ニュース

サントリー、2023年は狭義のビールに注力

2月には“磨きダイヤモンド麦芽”で「プレモル」をリニューアル

2023年1月12日 発表

代表取締役社長の鳥井信宏氏(左)と取締役常務執行役員 ビールカンパニー社長の西田英一郎氏(右)

 サントリーは1月12日、年初の記者会見を開催し、2023年の国内酒類事業方針ならびにビール事業方針を発表した。

 代表取締役社長の鳥井信宏氏は、2022年を振り返り、「一番大きな出来事は、2021年と比べて消費者の皆さまがウズウズして我慢できなくなった、外へ飲みに行くようになったこと」とした上で、コロナ禍で大きく落ち込んでいた業務用の市場が2021年比で1.4倍に伸びたことを紹介。そのぶん家庭用には少し反動があったが、国内の酒類市場(数量ベース)は全体で前年比103%、サントリーは同108%になったとしている。

 同氏は「多様化する消費者ニーズをいかに早く正確につかみ取り、ちゃんと価値を提案できるかどうかが一番大事。お酒は人々の暮らしを豊かにする生活必需品。ビール、ウイスキー、RTD、ワインといった、さまざまなカテゴリーにブランドを持つ総合酒類メーカーとして、価値のある提案を続けていく」と述べ、「食卓の彩り」「プレミアム」「ノンアル」「自分好み(炭酸割)」の4つ軸で価値の提案を行なっていくと説明する。

 また、クラフトジンの「ROKU」の海外での売れ行きが好調であることから、海外展開についても積極的に検討していく意向。同氏としてチャンスがあると見ているのが缶チューハイに代表されるRTD(Ready To Drink)の市場で、2030年に3000億円規模を目指すとしている。

 2023年の国内酒類市場(数量ベース)は前年比101%となる見込みだが、同社としては105%を目標に掲げている。

 続いて登壇した取締役常務執行役員 ビールカンパニー社長の西田英一郎氏は、ビール事業について2022年を振り返った。鳥井氏が説明した酒類市場全体の傾向と同様に、ビール類についても業務用が大きく改善し、2019年比で約6割の水準まで戻ってきたという。

 糖質ゼロでありながら本格的なビールの味わいが楽しめる「パーフェクトサントリービール」をリニューアルしたことや、11月から家庭向け販売をスタートした炭酸水で割って楽しむビールの「ビアボール」が若い世代に受け入れられたことが、新市場を開拓につながった。

 西田氏は、「2023年も市場を活性化するイノベーティブな商品・サービスを発表する」とした上で、酒税改正で相対的に買いやすくなった(狭義の)ビールカテゴリーにマーケティング投資を徹底集中させる方針を明らかにした。

 その最初の取り組みとなるのが、「ザ・プレミアム・モルツ」シリーズのリニューアルとなる。2月28日に「ザ・プレミアム・モルツ」がリニューアル発売するほか、「ザ・プレミアム・モルツ〈香る〉エール」も「ザ・プレミアム・モルツ 〈ジャパニーズエール〉香るエール」に名称変更してリニューアル発売。さらに、3月28日には「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム」の缶も発売する。

「ザ・プレミアム・モルツ」シリーズ

 常務執行役員 ビールカンパニー 生産研究本部長の川崎真吾氏によれば、華やかな香りと深いコクがプレモルのおいしさの特徴とされるが、今回のリニューアルでは、そのコクの源泉となっている「ダイヤモンド麦芽」に一手間加えて「磨きダイヤモンド麦芽」とすることで、その風味に磨きをかけたという。

 川崎氏は、「磨きダイヤモンド麦芽」の加工方法の詳細は明らかにできないとしながらも、「麦の香りの成分は殻皮の部分にあるが、旨みの成分は胚乳の部分にあるので、そこをどう分けるか。殻皮の部分にコクや渋みの成分があり、そこを取り除きたいと思い、工夫した」と、その狙いを説明。硬い米とは異なり、発芽した麦芽はもろく柔らかく、精米技術を応用することが難しく、その点に苦労したと振り返る。

 西田氏は、新たなパッケージデザインについて、消費者がプレミアムに求めることが変化してきていることから、「従来のデザインは重厚さ、装飾的な佇まいだったが、今回はしなやかな上質感を感じられるデザインにした」と説明。特徴的なタンブラーシェイプにも、グラスを斜めに傾けた姿を取り入れ、プルタブに青いブランドカラーを採用することで、特別感を演出している。

 国内のビール市場(数量ベース)は前年比97%の水準になると見られるが、同社では狭義のビールに注力することで、同102%を目指すとしている。