪れた。9月1日に「サントリー塩尻ワイナリー」から名称を変更したワイナリーで、1936年の開設以来90年にわたり、地元のぶどう農家と手を携えながらワインをつくってきた。

 名称変更には、長野県各地の多様なテロワールを映し出す高品質なワインづくりを通じて、銘醸地・信州の発展に貢献していきたいという思いを込めた。あわせて今回の新ヴィンテージから「岩垂原」「塩尻」を冠した商品のパッケージを刷新し、「岩垂原 メルロ」には黒紫色の和紙を採用した。なお、信州塩尻ワイナリーは通常、一般見学は行なっていない。

9月1日に名称を変更したサントリー信州塩尻ワイナリー
信州塩尻ワイナリーの「第一ケラー」
タンクや樽が並ぶ信州塩尻ワイナリーの醸造・貯蔵エリア