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KDDI・ローソン「Real×Tech LAWSON」1号店を高輪ゲートウェイシティにオープン

デジタルサイネージやロボティクスを活用

2025年6月23日 開店
KDDI×ローソン「Real×Tech LAWSON」1号店

 KDDIとローソンは6月23日、「TAKANAWA GATEWAY CITY」のTHE LINKPILLAR 1 NORTH 6階に未来コンビニ「Real×Tech LAWSON」1号店として、「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」をオープンした。同店は通常のローソンとは違い、15のリテールテックを導入している。

KDDI×ローソン「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」

所在地: 東京都港区高輪2-21-1 THE LINKPILLAR1 NORTH 6階
営業時間: 7時~21時

 リテールテックとは、リテール(retail=小売)とテクノロジー(technology=技術)から成る造語。小売業にIT技術を導入することで流通や在庫管理、商品陳列など、さまざまな部分で省力化や効率化を目指す。ローソン高輪ゲートウェイシティ店では、店舗運営だけでなく、利用客にも新しい体験ができるようになっている。

店舗の外観にはイベントや来店時に応じて光の演出を行なう店頭照明「ファサードライン照明」が設置されている(写真提供:KDDI)

AIサイネージ

 AIサイネージは、利用客の行動に合わせておすすめの商品を表示するデジタルサイネージ。設置されている棚の商品を取ると「たんぱく質量は赤マークをチェック!」といったように表示が変わる。陳列棚の前にいる人の性別や年齢などの属性をカメラで認識し、どの棚から商品を手に取ったかで表示内容を変えているとのこと。

人気商品を表示していたサイネージが、商品を取ることでレコメンド表示に切り替わった

プライスレール連動サイネージ

 こちらのデジタルサイネージは、タッチすることで商品の詳細な説明やPR動画が大型サイネージに表示されるもの。置いてある商品は店頭では購入できず、オンライン販売で入手できる。こちらは商品の陳列棚というよりは、メーカーに新商品や販促強化したい“商品を置く棚を貸す”というもので、しかも省スペース・人員不要で説明も行なえるという特徴がある。

プライスレールの「動画はこちらをタッチ!」に触れると、15秒ほどの説明動画が再生される

サイネージ連動による空間演出&空間ジャック

 店内には商品棚の上やレジの上に大型サイネージがいくつも設置されている。レジ前サイネージは落ち着きのある壁面緑化アート、商品棚のサイネージはキャンペーン情報などが通常は表示されているが、タイムイベントなどに合わせて一斉に同じ演出を表示する“空間ジャック”が行なえる。取材時は「からあげクン」の揚げたてのタイミングに合わせた商品の告知や、Pontaパスのキャンペーンなどを一斉表示させていた。

緑化アートが、からあげクンにジャックされた!
店内中がPontaパスのキャンペーン告知に切り替わったところ

 このデジタルサイネージは、高輪ゲートウェイシティの情報(都市OS)を利用して、天気や電車遅延、混雑度合などのリアルタイム情報を表示することもできる。

人流データを記録している高輪ゲートウェイシティならではの表示

AI Ponta

 入口のすぐ脇に設置されているのが「AI Ponta」。ハイテクに囲まれた店舗で温もりのあるコミュニケーションを提供できないか考え出されたもので、生成AI(Gemini)を搭載したPontaが自然な会話から高輪のマチや店舗の情報などを発信する。スタッフによると、「自身が店長だと言っている(勝手に思い込んでいる)キャラクター設定になっています」とのこと。

AI Pontaがコミュニケーションツールとして占いをしているシーン

Pontaよろず相談所

 プライベートな空間が確保されている個室ブースで、生活インフラ、通信、ヘルスケア、金融に関する相談ができるというもの。画面にはAIアバターが登場し、相談者が必要な窓口へ繋いでくれる。相談先は提携事業者などによるリモートによる応対で、例えばヘルスケアなら服薬指導やオンライン診察などができる。この利用客と提携先を通信で結ぶハブサービスを「次世代リモート接客プラットフォーム」として提供開始することを、KDDIは同日に発表している。

Pontaよろず相談所の使用シーン。撮影のために扉を開けているが、通常の入室中はクローズド空間になる

ドリンクの補充/床の清掃/からあげクンの調理はロボットが受け持つ

 利用客には直接関係ないが、省力化を目指すために3つのロボットが導入されている。飲料陳列ロボが補充する様子を観察してみたが、それほど動作は速くなく、むしろ人間の方がパフォーマンスは上だと感じた。しかし、ロボットならではのメリットはほかにあり、例えば冬の時期のドリンク補充は寒さとの戦いであることや、常に継続して補充ができる点は代えがたいアドバンテージであることはなるほどと思った。

ドリンクを補充する飲料陳列ロボ
1時間ほどで店内を清掃する自動掃除ロボ。吸引から水拭きまでしてくれる
からあげクンを自動で揚げてくれる自動調理ロボ(写真提供:KDDI)
くっつかないように揺する動作も組み込まれている(写真提供:KDDI)

 ここまではリテールテックを中心に紹介してきたが、そのほか店内で目についた点も触れておく。同店はKDDI本社(7月1日に新本社としてグランドオープン)に入居する店舗として、ビジネスマン向けの品揃えにも力を入れている。コーヒーマシンは複数台用意されており、急な症状に対しての薬も販売している。また、通信会社らしく、モバイルアクセサリーのコーナーも用意されていた。

複数台設置されているコーヒーマシン
種類豊富なドリンク剤
医薬品も販売している
医薬品の販売時間
セルフレジが数多く設置されている
モバイルアクセサリーも購入できる
コンセントを備えたイートインコーナー

両社のコラボで新しい形のコンビニを目指す

 店舗オープンの発表会では、KDDIの代表取締役社長 CEOである松田浩路氏、執行役員でパーソナル事業本部 パートナーグロース本部長の久木浩樹氏、ローソンの代表取締役社長である竹増貞信氏が登壇した。

 松田氏は本社機能を移転する高輪ゲートウェイシティに、すでに1/3に当たる4000人強が引っ越したことをまずは報告した。最先端技術とビッグデータが取得できるこの場所を未来に向けた実験場とし、そこで得られた知見を活かし、地域のインフラとしてのコンビニの役割をさらに強化していきたいとした。そして、国内だけでなく、海外における展開にも貢献していきたいと話した。

 久木氏はリアルテック・ローソンが地域における最重要インフラ拠点となり、さまざまな社会課題の解決に貢献することを目指していくと話した。そのためにもKDDI社員自らがコンビニ経営に携わることによって知見を蓄積し、KDDI社員がファーストユーザーとなることで改善を進め、各種実証実験を加速させてローソン店舗への波及速度を上げていきたいと説明した。

 竹増氏は同社が今年で創立50周年であることを紹介し、今後の50年のためにも新しいローソンを作り上げていきたいと話した。KDDIとのコラボでリアルの温かみとテックの力を融合させた未来コンビニ「Real×Tech LAWSON」をオープンさせたが、ここでは30%の省力化と30%の売上増を目指すと抱負を述べた。

KDDI株式会社 代表取締役社長 CEO 松田浩路氏
KDDI株式会社 執行役員 事業本部 パートナーグロース本部長 久木浩樹氏
株式会社ローソン 代表取締役社長 竹増貞信氏