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サントリーの「ビアボール」、コトを楽しむMZ世代に向けて開発

2022年6月21日 発表

代表取締役社長の西田英一郎氏(中央)、マーケティング本部の佐藤勇介氏(右)、商品開発研究部の岡島高穂氏(左)

 サントリービールは6月21日、炭酸水でつくるビール「ビアボール」に関する発表会を都内で開催し、同社 代表取締役社長の西田英一郎氏らがそのコンセプトを説明した。

 西田氏は、「ビール市場は2004年を境に17年連続で前年割れの状況」だとした上で、「既存製品の育成だけでなく、大変難しいチャレンジなるが、これまでにないビールの価値を届け、新たな市場を作ることに挑戦していく必要がある」と力説。これまでの味わいを軸にした商品提案だけでなく、消費者がワクワクする楽しさを提案する必要があるとして、2021年4月に「イノベーション部」を新設したとする。

 そのイノベーション部が開発した第1弾商品が「ビアボール」となる。

ビアボール

 続いて登壇したマーケティング本部の佐藤勇介氏は、「幅広いお客さまに楽しんで欲しい商品だが、とくに狙いたいのはMZ世代(ミレニアル世代+Z世代:20代~40代前半)。モノを買う世代ではなく、コトを楽しむ世代」だと語る。

 開発はMZ世代の考え方と向き合いながらスタートし、「お酒を飲むことで得られる新しい体験が求められている」という考えに行き着き、今回の「自分好みにつくる自由なビール」というコンセプトに辿り着いた。

 佐藤氏は、ビールをタッパーウェアに入れて自宅の冷凍庫で30分凍らせ、凍結濃縮法でアルコール度数15%ほどのビールを作って飲んでみたところ、思いのほかおいしかったことが、ビアボールの商品化の最初のきっかけになったことを披露。実際にビール以外のアルコール市場においては、炭酸で割って飲むという需要が定着しはじめており、これも追い風になると考えたという。

 従来のビールは完成されたものを味わうスタイルだったのに対し、ビアボールは、炭酸水で割ることで「自分好みにつくる」ことや、氷を入れることで冷たさがキープされ「ゆっくり楽しめる」こと、苦味が少なく「スッキリ飲みやすい」ことがポイントとなる。

 しかし、商品開発研究部の岡島高穂氏は、実際に商品化するにあたっては、2つの課題をクリアする必要があったと振り返る。

 1つめの課題は、割って飲む楽しさを実現するため、アルコール度数を高めに設定する必要があるということ。酵母は繊細な生き物で、度数が高くなると発酵しづらくなる。ビアボールでは度数が16%となっているが、この度数までしっかりと発酵できるように、酵母の栄養供給や温度管理などを緻密に行なう「サントリー式“酵母イキイキ製法”」を導入することで、この課題をクリアした。

 2つめの課題は、炭酸水で割ってもビール特有の香味が失われないようにすることで、これについては「ザ・プレミアム・モルツ」シリーズで培った技術が応用されている。麦の味わいは「マスターズドリーム〈無濾過〉」、ホップ由来の香りは「ザ・プレミアム・モルツ」、爽やかな醸造香は「ザ・プレミアム・モルツ 〈香る〉エール」の製造技術により実現しているという。

 その後、岡島氏は、自由に割って楽しむ飲み方の実例として、最終的な度数が4%の「オススメ・ビアボール」、8%の「濃いめのビアボール」、2%の「ほんのりビアボール」、16%の「ビア・ロック」の4通りの作り方をデモンストレーションした。

4%の「オススメ・ビアボール」
8%の「濃いめのビアボール」
2%の「ほんのりビアボール」
16%の「ビア・ロック」

 こうした飲み方は、飲食店での提供や家庭向けの商品の販売にあわせ、目盛り付きのグラスを提供するなど、消費者が新たなスタイルにチャレンジしやすい環境を整えていく計画。6月21日からは東京・渋谷の「b8ta Tokyo - Shibuya」と東京・下北沢の「ミカン下北」においてビアボールを先行体験できるようになっており、SNSの活用とともに、MZ世代に向けての情報発信も行なっていく。

 改めて登壇した西田氏は、「個人的にはウイスキーのような味わいが楽しめるビア・ロックが気に入っている」と語る。同商品については、初年度で13万ケース、23億円の出荷を目標に掲げ、2024年には100万ケース、170億円を目指すとしている。