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ボジョレーヌーヴォー解禁、今年は“究極のビンテージ”

アドリアン デュブッフ・ラコンブ氏が解説

2022年11月17日 取材

ジョルジュ デュブッフ 取締役のアドリアン デュブッフ・ラコンブ氏(右)とサントリー ワインカンパニー 輸入・カジュアルワイン事業部のチョウ アンジ氏(左)

 サントリーは11月17日、ボジョレーヌーヴォー解禁にあわせ、関係者向けの説明会を都内で開催した。

 ボジョレーヌーヴォーは、ボジョレー地区で収穫されたブドウ(ガメ種)で作られるワインの新酒。毎年11月の第3木曜日が解禁日に設定されている。

 サントリーでは「ジョルジュ デュブッフ」のボジョレーヌーヴォーを輸入販売しているが、社名になっているジョルジュ デュブッフ氏は、ボジョレーヌーヴォーを世界に広めたことで知られている。

 今回の説明会には、その孫にあたるジョルジュ デュブッフ 取締役のアドリアン デュブッフ・ラコンブ氏が来日し、今年のボジョレーヌーヴォーの特徴などを説明した。

 同氏によると、今年は暑く乾燥した日が続いたことから、非常に良いブドウを収穫できたという。同氏は「今年のデキを一言で表わすなら“究極のビンテージ”」と表現する。

 というのも、通常は8月末~9月頭にかけて収穫が行なわれるが、猛暑の影響もあり、今年は8月22日から収穫を開始。これは同じく猛暑で収穫が早まった2003年以来の早さで、ブドウは比較的小粒だが、その分、手摘みすると手がベタベタするほど糖度が高くなったという。2003年のものが100年に一度のビンテージと呼ばれていたが、今年もそれに並ぶ仕上がりとのこと。

 近年は温暖化の影響も懸念されるが、温暖化が進んで糖度が増すと、発酵が活発化してアルコール度数が高くなってしまうため、軽くて飲みやすいボジョレーヌーヴォーの特徴が損なわれてしまう危険性もあるため、比較的日照量が少ない北部の農場のブドウを調達するなど、工夫しながら品質を整えているのだとか。実際、同社のボジョレーヌーヴォーも昨年の12.5%から13%に若干度数が上がっている。

 赤いベリーやいちごを思わせる果実の甘みと軽い酸味が楽しめるボジョレーヌーヴォーだが、今年は“いちご”というよりも“いちごジャム”のような甘い風味が例年以上に感じられるはずだという。食べ合わせとしては、ヤンニョムチキンや油淋鶏といった甘辛い味わいの食べ物と組み合わせるのがオススメとのこと。

 また、同社では白ぶどうを使い、赤ワインと同じように皮や種と一緒に発酵させて作る「オレンジヌーヴォー」も2020年から製造・販売しており、今年もボジョレーヌーヴォーとあわせて販売されている。こちらは柑橘系の香りとオレンジの皮のようなほろ苦さが特徴となっており、生姜やネギなど、土に近い素材との相性がよいとされ、同氏は生春巻きや油淋鶏などがオススメだとしている。

 なお、世界的なエネルギー価格高騰の影響もあり、1本(750ml)あたりの価格は昨年から1000円以上も値上がりしている。日本には飛行機で運ばれるボジョレーヌーヴォーだけに、サントリーは輸送費の影響が最も大きかったと説明。デュブッフ・ラコンブ氏は、これに加え、エネルギー価格高騰の影響でブドウの買付価格が高くなったことや、瓶の価格が15%上がっていることなども影響していると語る。

 日本においては、さらに円安の影響もあり、割高感が増してしまっているが、同氏は「来日後に得意先を回った限りでは、事前の予約は好調で、例年以上の注文をいただいた。結果的に楽しみにしていただいていることを身をもって感じた」と手応えを感じている様子で、本国のフランスに次いで大きな市場となっている日本に期待を寄せていた。