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キリンビールセミナー講師・草野さんに聞く、夏にお勧めのビール3種をうなぎの蒲焼きとペアリング
「一番搾り 糖質0」「ブルックリンサマーエール」「スプリングバレー」
2021年7月21日 18:00
全国的に梅雨明けし、本格的な夏がやってきた2021年。山に海にというお出かけを楽しみたいところだが、全国的にコロナ禍は収まっておらず、一部地域では緊急事態宣言が出ていたりする。そのため、普段の夏であれば楽しめるビアガーデンなどもオープンしておらず、夏に美味しいビールを外で楽しむことはしづらい状況だ。
しかしながら、近年ビールの多様化が進んだせいで、酒店やコンビニなどでは多くの種類のビールが売られている。ビールや発泡酒などの大分類的な違いから、原材料となるホップや製法、そして糖質やアルコール度数など、どれを選んでよいのか迷ってしまう。
そこで今回、キリンビールのセミナー講師である草野裕美さんに、夏にお勧めのビール3種を教えていただいた。草野さんはキリンビール横浜工場をメインに開催している「キリンビールセミナー」でビールのさまざまな魅力を伝えている。キリンビールに限らず各地にあるビール工場ではビールセミナーを開いていることも多く、旅の目的にしている人も多い。ただし、現在はコロナ禍でもあり、そのようなセミナーはオンラインでの開催へと移行しつつある。今回も、オンラインでの取材となった。
夏のお勧めビール、1本目は「一番搾り 糖質0」
草野さんが選んでくれた、夏のお勧めビール3種は「一番搾り 糖質0」「ブルックリンサマーエール」「スプリングバレー」の3種類。キリンビールといえば、「一番搾り」があまりも有名(伝統のキリンラガービールもあるが)だが、今回はあえて“夏の”ということで、万能選手の一番搾り以外で選んでいただいた。
最初に草野さんがお勧めしてくれたのが、「一番搾り 糖質0」。この一番搾り 糖質0は、名前からも分かるとおり糖質がゼロ%のビール。よく知られているようにビールは麦のジュースともいえる麦汁から作られており、この麦の麦芽に含まれる酵素ででんぷんが糖に分解される。この糖を酵母が醸してアルコール分にしていく。ホップなどで苦みや香り付けをしていくが、お酒の根本であるアルコール分は糖分と酵母によって生まれており、糖分をゼロにするのは発泡酒より麦芽成分の多いビールにとって難しかった部分になる。
一番搾り 糖質0はその部分を工夫によって乗り越え、日本で初めて糖質ゼロのビールを実現。パッケージにも「日本初糖質ゼロビール」とうたわれている。製法はキリンの定番ビールである一番搾りと同様に一番麦汁を使った一番搾り製法で、一番搾りならではの麦のうまみを引き出したビールという。
実際に飲んでみると、一番搾り同様の美味しさというより、一番搾りと違う感じのクリアさからくる飲みやすさがある。一番搾り 糖質0は、もちろん糖質はゼロなのだが、100mlあたりのエネルギーも40kcalから23kcalへと下がっているのも、飲みやすさやさっぱり、すっきり感につながっているように思う。それでいてビールならではの味わいが楽しめるので、栄養価が気になる人にもお勧めだ。
リゾートの感のある「ブルックリンサマーエール」
草野さんが2本目に選んだのは、「ブルックリンサマーエール」。こちらは製品名に「サマー」と入っているだけあって、夏向けのビールと言うことなのだろう。上面発酵のエールタイプのビールなので、独特のコクがある。日本で売られている多くのビールは下面発酵のラガータイプのビールなので、その優しい爽やかさと比べると力強さは圧倒的だ。暑い夏、しかも海や山などで飲むと最高のビールといえる。
このビールを家で飲むと、「あー、どっか海でも行きてぇ」となりがち。なんでそうなるのか少しだけ深く考えてみると、なんとなく海外旅行を思い出しがちなコクや風味にあるのだと思う。
3本目は「スプリングバレー 豊潤<496>」
草野さんに進めていただいた3本目は「スプリングバレー 豊潤<496>」。こちらは缶ビールとして新製品発表時に紹介したクラフトビールで、4品種のホップをビール醸造の発酵中に酵母と一緒にホップを入れる「ディップホップ」製法を採用している。このリッチな構成により、豊潤な味わいを実現しており、ブルックリンサマーエールとは違う方向性のコクがある。ブルックリンサマーエールのコクは海外のビーチを思い出すようなコクだとするなら、スプリングバレーのコクはあくまで日本的。どこか柔らかなコクとなっている。
それぞれ、缶とグラスについだ状態の写真を載せているが、液色の差を見てほしいため3枚の写真はいずれも同じ露出で撮影してある。その中でもっとも濃い液色となっているのがスプリングバレーで、リッチなビールの味を楽しめる。
最も薄く、さわやかな感じとなっているのが一番搾り 糖質0。飲みやすい要素もありながら、ビールらしい爽快感も楽しめる。しかしながら、過剰にキレていることもないので、そこはキリン一番搾りらしい優しさのある部分だ。
2つの中間に位置するのがブルックリンサマーエール。では、味も中間かというとそうではなく、まったく違うライン上にあるのがこのビール。エールならではの違う文化を味わえる。
スプリングバレー 豊潤<496>
季節ならではの食事とペアリング
ビール単体で飲んでも美味しいのは間違いないのだが、お酒の楽しさは料理とのペアリングにある。うまくマッチすれば料理もお酒も美味しくなるし、あれあれという場合も違った楽しさが生まれる部分だ。
今回は、「土用の丑」間近のため、この季節ならではのうなぎの蒲焼きと3つのビールをペアリングしてみた。うなぎの蒲焼きはデパ地下で購入した宮崎県産の肉厚のもの。当然ながら蒲焼きの濃いタレによって濃厚な味となっており、ビールとどれだけ合うかがポイントになるだろう。
ビールとして薄めの味のほうから飲んでみた方がよいと思い、まずは一番搾り 糖質0とペアリング。一緒に飲んだり食べたりするまえは蒲焼きの濃い味付けにビールが負けてしまうと考えていたのだが、意外によく合う。蒲焼きの濃さやうなぎの脂分をさっぱり流してくれる感じで、うなぎの美味しさが引き立つ感じとなっていた。
次に、ブルックリンサマーエール。ブルックリンサマーエールではエールビールならではのコクが、うなぎの蒲焼きのたれに負けないと予想していた。実際に一緒にペアリングしてみたが、確かに負けていないものの、お互いが引き立つというより、別々の美味しさを主張している。宮崎県産の蒲焼きのたれの味の方向性と、ブルックリンサマーエールの味の方向性が別の方向にある感じだ。ブルックリンサマーエールは醤油などの和風味よりも、オリーブオイルなど洋風の味がマッチするのではないかと感じた。
最後に、そのリッチな味わいからうなぎの蒲焼きに最も合うと考えていたのがスプリングバレー。実際に合わせてみると、うなぎの蒲焼きの美味しいさと、スプリングバレーの美味しさを互いに引き立てくれる。ペアリングの楽しさを実感できる組み合わせだった。
ただ、個人的にわるくないなと思ったのが一番搾り 糖質0との組み合わせ。うなぎの濃厚な脂をさらっと打ち消してくれ、食がどんどん進む。とくに暑い夏は食が進みにくいところもあるのだが、一番搾り 糖質0と組み合わせることで、きちんと気持ちがリセットできる。その上、糖質もゼロなので、ミョーな安心感もある。事前の勝手な予想では、うなぎの蒲焼きと最も合わないだろうなと思っていたが、その予想を完全に裏切られた。これは蒲焼きのたれの傾向によるものかもしれないため、違う蒲焼きでは違う結果が出るし、人によって味の好みは異なるので、いろいろ試してみていただきたい。
いつもの定番ビールもよいが、いつもとは違うビールの味の奥深さを味わえる体験だった。
ちなみに草野さんにビールグラスの夏のお勧めを聞いてみたところ、グラスの差というよりも、冷やしたグラスで飲んでいただきたいとのこと。この冷やすのも、冷蔵庫で事前に冷やすというより、氷水でさっとグラスの温度を下げるのがお勧めとのことだ。氷水にグラスをくぐらすことによって温度が下がるとともに、グラスの内側にある微細な凸凹を隠蔽してくれる。ビールの泡が無駄に立ちすぎることもなくなるとのことだ。暑い夏に美味しいビールを飲むため、こちらもぜひ試してみていただきたい。