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「Food Tech Studio - Bites!」開催レポート

日本の大手企業がフードテックベンチャーと連携模索

2021年4月22日 開催

 スクラムスタジオは、フードテックビジネスに関するオープンイノベーションプログラム「Food Tech Studio - Bites!」の途中経過発表会を開催した。

 2020年9月にスタートしたプログラムで、日本の大手食品企業などと、新しいテクノロジーを生み出しているフードテックベンチャーの協業により、テクノロジーを活用した食の新しい価値創造と、フードロスやプラスチックゴミといった食ビジネスにまつわる課題解決、植物性タンパクを活用した環境保護の実現などの実現を目指している。

 今回はプログラム第1フェーズの途中経過として、プログラムに参加することになったフードテックベンチャー企業の一部や、今回のプログラムに参加している日本を代表する企業がフードテックに関心を寄せている理由などが紹介された。

 顔ぶれとしては、不二製油グループ本社、日清食品ホールディングス、伊藤園、ユーハイム、ニチレイ、大塚ホールディングス、カゴメ、ハウス食品グループ、フジッコ、東京ガスの計10社のパートナー企業、博報堂、東京建物、シグマクシス、辻調理師専門学校の4社の戦略パートナー企業、JR東日本、日立ライフソリューションズ、三菱ケミカル、東京建物、オレンジページの5社のリソースパートナー、自治体として加賀市、神戸市、新潟市の3自治体が参加を表明しており、フードテックに関連する世界各国のベンチャー企業と連携し、新たなビジネスを共創していく。

 主体となっているスクラムスタジオは、米シリコンバレーと東京に拠点を置いて投資事業を手がけるスクラムベンチャーズが2020年8月に設立。オープンイノベーションの手法を活用し、各業界を代表する大企業パートナーとスタートアップとの共創を支援する「グローバル・アクセラレーター・プログラム」や、ジョイントベンチャーによる大企業のスピンアウト起業といった「インキュベーション事業」を業務としている。

 これらのパートナー企業との共創を希望し、世界30か国、218社のフードテックのスタートアップ企業から応募があったという。パートナー企業のメンバーがメンターとなって、3か月間、200回以上の議論を行ない、スタート段階で参加予定としていた20社を含め、全世界18か国、85社が採択された。

 スクラムベンチャーズのパートナーである外村仁氏は、「2020年をフードテック元年として、フードテックがスタートした。日本の大手食品企業は、50年~60年前に世界で最初の食品技術を生み出した元祖イノベーター。今、驚異的なスピードと、かつてない発想で新しい製品やサービスを生み出す、新興イノベーターであるフードテックベンチャーと共創することで、全く新しい食の世界が生まれることが期待できる」と今回のプログラムの狙いを説明している。

スクラムベンチャーズ パートナーの外村仁氏

 今回、JR東日本とオレンジページが運営しているフードラボ「キムチ, ドリアン, カルダモン,,,」(以下:K, D, C,,,)を会場として、7社のベンチャー企業が自らのビジネスを紹介し、パートナー企業が評価ポイントや、協業を行なっていく可能性を紹介した。

IXON Food Technology

 1社目として登場したのは、真空状態にすることで、生の肉を最大で2年間常温で保存することを可能とするテクノロジーを持つ、香港に本社を置くIXON Food Technology。ビデオでアピールした同社の創業者でCEOのFelix Cheung氏は、「皆さんは冷蔵庫で肉を保存していると思いますが、私は自分の机の上で、常温で肉を保存しています」と生肉を入れたパッケージを手に持ちながらにこやかに話した。

IXON Food Technology 創業者 CEOのFelix Cheung氏

 生肉を常温で保存という技術に、ハウス食品グループ本社では、「私たちも調理した肉をレトルトにして常温で保存した商品を提供しているが、半生の肉を常温で保存するという技術に大きな驚きを感じた。冷蔵保存の必要がないということで、流通を変えていく技術となるという見方もできるが、宇宙、山の上、砂漠といったこれまでは生肉を扱えなかった場所でも生肉が扱えるようになるという可能性があるのでは?」と指摘した。

 冷蔵庫を提供している日立グローバルライフソリューションズでは、「冷蔵庫の競合? という見方もできるが、新しい温度帯の流通ができあがる可能性があるのではないか」と話した。

 自動販売機でお茶を販売している伊藤園では、「自動販売機もこれまでと同じではいられない時代。お茶だけでなく、肉や調味料を一緒に販売する自動販売機といったものを考えていくと興味深い」と新しい可能性について言及した。

Yo-Kai Express

 2社目として登場したのは、短時間での調理機能を備えたラーメンの自動販売機を開発する米スタートアップのYo-Kai Express。45秒で温かいラーメンを提供する自動販売機で、すでに2021年夏の日本進出に向け、K, D, C,,,の4階のキッチン付きコワーキングスペースに日本支社を登記し、日本での正式ローンチに向けて本格稼働を開始することを発表した。創業者でCEOのAndy Lin氏は、「今回のプログラムに参加できたことを感謝したい」とビデオでメッセージを送った。

Yo-Kai Express 創業者 CEOのAndy Lin氏

 コワーキングスペースの家主でもあるJR東日本では、「ご存じの通り新大久保は国際性があるスペース。海外企業にも利用してもらえるスペースとすることを考え、このスペースを開設した。フードテックを広げ、成功事例を作っていきたい」と期待のコメントを寄せた。

 植物性油脂を提供する不二製油では、「欧米ではビーガンラーメンを要望する声が大きいと聞いている。私たちの植物素材を活用するノウハウで協力することができれば」と海外で新分野のビジネスを展開できる可能性に言及した。

Mindcurrent

 3社目に登場したMindcurrentは、AIを活用することで従業員のストレスを軽減するプラットフォームを提供している。創業者でCEOのSourabh Kothari氏は、「私たちが持つストレス予測アルゴリズムに沿って社名をつけた。アプリを使うことで従業員のストレスをケアすることにつながる」と自社を紹介した。

Mindcurrent 創業者 CEOのSourabh Kothari氏

 ハウス食品グループ本社では、「当社は食べる、作ることによる楽しさを追求している企業なので、従業員がストレスを解消していく仕組みを持つことが重要だと考えた」とストレス解消が、自社の食ビジネスにも重要だと説明した。

 ニチレイでは、「当社でもアプリを開発し、新しいビジネスをスタートしたが、Mindcurrent社にはアプリをどう使ってもらうのかという戦略とテスト実行するノウハウ、どうアプリを浸透させていくのかという点に学びがあった」とアプリに関して参考になったことを明らかにした。

AlgaleX

 4社目に登場したAlgaleXは、筑波大学の藻類活用技術を基盤に、パームオイルの廃液処理を行ないながら、DHA抽出に成功した企業。2021年2月に誕生したばかりで、まだホームページもできていない。代表取締役の高田大地氏は、「川をキレイに保つことを技術によって実現するというのが当社のビジョン」と環境を配慮した技術を提供していることを説明した。

AlgaleX 代表取締役の高田大地氏

 不二製油では、「食品開発の際、廃棄物を出さない、生産負荷を減らすことは今後当たり前のことになるのではないか。当社も大豆油の絞りかすから大豆ミートを生み出すといった取り組みを行なっている」と食品廃棄物が今後のビジネスの大きなテーマとなってくることを指摘した。

 伊藤園でも「当社の場合、大量の茶殻が排出されるが、そこからカテキン成分が抽出できることがわかり有効活用に取り組んでいる」とやはり食品廃棄物の活用に取り組んでいることを紹介した。

Greenspoon

 5社目として登場したのは、個人に必要な野菜、果実をつかったスムージーを届けるサブスクリプションビジネスを展開するGreenspoon。代表取締役CEOの田邊友則氏は、「2020年3月にサービスをローンチしたが、自分自身を好きで居続けることができるよう、日本だけでなく海外への展開も実現したい」と意欲を話す。

Greenspoon 代表取締役 CEOの田邊友則氏

 日立グローバルライフソリューションズでは、「今年3月に自動発注機能をつけた冷蔵庫を提供しており、Greenspoonのビジネスはとてもおもしろい。興味がある」とサブスクリプションで食品を届けるビジネスに興味を示した。

 フジッコは今年3月に大豆をお米のように食べることができる大豆ライスを発売したばかりで、「BtoC型ビジネスをどう行なっているのかに興味があった。通常、食品会社は製品の原価とコストから積み上げて価格を決定するが、Greenspoonさんの900円という売価から必要な原材料を決めていくという価格の決め方が大変興味深かった」と新しいビジネスモデルに興味を覚えたという。

ギフモ

 6社目のギフモは、パナソニックからスピンアウトした企業。噛む力がない人でも口にできる、食材を柔らかく煮込む調理家電「デリソフター」を提供している。代表取締役の森實将氏は、「嚥下に障害がある方でも、家族と同じ食材で今まで通りの食事ができる」とテクノロジーを使って介護をサポートする商品だと説明した。

ギフモ 代表取締役の森實将氏

 不二製油は、「介護を受けている人が、家族と同じ食材を、一緒の食卓で食べることができるというのは、栄養だけでなく、食べる喜びにつながる」と新しい調理技術によって生活に明るい影響を及ぼす点を評価した。

おいしい健康

 7社目のおいしい健康は、医食同源を実現するためITを活用したサービスを提供している。日本では当たり前となっている医食同源という考え方だが、米国では最近になって注目されるようになったのだという。

 伊藤園では、「医食同源はまさにその通りで、心身共に健康を実現するためには食事は重要な要素となるという点は当社の方向性とマッチしている」と評価した。