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長崎大学、プラズマ乳酸菌のコロナ症状緩和効果の研究成果を発表
2023年4月28日 16:53
- 2023年4月28日 発表
長崎大学は、キリンホールディングスが研究開発を行なっているプラズマ乳酸菌(乳酸菌L.ラクティス プラズマ)を用いた新型コロナウイルス感染症患者に対する特定臨床研究成果を4月30日の第63回日本呼吸器学会学術講演会で発表する。これを前に28日、両者が都内で会見を行なった。
今回の臨床試験を行なった長崎大学客員教授で琉球大学大学院医学研究科 感染症・呼吸器・消化器内科学講座(第一内科)教授の山本和子氏は、これまでにデング熱やロタウイルス、インフルエンザといった感染症においてプラズマ乳酸菌の効果を確認する研究が報告されているほか、直近でプラズマ乳酸菌で刺激したpDC(形質細胞様樹状細胞)培養上清がコロナウイルスの増殖を抑制する研究報告があったことを紹介しながら、今回の研究は、新型コロナウイルス感染症の患者に投与した場合の結果であることを示した。
試験としては、長崎市内の7病院において、65歳未満の軽症患者を対象に、50人にプラズマ乳酸菌入りのカプセル、46人にプラセボカプセルをそれぞれ14日間内服してもらった。
咳、呼吸困難感、倦怠感、頭痛、嗅覚・味覚障害、食欲不振、胸部痛の8項目の自覚症状の総合点としては、両群に差は認められなかったが、このうち嗅覚・味覚障害については、9日目以降にプラズマ乳酸菌群で改善が確認されたという。
山本氏は、試験の企画段階はオミクロン株が拡大する前で、鼻水、鼻詰まり、喉の痛み、発熱といったオミクロン株で特徴的な症状を評価項目に含んでいなかったこともあり、総合点としての違いが見えにくくなっていた可能性を指摘する。
新型コロナウイルス量の変化率では、プラズマ乳酸菌群では4日目に減少が確認され、コロナ感染で発生するとされる血中からのpDC減少が抑えられることも分かった。
一方で、下痢や蕁麻疹といった重篤ではない報告が1件ずつあったが、有害と考えられる副作用の報告はなかった。
会見に同席した長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 展開医療科学講座 呼吸器内科学分野(第二内科)教授の迎寛氏によれば、ゴールデンウィーク明けに5類への移行が決まっている新型コロナウイルス感染症だが、感染率が下がったわけではなく、高齢者の死亡リスクも下がっておらず、後遺症も問題になっていると指摘。
同氏は、5類への移行により、診療を受けられる医療機関が政府が思うほど増えていかない可能性があるほか、治療薬の価格が高いなどの課題もあり、今まで以上に感染症対策が自己責任として個人にのしかかってくる可能性があるとして、ウイルス免疫を手軽かつ安全に高められる医薬品を探す必要があるとして、さまざまなウイルスへの感染予防効果で実績があるプラズマ乳酸菌に着目したことを紹介した。
ちなみに、市販のプラズマ乳酸菌入りの飲料や食品では、1日分に1000億個のプラズマ乳酸菌が配合されているが、今回使用されたカプセルには4倍の4000億個が入れられていたという。
山本氏は、重症化リスクが高いとされる65歳以上を対象としていないなど、今回の研究で理解できることの限界を認めつつも、作用がマイルドで副作用がほとんどないといった点や、低価格で入手しやすいといった点で抗ウイルス薬にない利点があると語る。
長崎大学副学長(新型コロナウイルス感染症対策担当) 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 臨床感染症学分野 教授で、長崎大学病院感染制御教育センター センター長の泉川公一氏は、同大学ではプラズマ乳酸菌以外にネルフィナビルやクラリスロマイシンなどの研究も行なっていることを紹介。治療薬候補の開発や治験プロセスの遅延といった日本の課題の解決に取り組んでいく姿勢を示した。