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キリンビール2024年事業方針発表会、スタンダードビールの新ブランド立ち上げを宣言

2024年1月11日 発表

代表取締役社長の堀口英樹氏(右)と執行役員 マーケティング部長の今村恵三氏(左)

 キリンビールは1月11日、2024年の事業方針に関する発表会を開催し、代表取締役社長の堀口英樹氏と執行役員 マーケティング部長の今村恵三氏が説明を行なった。

 堀口氏は、冒頭で1月1日に発生した能登半島地震の被災者への見舞いの気持ちを表した後、2023年を振り返った。販売実績(数量ベース)としては、ビール類の合計が市場全体で前年比-1%と見込まれる中、同社は-5.9%とやや厳しい数字となった。RTD(Ready To Drink)も-2.4%、ノンアルコール飲料も-6.6%となる一方、ウイスキーなどの洋酒類が+11.5%と好調だった。

 全体として苦戦したビール類だが、「一番搾り」については+5.4%と好調で、「スプリングバレー」も+0.1%となっている。これに対し、酒税改正の影響もあり、「本麒麟」は-9.6%となった。

2023年の販売実績

 プレゼンテーション後の質疑応答において、堀口氏は、こうした状況について「確かに数字を見ると業界全体との乖離がある。一番大きい要因は、狭義のビール、発泡酒、新ジャンルが(他社と)大きく異なっており、今回の酒税改正で狭義のビールが追い風になり、逆に新ジャンルカテゴリーを多く持っているキリンとして苦戦した。もう一つは、5月以降、業務用市場が回復してきたが、我々は業務用の比率が低く、業務用の販売額自体は上がっているが、乖離の要因となった」と考察。

代表取締役社長の堀口英樹氏

 その上で「一つ一つのブランドを見ると、一番搾りブランドは大きく成長し、市況以上の動きをしており、この後の2026年の酒税改正に向けて徐々に変わってくる。新ジャンルのあたりはしっかりと下支えをしなければいけない。ビールについては積極的に投資をしなければいけない。多方面における戦略をしっかりと強化しなければいけないが、今年はそれをしっかりやっていこうと思っている。2026年に向けてこの構造の状況を乗り越えてブランドを確立し、さらなる成長ができるようにマーケティング投資を増やしていきたい」との方向性を示した。

 同氏が言うように、個々のブランドを見ると、「一番搾り」は前年比105%、RTDの「氷結 無糖」は前年比約3割増と市場を牽引しており、好調な国産ウイスキー事業も、「陸」が前年比で約1.9倍、「富士」が約2.7倍となっており、明るい話題も少なくない。

 こうした状況を踏まえ、堀口氏は「目まぐるしい環境の変化により、お客さまの消費マインドが大きく変化し、そこに柔軟に適応していくことが酒類業界にとっても大変重要になってくる」として、2024年は“全員でお客様価値の創造にチャレンジ”というテーマで、強固なブランド体系の確立と、新価値を提供する事業・ブランドの着実な成長の2つの軸で取り組んでいくと語った。

2024年の取り組み方針

 強固なブランド体系の確立においては、一番搾り、本麒麟、氷結といった既存の強いブランドに加え、同社として17年ぶりとなるスタンダードビールの新ブランドを立ち上げることを明らかにした。新ブランドの詳細については後日改めて案内するとしている。

17年ぶりとなるスタンダードビールの新ブランド立ち上げが宣言された

 また、全国のブルワリーを巻き込む形で市場を盛り上げようとしているクラフトビールカテゴリーについては、2021年のスプリングバレーの缶商品の発売をきっかけに一段高いステージへと市場が伸長し、2023年も堅調に推移しているとする一方、ビール類ユーザーの約8割がクラフトビールの飲用体験がないという調査データがあることから、「まだまだポテンシャルがある」と指摘。

 同氏は「障壁は、失敗したくない、冒険したくないというマインド。(クラフトビールは)特別なときに飲むものだというイメージを払拭し、身近なものにしていく必要がある」として、3月12日にスプリングバレーブランドをリニューアルすることを発表。今春には東京・代官山の直営店「スプリングバレーブルワリー東京」もリニューアルするなど、気軽に楽しめるクラフトビールの体験の場を用意していく。

スプリングバレーブランドの育成

 2024年の販売目標(前年比)は、ビール類が+2.6%、RTDが+1.3%、ノンアルコール飲料が+7.9%、洋酒類が-1.7%と設定されており、「狭義のビールを軸に、ブランド力の強化とビール市場の拡大を目指していく」としている。

2024年の販売目標

 続いて登壇した今村氏は、個々のブランドにおけるマーケティング方針を説明した。

執行役員 マーケティング部長の今村恵三氏

 スプリングバレーブランドでは、パッケージデザインをリニューアルするとともに、中核をなす「豊潤〈496〉」の中味をアップデート。ホップを添加するタイミングを複数回に分けることで各々のホップが持つ個性を引き出しながら、飲みやすさを高める工夫を行なっているという。

 一番搾りブランドでは、2023年に実施した施策を継続しつつ、「コミュニケーションを進化させ、ビールのおいしさや嬉しさへ気づきを作り、お客さまに手にとっていただける状況を目指していきたい」としている。

 本麒麟ブランドにおいては、2026年以降もビール類以上の約4割を維持するという見通しを示しながら「2026年に酒税の一本化を迎えるが、エコノミーの価格帯に関してお客さまの底堅いニーズがあると見ている。2018年の発売以降、ビールに最も近い味、おいしい、そして飲みごたえがあると、新ジャンルのニーズの高い期待に応えてきているブランド。ブランドの進化、価値向上に取り組んでいく」という。

 氷結ブランドについては、スタンダード、無糖の両軸でブランドを強化。「スタンダードについては、限定品を交えながら幅広いお客さまに氷結のスッキリしたおいしさを実感いただくということを目指していく。加えて、氷結ブランドから新たな商品のニュースを検討している」と、新商品を発売する計画があることが明らかにされた。