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日本ワイン発祥の地、勝沼でワイナリーツアーに参加してきた

ワイナリーの見学と試飲ができる「勝沼ディスカバリーツアー」を体験

 11月17日より、いよいよ2022年のフランス産ワイン「ボージョレ・ヌーヴォー」が解禁となる。のだけれども、昨今の世界情勢によりあらゆるもののコストが高騰し、ボージョレ・ヌーヴォーもその影響を避けられず、例年よりかなり価格が上がってしまいそうなのだとか。

 一方で、日本のワインは比較的コスト増の影響を受けにくく、いつも通りリーズナブルに楽しめるとのこと。そんなわけで、日本ワインの発祥の地とされる山梨県甲州市にある「シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー」にて、ワインの新酒が続々登場するこの秋以降にぴったりのワイナリーツアーを体験してきた。

ブドウ畑と甲府の山々を眺めながらワインを楽しめる

メルシャンのルーツである元醸造所に残る歴史的な製造器具たち

シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー。売店も兼ねている

 シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーは、メルシャンがもつ3つのワイナリーのうちの1つで、同社において最大の生産量(年間約500トン)を誇る醸造所をもつ。同所ではコロナ以前から一般向けのワイナリーツアーを実施しており、コロナ禍を経て2022年5月より全面リニューアルして再開した。ツアーは大きく分けて2つあり、1つは今回体験した「勝沼ディスカバリーツアー」。ワイン資料館や醸造所などを見学し、4種のワインをテイスティングできる所要時間約90分、料金3000円のメニューとなる。

 もう1つはよりリッチな体験となる「勝沼ワインメーカーズスペシャルツアー」で、同じように施設の見学コースを巡るとともに、6種のワインをテイスティングできる所要時間約100分、料金1万円のメニュー。いずれも予約制で、土日祝日の各日1~2回程度(スペシャルツアーは月2回程度)、1回あたりの最大人数6名と参加枠はかなり限られている。が、ワイン資料館の入場や売店でのワイン購入などは通りすがりでも可能なので、気軽に立ち寄りたい。また、ツアー以外に不定期開催のテイスティングセミナー(約90分、1万円~)もあるとのことなので、公式サイトは要チェックだ。

ワイン資料館の入口
シャトー・メルシャンで長年ワイン造りに携わり、ツアーガイドも務める生駒元氏に案内していただいた

 そんなわけで今回の「勝沼ディスカバリーツアー」、スタートはシャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーのほど近くにあるワイン資料館から。このワイン資料館は、メルシャンのルーツである明治10年(1877年)に設立された日本初の民間ワイン会社、大日本山梨葡萄酒会社の醸造所の跡地。建物の構造は当時の状態を保ちながら、かつて使われていた醸造用設備など、ワインの歴史にまつわる品々が展示されている。

明治10年から始まった同所におけるワイン造りの歴史年表

 内部は地下1階、地上2階建のような構造。地下には2700リットルのワイン樽が並ぶ貯蔵庫があり、1階には原料となるブドウの破砕、圧搾という序盤の過程で用いられる、今となっては原始的な作業器具、設備の数々が並ぶ。ブドウから絞られた液体がどのような工程で醸造所の中を巡っていくのか、どんな作業によってワインが作られていくのか、といった全体像が、ガイドによる説明や展示パネルによって理解できるようになっている。

地下にあるワイン樽の貯蔵庫。樽1つの容量は約2700リットル
かつて使われていたブドウの圧搾機や濾過器など
破砕の工程で利用された設備
水車の力を借りてローラーを回転させ、ブドウを潰す
潰されたブドウの液体と皮は下に落ちて流れていく
破砕溜めで濾され、液体だけが床下の槽へ
破砕溜めに残った皮などを絞る圧搾機

 上階では、発酵に使用された巨大な木桶が見られるほか、同醸造所でつくられた現存する最古のワインから現代のワインに至るまでの、貴重な現物も目の当たりにできる。明治時代に日本でワインをつくるため、若くしてフランスへ渡航して学んだという高野正誠氏と土屋龍憲氏、その2人が当時使っていたメモや持ち帰ってきた成果の数々もガラス越しに観察することが可能だ。

半2階のようになっているフロア
明治12年にここで製造された現存する最古のワインが奥に保管されている
メルシャンが昔からつくってきたワインの現物が並ぶ
土屋龍憲氏が描いたとされる精緻なイラスト。これを元にワイン醸造に必要な器具を製造したという

味見もできるブドウ畑と現在の醸造所、迫力あるワインの熟成樽も

ワイン資料館のすぐ横にある圃場「祝村ヴィンヤード」

 ワイン資料館から外に出ると、隣接する土地にはブドウの圃場「祝村ヴィンヤード」が広がっている。背の低いブドウの木が列をなして整然と並ぶ垣根式と呼ばれる方式で、列ごとに異なるブドウ品種が栽培されている。メルロー、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、シャルドネなどなど、計20品種ほどが植えられており、収穫後も一定期間はそれらのブドウを「味見」できるのもツアーの醍醐味。ワイン用のブドウは酸っぱいもの、というイメージがあったが、実際には驚くほど甘いことに気付かされる。

整然と並ぶ垣根式のブドウの木
1列ごとに異なるブドウ品種が栽培されている
ツアーでは、収穫後の時期でもブドウが残っていたら「味見」ができる
敷地内の棚式のブドウの木には甲州種が実っていた

 続いて案内されたのが、シャトー・メルシャンの本丸となる現在の醸造所。使用済みのオーク樽が無造作に置かれているのを横目で見ながら、ツアー参加者のみが立ち入ることのできるコースを歩く。レセプションと呼ばれるブドウ仕分けの現場を遠目に観察できるのに加え、熟成のための樽やタンクが設置された「Bセラー」や「Aセラー」、「Fセラー」といった施設も見学していける。特に「Fセラー」の約3300リットル、フルボトル4000本相当という楕円形状の巨大オーク樽は圧巻だ。

現在の醸造所。屋外にある樽は役目を終えた使用済みのものだという
各地で収穫し、集まってきたブドウを仕分けするレセプションのエリア
大小100個ほどのタンクにワインが仕込まれている「Aセラー」
巨大なステンレスタンクが立ち並ぶ「Bセラー」
3300リットルもの容量をもつ楕円形状のオーク樽がある「Fセラー」

 さらに隣接の「ビジターセンター」内にある、500個もの225リットル樽でワインが保管、熟成されている地下セラー「オルトゥスルーム」へ。この場所では、「勝沼ワインメーカーズスペシャルツアー」でシャトー・メルシャン最高峰のワイン数種をテイスティングする際にも利用される場所となっている。ワインの香りが濃厚に漂う雰囲気ある空間で、まさにワンランク上のスペシャルな体験ができそうだ。

ビジターセンターの地下セラー「オルトゥスルーム」にあるワイン樽たち

 最後はメインとなるシャトー・メルシャンのワイン4種のテイスティング。ツアーの実施タイミングによってワインの種類は変わるとのことだが、今回試飲できた1つ目は白ワインの「岩出甲州きいろ香 キュヴェ・ウエノ 2021」(ワイナリーでの販売価格4600円)。同社の元工場長であり、ワイン資料館の現館長でもある上野氏がもつブドウ畑で、偶然発見した新たな栽培法から生まれたという、柑橘系の爽やかな香りが特徴のワインだ。

最後はお楽しみのテイスティング

 2つ目は同じく白ワインの「北信シャルドネ キュヴェ・アキオ 2019」(同5500円)。1つ目よりはやや黄色がかかった色合いで、柑橘系だけでなくバニラやアーモンドのような風味も感じられる濃厚なテイスト。

 3つ目は赤ワインの「穂坂マスカット・べーリーA シングル・ヴィンヤード 栽培責任者 横内栄人 2018」(同5200円)で、酸味がやや強く感じられながらも親しみやすい赤ワインといった印象。そして最後の4つ目「塩尻メルロー 2018」(同5800円)は、なぜか土っぽさを思わせる独特の風味をもつ、ユニークなワインとなっていた。

今回試した4種類のワイン。実施タイミングによって試せる種類は変わるようだ

ワインと食事がよりおいしくなる「ペアリングBOX」

 ワイン資料館のすぐ隣には、勝沼ワイナリーで製造された限定品を含む多種多様なワインが購入できる売店もある。さらにワインだけでなく、ワインとともにいただくことで互いのおいしさを引き立てる「ペアリングBOX」(1800円)もおすすめ。同じ勝沼にあるフレンチレストラン「ビストロ・ミル・プランタン」の手による軽食ボックスで、白ワインと赤ワインのどちらにも合う濃い味・薄味の6品がバランスよく収められている。ワインとのセット品は2500円で販売されており、ブドウ畑と甲府盆地を囲む山々が目の前に広がる屋外テラスでいただくと格別だ。

左奥に見えるのが売店を兼ねた施設。手前のテラス席でワインや食事を楽しめる
売店内の様子
安価なワインから高級ワインまで、多種多様な勝沼ワイナリーのワインをその場で購入できる
ワインをつかった冷製チーズフォンデュ、おつまみなども販売
「ペアリングBOX」をテラス席でいただく
白ワインにも赤ワインにも合う6品が収められている
ボリュームは多くはないが、満足感ある内容

 なお、メルシャンは2022年11月2日より白ワイン「日本の新酒 甲州&シャルドネ 2022」(750ミリリットル瓶)を1万2000本限定で販売中。11月17日からは「アルベール・ビショー ボージョレ・ヌーヴォー ペットボトル 2022」(750ミリリットル・375ミリリットル)の販売も開始する。

 また、11月5日11時からはハイブリッドイベント「シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーフェスティバル2022」も開催。周辺のワイナリーと共同でトークイベントを実施し、特別なワインの通信販売なども行なう。現地参加分は完売となったが、オンライン参加はまだ受け付けている。この秋はリーズナブルに楽しめる日本のワインと、コスト高のなかでもラインアップを絞ることでボージョレ・ヌーヴォーの販売にこぎつけたメルシャンの新酒を、存分に味わいたい。

こちらは2021年の「日本の新酒」シリーズ、「山梨県産甲州」と「山梨県産マスカット・べーリーA」