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キリンがウイスキーを20年間熟成させる新サービス、クラウドファンディングで立ち上げ
2025年5月23日 16:59
- 2025年6月6日~
キリンビールは6月6日、クラウドファンディングのMakuake上で、20年にわたって支援者のウイスキーを樽で熟成させるサービス「人生を共に生きるウイスキー」への挑戦をスタートする。
同サービスは、社内の若手を中心に新たな事業や価値創造を実現できる人材の開発を目的に2021年度から取り組んでいる社内新規事業提案制度で生まれた企画。熟成0年時点のウイスキー(2019年~2025年の原酒)を購入すると、キリンディスティラリーの富士御殿場蒸溜所で20年間熟成。支援者には一定期間ごとに熟成途中のウイスキーのサンプルが届き、それまでの人生を振り返りながらウイスキーの熟成度合いを体感できる。
企画を立案したマーケティング部 事業創造室の小島亨介氏によれば、子どもの成長過程や夫婦の記念日など、人生の節目に、熟成に長い年月がかかるウイスキーが寄り添うというコンセプトになっているが、20年にわたる事業ということもあり、クラウドファンディングの形で事業を立ち上げていくことにしたという。
クラウドファンディングでの目標金額は1億円。未達の場合は事業を開始しないというAll or Nothing形式での実施となる。マクアケ インサイトマーケティング事業部 シニアプロデューサーの早川将司氏によると、過去12年間の約4万4000件のプロジェクトのうち、1億円以上を達成したのは0.1%の58件だけで、これまでの目標金額の最高金額も5000万円で、「マクアケにとっても前代未聞」とのこと。
クラウドファンディングでの価格は10万円(税別)となっており、熟成途中のサンプルが100ml(50ml×2本)が6回(0年、3年、7年、10年、13年、16年)、20年熟成のウイスキーが700mlで1回届けられる。
熟成に使用する樽はアメリカンオークで、長期熟成に適したモルト原酒を使用。シングルカスクではなく、同一の蒸溜ロットのものをブレンドし、ボトルに詰めて届ける形になる。
小島氏は、「人生の節目に記憶に残る乾杯がある。お酒の研究がしたい」と考え、2016年に入社。研究所で酵母に関する研究に携わり、その後、工場でビールの醸造に従事。自身の研究成果は学会で発表されたり、特許になったりもしたが、具体的な商品として世の中に出ることがなかったこともあり、社内の新規事業提案制度にチャレンジしようと考えたという。
起案のきっかけは、自身に子どもができたこと。同氏は「子供を抱いたときに何かこの子のために残してあげたいいう気持ちが自然と湧き上がってきた」と振り返る。子どもを持つ24人の親にヒアリングするなかで、線を入れて子どもの伸長を記録していた柱を建て直した家の一部に使用したという話を聞き、家族の歴史を体現するものに特別な価値があることに気づき、そこに潜在的なニーズがあると考えた。
社内の最終審査をパスし、家庭用ビールサーバーのサブスク事業のホームタップの事業成長も担当しながら、事業創造室で新規事業の立ち上げを目指すという二足のわらじで事業化に取り組んできたが、20年と長期にわたる内容だけに、この4年間で頓挫しそうになったこともあった。
5月7日にニュースリリースを出した後、自らリヤカーを引いて街頭で「忘れられない乾杯」のエピソードを聞いて回る企画を実施。きちんと価値が伝えきれるかという不安を抱きながら設営していたところ、すでにリリースを見ていた人から声をかけられ、「絶対に買います」と言ってもらえたことで自信が持てたという。
企画の始まりは子どもの誕生だったが、出会いや結婚、引っ越し、定年退職など、さまざまな人生の節目に向けたサービスだと語る小島氏。良好な夫婦関係を保つには家族でのコミュニケーションが大切という調査結果を紹介しながら、「家族での対話のきっかけを生むツールになりたい」としている。