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メルシャン、椀子ワイナリーでSDGsをテーマにしたツアーを実施

2023年9月2日~

シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー

 メルシャンは、長野県上田市にある椀子(まりこ)ワイナリーでSDGsをテーマにしたツアーを開始する。初回は9月2日に開催され、現在、Webサイトで予約を受け付けている。定員は10~20名で、参加費は1人1万円。

 7月7日に同ワイナリーで開催された発表会において、代表取締役社長の長林道生氏は直近の国内ワイン市場の動向について「2008年以降拡大してきたが、2012年以降は横ばいが続いている。ワインの市場規模は酒類のうち5%未満と非常に小さいが、伸長できるポテンシャルがある。ワイナリーの数は直近5年で約1.5倍、メルシャンの販売量も直近10年で約1.6倍になっている」と説明。

 その一方で、日本のワイン産業にとっては、世界的な気候変動、遊休荒廃地の増加、ESG/SDGs対応の重要性の3つの課題があり、これらを解決することで大きなチャンスがあると指摘した。

メルシャン 代表取締役社長の長林道生氏

 今回企画されたツアーは、全体を通じて椀子ワイナリーでの取り組みを紹介することを通じて、こうした課題やその解決策を学んでいくものとなる。

 同社は勝沼(山梨県甲州市)や桔梗ヶ原(長野県塩尻市)にもワイナリーを保有しているが、椀子はワイナリーがヴィンヤード(ブドウ畑)に隣接しているという立地のよさや、環境省の自然共生サイトの実証事業において8月中にも本認定を受ける見込みとなっていることから、椀子でツアーが実施されることになったという。

 発表会には、マスター・オブ・ワインでシャトー・メルシャンのブランドコンサルタントを務める大橋健一氏も同席し、6月にドイツのヴィースバーデンで開催されたInstitute of Masters of Wineのシンポジウムの様子を紹介した。

マスター・オブ・ワインでシャトー・メルシャンのブランドコンサルタントを務める大橋健一氏

 同氏によれば、前回はSDGsに関連するものが数コマしかなかったが、今回は全てがSDGsに結びつくような内容で、農法やボトルの選定まで細かな観点でサステナビリティが議論されていた。

 農法については、有機農法では銅と硫黄をある程度使用できることになっているが、これらに化学薬品を集約すると、土の中に蓄積してしまい、とりわけ有害なレベルの銅の蓄積が問題になってきており、有機だから絶対によいと言える時代ではなくなってきているという。

 また、ワインを詰めるボトルについても、ガラスを用いれば作るときに熱を発し、運ぶ際にはその重さがCO2の排出量の増加につながる。その中に詰められる飲料も重く、それだけに飲料メーカーはなおさらSDGsに対して高い意識をもって取り組む必要があるとする。

 同氏は、ワインに対する意識改革の必要性も説く。「世界では女性や若年層がワインをサステナブルな方向に持っていく牽引役となっているが、日本は高齢な男性と正反対」「日本は世界から見るとガラパゴスのような市場になっており、圧倒的に偏った地域のワインが消費されており、これもサステナブルではない」として、他の酒類には見られないブドウ畑を中心とした土地への尊敬の念を育み、伝えていくことが重要だと語った。

 続いて登壇したキリンホールディングス CSV戦略部 シニアアドバイザーの藤原啓一郎氏は、2014年から農研機構と共同で取り組んできた椀子ワイナリーを取り囲むヴィンヤードの生態系調査の結果を紹介。168種の昆虫と289種の植物の生息が確認されており、垣根栽培でブドウを育てることにより、草原が回復し、生物多様性にポジティブな影響を与えていることが確認されたという。

キリンホールディングス CSV戦略部 シニアアドバイザーの藤原啓一郎氏

 2016年からは専門家の指導の下、従業員が希少種・在来種の植生再生活動を行なっているほか、NGOや地元の小学校と協力し、絶滅危惧種のオオルリシジミという蝶の幼虫が唯一の餌とするクララという草を増やす活動なども行なわれており、今回スタートするSDGsツアーでも、そうした活動の内容が紹介される。

 その後、シャトー・メルシャン ゼネラル・マネージャーの小林弘憲氏がSDGsツアーの先行体験を先導した。

シャトー・メルシャン ゼネラル・マネージャーの小林弘憲氏

 ツアーは、ワイナリ全体を見渡せる丘の上にある一本木公園からスタート。その脇にある地元小学校に学びの場として提供しているじゃがいも畑を見学し、さまざまな品種が育てられているブドウ畑の中を通り、それぞれの品種の特徴などを小林氏が解説していく。

 その後、ワイナリーでワインを作る際に出る残渣(絞りかすなど)は、すべて敷地内で発酵させ、堆肥にすることで、外部から持ち込む肥料を少なくすることで運ぶ際に発生するCO2の排出を最小限に抑えていることや、土地の傾斜を利用して施設を建設し、重力をうまく使ってエネルギー消費を抑えながらワイン造りの工程(グラビティフロー)を設計していることなどが紹介された。

一本木公園からの見晴らし
地元の小学校に貸し出しているじゃがいも畑
さまざまな品種のブドウが育てられている
堆肥場
クララ
グラビティフロー設計のワイナリー内

 実際のツアーでは、見学の終了後に限定品を含む椀子で作られているワインのテイスティングも体験できる。今回の発表会では、7月8日に1675本限定で発売された「シャトー・メルシャン 北信シャルドネ スペシャル・エディション 2022」(1万円)のテイスティングが行なわれた。

 同商品は、長野県の北信エリアの千曲川の左岸と右岸で育てられた異なる特徴をもつブドウ(シャルドネ)を組み合わせて作った特別なワイン。左岸で収穫された南国のフルーツを思わせるようなブドウと、右岸で収穫されたミネラル感が感じられるブドウのそれぞれ良いところが口の中に広がる。

 熟成させることでさらにおいしさが増すことを見込み、10年の保管に対応したDIAM10というコルクを使用しているとのこと。これを試飲した大橋氏は、度数が11.5%とやや低めながらも、飲んだ後もその風味が残るグリップ感に驚いていたという。

発表会では「シャトー・メルシャン 北信シャルドネ スペシャル・エディション 2022」をテイスティング