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サントリー、日本ワインの新ブランド「SUNTORY FROM FARM」を立ち上げ4シリーズ19品目を発売
2022年6月9日 11:36
- 2022年6月8日 発表
サントリーは6月8日、100年以上に渡って取り組んでいる日本ワインの新たな事業戦略を発表。日本ワインの魅力を届ける新ブランド「SUNTORY FROM FARM(サントリーフロムファーム)」を立ち上げ、4シリーズ19品目を新発売することとともに、サントリー登美の丘ワイナリーをリニューアルオープンすることについても説明した。
発表会に登壇した、サントリーワインインターナショナル 代表取締役社長の吉雄敬子氏は、今回の新たな取り組みの背景として、日本ワインの価値の高まりを掲げる。
サントリーの日本ワインは、2022年1~5月の販売実績が前年比111%と成長。家庭用のワインについては、コロナ禍の巣ごもり需要の頃と比べ、幾分、販売が落ち着いたものの、より高いワインや自分向けのワインを探す傾向が強くなってきている。
日本ワイン市場は、コロナの影響で近年、やや減少したものの、基本的には右肩上がり。この10年間で市場は約1.5倍に拡大。その理由としてワイナリーの増加があり、ここ5年で約150のワイナリーが増え、トータルで413軒のワイナリーが存在する状況になっている。
日本ワインの市場が成長を続ける理由として、吉雄社長は「日本ワインには3つの魅力があると考えています」と語る。
「第1には日本固有の品種や国内の産地で作られていることから親近感があり、地産地消の安心感があること。次に日本の風土で作られたぶどうのワインなので和食に合い、選んでもらいやすいこと。そして最後に国内のワイナリーなので気軽に足を運び、作り手の技術や思いを知り、共感してもらいやすいことだと思います」と吉雄社長。
とはいえ、日本で飲まれている日本ワインは全体の5%未満。さらなる発展に向けて、市場や顧客との接点の拡大や強化、持続可能な日本ワイン作りに積極的に取り組んでいくために、日本ワインの新たな戦略を立案し、大刷新するに至った。
サントリーが伝えたい日本ワインの魅力について吉雄社長は、「作り手が日本の自然、風土と畑と向き合って、匠の技と愛情を込めて、時間をかけて作り上げたワインであるということ。ぶどう畑やワイナリーに物語があること。この点を強く心にとどめて、お客様へ新しい提案をしていきたいと考えております」と言う。そして生まれたのが、「SUNTORY FROM FARM 水と、土と、人と」というコンセプトだ。
“すべては畑から”ということで、サントリーでは新コンセプトをもとに、ぶどう畑を起点として、日本ワインの魅力を届ける。そのための具体的な戦略が次の4つだ。
サントリー登美の丘ワイナリー リニューアルオープン
南に富士山を仰ぐ、山梨県甲斐市にあるサントリー登美の丘ワイナリー。150ヘクタールの広大な敷地に広がる自家ぶどう園で、100年以上に渡ってぶどう作りから醸造、瓶詰め、熟成まで一貫して行なっている。このサントリー登美の丘ワイナリーを、日本ワインの本質的価値を生み出し、体験できる場として9月9日にリニューアルオープンする。
富士山を望むぶどう畑の大パノラマで、ワインを楽しめる大自然堪能型のワインテラスを設置。もの作りを起点に物語を語るワインショップへと改修。そのほか作り手と飲み手が語り合うセミナールームや、歴史の時間と空間を演出する樽熟庫など、日本ワインの魅力を演出するワイナリーへとリニューアル。登美の丘ワイナリーを日本ワインの本質的価値を体感できる場所とするべく、約5億円の投資を行なう。
従来のワイナリーツアーについても、より深い体験ができるものに進化させる。もの作りのこだわりや、サステナブルが気軽に体験できるツアーを新たに提案。特別な体験チケットを、クラウドファンディングにて先行発売する。詳細は7~8月に情報公開される予定だ。
サントリー日本ワイン 新ブランド発売
9月6日には、「SUNTORY FROM FARM」のブランド名で、ぶどう畑を起点とした全ての技と愛情で作られた日本ワインの魅力を伝える新ブランドを発売。4シリーズ19品目を展開する。
まず品種シリーズは、日本固有のぶどう品種である甲州、マスカット・ベーリーAを使用した、日本の食事と寄り添うワインシリーズ。
品種シリーズ
・「甲州 日本の白 2020」(1820円前後)
・「マスカット・ベーリーA 日本の赤 2019」(1820円前後)
・「マスカット・ベーリーA 日本のロゼ 2021」(1820円前後)
※すべて税別価格
そしてテロワールシリーズは、サントリーが全国のぶどう産地の地元栽培家と作り上げたワインシリーズ。テロワールとは土壌のこと。ワインはぶどうの味わいだけでなく、その土地の土壌や気温など、様々な自然の要素によって特徴が異なる。そんなテロワールの違いによる青森、山形、長野の産地の個性が感じられるワインが味わえる。
テロワールシリーズ
・「津軽 ソーヴィニヨン・ブラン 2021」(4200円前後)
・「かみのやま カベルネ・ソ-ヴィニヨン 2020」(4900円前後)
・「かみのやま メルロ 2019」(4900円前後)
・「かみのやま メルロ&カベルネ・ソーヴィニヨン ロゼ 2021」(2730円前後)
・「かみのやま シャルドネ 2021」(3900円前後)
・「高山村 シャルドネ 2021」(4500円前後)
※すべて税別価格
サントリーは登美の丘ワイナリーで100年以上、塩尻ワイナリーでも80年以上に渡ってワインを作り続けてきた。ワイナリーシリーズは、そんなワイナリーが作り上げるワインの魅力が楽しめるワインシリーズ。
ワイナリーシリーズ
・「登美の丘 赤 2020」(5400円前後)
・「登美の丘 甲州 2020」(5400円前後)
・「登美の丘 ロゼ 2021」(3000円前後)
・「塩尻メルロ 2018」(5400円前後)
・「塩尻メルロ ロゼ 2021」(3000円前後)
・「塩尻マスカット・ベーリーA 2019」(4000円前後)
※すべて税別価格
最後のシンボルシリーズは、日本ワインの象徴として、日本の最高峰、世界が感動する品質を目指すもの。特に塩尻ワイナリーの最高峰である岩垂原メルロは、長野県塩尻地区の中でも岩が多くて水はけの良い岩垂原地区で育てられた高品質のメルロを使用。複雑で豊かな香りと、凝縮感のある味わいが楽しめるワインとなっている。
中味品質向上の取り組み
新ブランド「FROM FARM」は、より凝縮感のあるぶどうから、より自然な果実味を引き出すことを実現。そのため、収穫期の見極めや完熟ぶどうの厳選、収穫量の最適化を実施した。よりていねいにぶどうを選りすぐり、細かく温度管理できる発酵タンクの導入も行なっている。
そして今後、さらなる品質向上と生産能力の増強に向け、登美の丘ワイナリー、塩尻ワイナリー合わせて総額約10億円の設備投資を行なっていく。具体的には、優しくていねいな圧搾ができる垂直型圧搾機の導入などによる、さらなる中味品質の向上。ぶどうの個性別に仕込む小容量発酵タンクの増設や、樽熟庫の貯蔵能力も増強させる。
持続可能な日本ワインづくり
日本ワインを今後も作り続けるための課題が、気候変動影響だ。栽培地域の温暖化や極端な気候の増加は、ぶどう栽培においても多くの影響をもたらしている。また農家の高齢化や離農によって、耕作されない遊休農地が増加し、原料ぶどうの安定供給にも黄色信号が灯っている。
サントリーでは過去より地道に進めてきた取り組みに加え、このような直近の課題解決に向けた新たな取り組みをスタート。主な取り組みについて、登美の丘ワイナリーで栽培技師長を務める大山弘平氏が説明した。
持続可能な日本ワインづくりの主な取り組み
農家の高齢化や離農については、登美の丘ワイナリーがある山梨県においても大きな課題となっている。この状況を打開すべく、サントリーでは2015年に農業法人を設立し、課題解決に積極的に取り組んできた。
まず遊休農地を含めた新たな土地を開発し、ぶどう畑の面積を拡大。昨年度の12ヘクタールから、2030年には約1.7倍の20ヘクタールに達する見込み。これらの土壌には日本固有品種である甲州をメインに植え付けを進める。登美の丘ワイナリーは現時点で山梨県最大の甲州ぶどうの栽培面積を有するが、2030年には山梨県の甲州生産量の約10%を担うことを目指す。
一般的にぶどうは甘くなる時期に気温が高いと、色づきが悪くなり、ワインの色や香り、味わい全体の品質低下を引き起こす。そこでぶどうの成熟時期をより涼しい時期に移行させる副梢(ふくしょう)栽培という技術に、2021年より山梨大学とともに共同研究する。その結果、非常に高い品質のメルロの収穫に成功。本年度はシャルドネとカベルネ・ソーヴィニヨンを加え、約8倍の面積で副梢栽培に取り組む。
気候変動については、「やまなし4パーミル・イニシアチブ」への参加も行なう。4パーミル・イニシアチブとは、土壌が持つ高いCO2貯留量に着目した国際的な取り組みで、土壌の炭素量を毎年0.4%ずつ増やすことで、大気中のCO2の増加分を相殺し、温暖化を抑制できるというもの。登美の丘ワイナリーがある山梨県は日本の地方自治体としては初めて、2020年4月にこの取り組みに参加。サントリーも山梨県に賛同し、2022年3月より参加している。
土壌のCO2貯留量を増やすため、従来の草生栽培やぶどうの絞りかすの堆肥化に加え、新たに剪定した枝を炭にして土壌に混ぜ込むことを開始。この3月に剪定枝の炭化貯留の取り組みに着手し、山梨県からの認証を取得した。対象となる土壌での推定CO2削減量は現状は年約7トンだが、計画達成時には年約14トンになると想定する。
サントリーでは品質にこだわりながら、2022年時点で5.9万ケースの販売数量を、2030年には2020年比約2倍となる10万ケースを目指す。
「我々サントリーは、こういった活動を推進していることで、お客様においしい日本ワインをお届けし続け、日本ワイン文化を守り、育てていきたいと考えています」と吉雄社長は日本ワイン戦略説明会を締めくくった。