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サントリー登美の丘ワイナリー、リニューアルした見学ツアーに参加してみた。ぶどう畑を歩いたあとは甲州の試飲が待っている

2025年9月19日 新見学ツアー開始
「サントリー登美の丘ワイナリー」はぶどうを育てるところから、醸造、瓶詰め、熟成、販売まで一貫したワインづくりをしている

 サントリーは「サントリー登美の丘ワイナリー」の見学ツアーをリニューアルして9月19日から開始するのにあたり、内覧会を開いた。

 登美の丘ワイナリーは山梨県甲斐市大垈(おおぬた)にあり、100年以上の歴史を重ねるワイナリー。登美村の丘陵地を開墾して始まったことにちなみ、2001年4月に施設名を「サントリー山梨ワイナリー」から「サントリー登美の丘ワイナリー」に変更している。

 富士山と甲府盆地を望む約150ヘクタールの広大な土地にぶどう畑や醸造施設、熟成庫のほか、富士見テラスやショップなどを展開。畑を約50区画に分けて細やかに管理してぶどうを育てるところから、醸造、瓶詰め、熟成、販売まで、一貫したワインづくりを行なっている。

 サントリーでは世界に肩を並べるジャパニーズワイン・日本ワインを実現するための取り組みを進めており、登美の丘ワイナリーはその象徴的な施設となっている。近年では「SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2022」がデキャンター・ワールド・ワイン・アワード(Decanter World Wine Awards)2024でBest in Showを受賞するなど、高い品質やオリジナリティが評価されている。

富士山と甲府盆地を望む約150ヘクタールの広大なエリアにある登美の丘ワイナリー。傾斜地にあるため見晴らしがよく、この景色だけでも一見の価値があるように思える

サントリー登美の丘ワイナリー

所在地: 山梨県甲斐市大垈(おおぬた)2786
アクセス: 金・土・日曜・祝日限定でJR甲府駅南口「貸切バス専用のりば」から無料のシャトルバスを運行(9月19日から時刻表変更予定)
TEL: 0551-28-7311(受付は9時30分~16時30分)
営業時間: 10時~17時(最終入場は16時30分まで)
休業日: 水曜、年末年始、その他
Webサイト: サントリー登美の丘ワイナリー

 その登美の丘ワイナリーで約7億円の設備投資を行なった「FROM FARM醸造棟」が今夏竣工、9月から本格稼働する。

 繊細な温度調整を可能にする小容量サーマルタンクを26台備え、約50区画で栽培したぶどうをそれぞれ最適なタイミングで収穫し、小ロットで仕込むことで、ぶどうの個性を最大限活かした多彩な原酒のつくり分けが可能となる。そしてその原酒たちをアッサンブラージュすることで、さまざまな表情のワインを生み出せるようになる。

登美の丘ワイナリーで今夏竣工した「FROM FARM醸造棟」

 ここでは収穫したぶどうの除梗(じょこう)、選果、圧搾、発酵、瓶詰までを行なうことができ、「ジェントルハンドリング」(ぶどうをよりていねいに扱い負荷を低減する)を実現。登美の丘らしい高品質なワインを生み出すとしている。

 たとえば工程に合わせて自然の重力を利用してぶどうが移動していく「グラヴィティ フロー」の設計がなされているほか、フランス北部シャンパーニュ地方で多く使用される新型プレス機を導入することで、均質な圧力で素早くプレスし、果皮を自重でほぐし、搾汁後はすぐに冷却することで温度変化を抑えた高品質なぶどう果汁の搾汁を可能にしている。

工程に合わせて自然の重力を利用してぶどうが移動していく「グラヴィティ フロー」の設計になっている。小容量サーマルタンクは26台で将来的に約40台まで増やせる
約50区画で栽培したぶどうをそれぞれ最適なタイミングで収穫し、小ロットで仕込むことができる

 9月19日から始まる新ワイナリーツアーでは、この新しい醸造棟や熟成庫、ぶどう畑の見学にテイスティングが付いた内容が提供される。ぶどう畑では、世界的に評価が高まっている「甲州」が棚仕立て(日本などの日差しの強い地域で採用される育て方で、甲州で多く採用されている)で栽培されているのを見ることができ、熟成庫ではワイン樽で時を重ねる様子を見学することができる。

左はワイン用ぶどうの栽培では一般的な垣根仕立て、右は甲州で多く採用されている棚仕立て(写真提供:サントリー)
棚仕立てで栽培される甲州は、薄い藤紫色の果皮が特徴
ワインはステンレスタンクでの熟成のほかに、昔ながらの樽熟成もある。熟成庫では樽で熟成を進める様子を見学できる
今回のリニューアルで熟成庫の奥の様子も近づいて見られるようになった

FROM FARM 登美の丘ワイナリーツアー(有料)

実施日: 水曜を除く毎日(2025年9月19日~)
料金: 3000円(80分・要予約)
見学場所: 甲州畑、醸造棟、熟成庫
テイスティング: 「登美の丘 赤 時のかさね(45mL)」「登美の丘 甲州 2022 (45mL)」
※テイスティングのワインは変更になる可能性あり(以下同)

FROM FARM 登美の丘ワイナリーツアー〈プレミアム〉(有料)

実施日: 金・土・日曜・祝日(2025年9月19日~)
料金: 8000円(120分・要予約)
見学場所: 眺望台、甲州畑、醸造棟、熟成庫
テイスティング: 「登美の丘 甲州 2022(45mL)」「登美の丘 赤 時のかさね(45mL)」「FARM 登美の丘 プティ・ヴェルド 2021(45mL)」「登美〈ノーブルダルジャン〉2011(20mL)※貴腐ワイン」

甲州ぶどう畑 散策ツアー(有料)

実施日: 火・水曜を除く毎日
料金: 1000円(30分・要予約)
見学場所: 甲州畑
テイスティング: 甲州ワインなど時期により変動

自由散策(無料)

実施日: 水曜を除く毎日
料金: 無料
見学場所: 一般入場が可能な範囲(ショップ、富士見テラス、見学用ぶどう畑など)
テイスティング: ショップ内テイスティングカウンターにおいて有料で提供

テイスティングでお気に入りのワインはショップで購入できる。配送にも対応しており、一定額以上の会計で配送料が無料になるサービスも
9月27日~28日は「FROM FARM ワイン フェスティバル 2025」、11月8日は「登美の丘ワイナリー 収穫感謝祭 2025」の開催を予定している
内覧会で説明したサントリー株式会社 ワイン本部 日本ワイン部長 宮下弘至氏(右)と登美の丘ワイナリー チーフワインメーカー 篠田健太郎氏(左)

 内覧会ではサントリー「FROM FARM」新ヴィンテージの白ワイン(甲州)と赤ワインの試飲会も開かれた。

 和食に合う日本の白ワインとして世界的に評価が高まっている甲州だが、シャルドネやソーヴィニヨン・ブランといった一般的な欧州系品種と比べて糖度があがりにくく、それがよくもわるくも“穏やかさ”という特徴や、アルコール分のための補糖につながっている。

 そこで世界の白ワインと肩を並べるため、凝縮感を高めるために、適した系統の選別、適した圃場の選択、完熟したぶどうを選別した収穫など、自家ぶどう園での栽培を活かした取り組みをここ数年進めてきた。これにより2023年ヴィンテージは初の糖度20度超えを達成、無補糖での醸造を実現した。

登美の丘ワイナリーのワインの特徴を説明する、サントリー株式会社 ワイン本部経営戦略部 シニアスペシャリスト 柳原亮氏
甲州の2023年ヴィンテージは初の糖度20度超えを達成、無補糖での醸造を実現した

 試飲会で提供されたのは「SUNTORY FROM FARM」の「登美の丘 甲州 2023」「登美 甲州 2023」「登美の丘 赤 2022」の3種の新ヴィンテージと、赤の比較のための「登美 赤 2021」の計4種。

 フラグシップである「登美」と「登美の丘」の甲州の違いは「ボディ・果実の強さ」「柑橘や多彩な果実、花、スパイスを含む複雑で上品な香り」「甲州の渋さを持ちながら、エレガントと感じさせる質感と余韻」などにあるという。ちなみに白ワインは2023ヴィンテージから「登美 白」ではなく、品種を押し出した「登美 甲州」となっている。

 一方で赤はアッサンブラージュとなっており、日本の温暖化に合わせていわゆるボルドー・ブルゴーニュの品種から、南フランス系の品種へと年々推移している。以前からカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フランなどを採用してきたが、近年は暑さへの耐性があるタナやマルスランの割合が増えてきている。タナはしっかりとしたボディ、マルスランは果実感と品のよさに寄与している。そして今の主役となっているのはプティ・ヴェルドで、小粒で品種特性として強い風味を持ち、日本の気候でも強さを保ち、登美の丘の気候にも合っているという。ただしタンニンが強いため、そのコントロールの手腕が問われる。

登美(赤)のブレンド比率の変遷

「登美の丘 甲州 2023」は普及価格帯とはいえ参考価格5400円(税別)であり、記者からしたら十分贅沢なワイン。和食に合うやさしさがありながら果実感もある。そして「登美 甲州 2023」(参考価格1万5000円・税別)では、登美の丘にあったキリッとした酸味の角がなくなりつつもしっかりとした果実感は残っており、より繊細さを感じられるようになった。

「登美の丘 赤 2022」(参考価格5400円・税別)はミディアムボディの赤。ドライフルーツのプルーンをかじったようなジューシーさがありながら、重い甘さはなく、ちょっといい焼鳥などを食べながら味わいたい気分になった。比較用に並んでいた「登美 赤 2021」(参考価格2万円・税別)は圧巻。その濃厚だった果実感がさらにきめ細やかになり、タレやソース系の料理でももちろん楽しめるが、肉の味をシンプルに味わう料理だとよりその醍醐味が感じられる気がした。

「SUNTORY FROM FARM」の「登美の丘 甲州 2023」「登美 甲州 2023」「登美の丘 赤 2022」「登美 赤 2021」

SUNTORY FROM FARM 登美の丘 甲州 2023

価格: 5400円前後(税別)
容量: 750mL瓶
色/タイプ: 白/辛口
アルコール度数: 12%
品種: 甲州 100%
コメント: 八朔や夏みかんなどの甲州らしい和の柑橘を連想させる果実の香りに、白桃とほんのりと米とニッキのタッチ。しっかりとした厚みのある果実感を、甲州らしい少しほろ苦さのあるフェノールのグリップと、太い酸が支える。2023年らしい凝縮感のある味わい

SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2023

価格: 1万5000円前後(税別)
容量: 750mL瓶
色/タイプ: 白/辛口
アルコール度数: 12.5%
品種: 甲州 100%
コメント: 熟した白桃やマスクメロンを連想させる上品で瑞々しい果実の香りに、熟したみかんや白い花のアクセント。キメ細かく、かつ伸びのある果実感と、それを支えるしなやかな酸味の落ち着きのあるバランス。厚みと繊細さが同居した緻密な味わい

SUNTORY FROM FARM 登美の丘 赤 2022

価格: 5400円前後(税別)
容量: 750mL瓶
色/タイプ: 赤/ミディアムボディ
アルコール度数: 12.5%
品種: プティ・ヴェルド 47%、メルロー 30%、タナ 13%、マルスラン 6%、カベルネ・ソーヴィニヨン 4%
コメント: プラムやさくらんぼなどの肉厚な赤い果実を連想させる香りに、イチジクや赤い花、クローブなどのスイートスパイスのタッチ。ジューシーでやわらかな、あたたかい印象を与える果実味と、丸い酸味、ていねいな抽出を感じるなめらかなタンニン。あたたかさと繊細さが同居する、心地よい飲み口のミディアムボディ

SUNTORY FROM FARM 登美 赤 2021

価格: 2万円(税別)
容量: 750mL瓶
色/タイプ: 赤/フルボディ
アルコール度数: 13.5%
品種: プティ・ヴェルド 56%、メルロー 33%、カベルネ・ソーヴィニヨン 11%
コメント: 桑の実とダークチェリーのコンポートを連想させる豊かでなめらかな果実の香りに、スミレの花のタッチ。針葉樹とトースト、スイートスパイス、チョコレートのような甘香ばしさ。ふんわりとした豊かな果実と、熟度の高さを感じるなめらかな酸味、細かいけど後半になるにつれて存在感を発揮してくるタンニンのキメ細かいテクスチャー。上品ななかに凜とした強さを感じさせる赤ワイン

日本ワインブランド「SUNTORY FROM FARM」の新ヴィンテージ(写真提供:サントリー)