インタビュー

「檸檬堂」にかけるコカ・コーラの本気度

日本コカ・コーラ 「檸檬堂」ブランドマネジャーの名郷根宗氏

 コカ・コーラ社と言えば清涼飲料のリーディングカンパニーだが、近年はアルコール飲料のマーケットにも進出している。2018年に九州限定で発売され、現在では全国で販売されるようになった「檸檬堂」について、日本コカ・コーラ 「檸檬堂」ブランドマネジャーの名郷根宗氏に市場参入の背景やこだわりのポイントを伺った。

ノウハウが無い中でもド本命で勝負

 名郷根氏は、当初を振り返り、「日本だけでなく、世界のコカ・コーラ社として、さわやかさで世界を変えていこう、清涼飲料以外で何かできないか」と考えたとした上で、「ビールだと醸造する技術が必要で、ウイスキーだと寝かせる必要もあり、我々が持っているリソースや技術を考えると、低アルコールのチューハイが最も参入障壁が低かった」と市場参入の背景を説明する。

「檸檬堂」のラインアップ

 当初、九州限定での販売とした理由については、九州にはお酒文化があり、そこで受け入れられれば自信を持って全国展開できると考えたからだという。また、チューハイの中でも王道と言えるレモンサワーを選んだのは、市場規模が一番大きく、そこで勝負することが一番大事だと考えたからで、同氏は「ド本命で戦って成功することに意味がある」とする。

 その後、檸檬堂は着実にファンを獲得。ヘビーユーザーからの「もっと度数が高いものが欲しい」というリクエストに応え、度数が高い商品を発売するなど、徹底的に消費者の声に耳を傾けてラインアップを拡充してきたという。

 同社では、今年に入ってから「ノメルズ ハードレモネード」「トポチコ ハードセルツァー」と立て続けにアルコール飲料を発売。各商品の棲み分けについては、檸檬堂はお酒好きのための日本の酒場をイメージし、30~50代のお酒好きをターゲットにしている一方で、ノメルズはポップでカラフルで、米国の西海岸をイメージし、20~30代の若い世代がターゲット、また、トポチコはカジュアルでストリートポップになじむブランドで、あまりお酒を飲む習慣がないZ世代をターゲットにしているとのことだ。

日本の酒場をイメージしたブランディング

 名郷根氏によれば、他のメーカーのようにアルコール飲料に関する知見や能力が無い中で、同社が重視したのがブランディング。檸檬堂でこだわったのは、酒場をイメージできるようにしたことだと語る。そのためにレモンサワーにこだわっているさまざまなお店をまわり、酸味や苦味を含めた酒場のレモンサワーの味わいを目指したという。

 こうしたコンセプトは、「うらレモン」なるキャンペーンにも反映されている。

 同氏は、「実際のお店だったら、お客さんの顔を覚えて常連さんにどういうサービスができるか、もてなしができるかを考える。檸檬堂を贔屓にしている常連さんに対して、お店の裏メニューのようなものを提供しようと思った」とした上で、「レモンじゃなくて、お酒にこだわったらどうなるか。原酒を変えたら面白いことができるのではないか」と考え、昨年は麦焼酎、今年は日本酒で割った特別な非売品を製造したとする。

日本酒で仕込んだ「檸檬堂 うらレモン」(非売品)

 とりわけ今年の日本酒の難易度は想像以上に高く、度数が高い蒸留酒をベースにする場合は味の調節が行ないやすいが、日本酒は15%程度の度数しかなく、薄められないためにどうしても日本酒の味が出てしまい、レモン感の表現に苦労したのだとか。

 同キャンペーンは11月末で終了してしまったため、もう応募することはできないが、名郷根氏は「お店でも飲んだことがないようなものが飲めるのは非常に価値があること」と自信を深めたようで、お店の裏メニューが本メニューになるように、さらにブラッシュアップしての商品化にも期待したいところだ。