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キリンビール2025年事業方針発表会、酒税一本化を前にポートフォリオ再構築

2025年1月16日 発表

(左から)執行役員 マーケティング部長の今村恵三氏、代表取締役社長の堀口英樹氏、クラフトビール事業部長の大谷哲司氏

 キリンビールは1月16日、2025年の事業方針に関する発表会を開催し、代表取締役社長の堀口英樹氏、執行役員 マーケティング部長の今村恵三氏、クラフトビール事業部長の大谷哲司氏がプレゼンテーションを行なった。

 堀口氏は、冒頭で2024年を振り返り、「ビール類市場全体は前年比でおよそ3%のマイナスとなり、コロナ明けの消費マインドの低下やエコノミーカテゴリーからRTD(Ready To Drink)へのシフトの影響があった。ただ、狭義のビールの構成比が17年ぶりに55%を超えてきた」と酒税改正の影響も受けつつ、2026年の最終的なビール系飲料の酒税一本化を踏まえた市場環境の変化への対応を進めてきたとする。

 ビール類全体で市場が-3%程度と推計されるなか、4月に発売した新商品「晴れ風」が目標を大きく上回る出荷を記録し、主力の「一番搾り」も前年比プラスで推移したことから、税率アップで向かい風となった新ジャンルの減少をカバーする形で同社としては-1.9%での着地となっている。

 2025年については、生活様式の変容や物価高などを背景に、コスパやタイパといった意識や多様化などの消費マインドの変化が継続していくと考えられることから、同社としては「お酒の未来を創造し、人と社会に、つながるよろこびを届け続ける会社となる」というビジョンの下、「全員でお客様価値の創造にチャレンジ」を戦略テーマに掲げて、さまざまな提案を行なっていく。

 同氏は、適正飲酒の啓発やノンアルコールや低アルコールの商品の構成比率アップを図ること、その裏付けとなるような研究や技術の開発を行なうなど、酒類メーカーとしての責任を果たしながらも、人類の歴史のなかで人々の生活を豊かにするというお酒のポジティブな側面を価値として感じてもらえるようなアクションを起こしていきたいと語る。

 また、2026年の酒税一本化を見据え、新たなブランドポートフォリオの構築を図る必要性があることから、2025年からの3年間のイノベーションが重要になるとしている。

 2025年の販売目標については、ビール類合計は金額ベースで前年並みを見込みながらも、数量ベースでは一番搾りブランドで2%増、晴れ風は17%増を計画。一方、淡麗グリーンラベルは8%減、本麒麟は7%減を見込んでいる。このほか、RTDについては6%増、ノンアルコール飲料は12%増、洋酒は6%増(いずれも金額ベース)を目標にしている。

 続いて登壇した今村氏は、2025年のマーケティング方針を説明。「ビールの魅力化」と「RTDカテゴリーの活性化」をテーマに各ジャンルでチャレンジしていっくとする。

 一番搾りブランドは、発売35年目となる昨年にリニューアルを実施したこともあり、4年連続プラスと好調に推移しているが、「もっとおいしいビールを飲みたい」という普遍的なニーズに加え、「自分向けと思えるビールを選びたい」というニーズが顕在化してきており、これに応えられるような新商品として「キリン一番搾り ホワイトビール」を4月に発売することを明かした。

 17年ぶりのスタンダードビールの新ブランドとして昨年発売した「晴れ風」については、当初の見込みを上回るペースで市場に浸透しており、飲みごたえと飲みやすさの両立を目指したという味わいだけでなく、商品を購入することで日本の風物詩を守る活動に参加できるという取り組みへの共感が好調の背景にあるとする。

 そこで、従来の缶商品に加え、瓶商品とTAPPY(ビールサーバー)向けのペットボトル商品を4月15日から業務向けに販売。初年度1万5000店舗への導入を目指すとともに、晴れ風ACTIONで寄付の対象とする自治体を2倍に拡大し、さらなる活動の浸透を図っていく。

 RTDについては、氷結ブランドのスタンダード・無糖シリーズに加え、フードロス削減や農家支援という形で新たな価値創造を図った「mottainai」シリーズを立ち上げてきたが、2025年も同様に、既存ブランドの育成を図りながら、新たなチャレンジとなるような商品展開を図るとしている。

 最後に登壇した大谷氏は、スプリングバレーブランドを軸とするクラフトビール事業の戦略について説明した。

 同社では、2024年10月にクラフトビール事業部を発足し、2026年の酒税一本化に向けて国内のクラフトビールの市場形成と拡大に取り組んでいるが、今年3月にスプリングバレーブランドの大規模なリブランディングを実施すると発表した。

 リブランディングでは、ブランド名の由来ともなっている「泉の谷」をモチーフにした新たなロゴデザインを作成。新たなビールカルチャーが湧き上がるようなイメージで、自由で開放的な世界観を表現しており、オリジナルグッズの開発・販売も行なっていく。

 新たなロゴをあしらった新デザインのパッケージは3月4日から販売される予定。なお、新しくなるのはパッケージの外観のみで、中味は従来と同じとのこと。また、こうしたクラフトビールの体験の場となっている直営のスプリングバレーブルワリーが創業10周年を迎えることから、1年を通してさまざまな企画を実施していくとしている。