ニュース

キリン、ペットボトル・リサイクルの課題と展望を説明

2023年3月27日 取材

キリンホールディングス CSV戦略部 主幹の門脇寛氏(左)とキリンビバレッジ 企画部 企画担当 主務の榊原万里佳氏(右)

 キリングループは3月27日、ペットボトルに関連した環境課題への取り組みを紹介する説明会を開催した。

 キリンホールディングス CSV戦略部 主幹の門脇寛氏によると、日本のペットボトルリサイクル率は85%前後で推移しており、40%前後の欧州、20%前後の米国と比べ、世界最高水準にある。

 それでも多くのペットボトルはペットボトル以外のものにリサイクルされており、ペットボトル to ペットボトルの水平リサイクル率は20.3%とまだまだ低い水準にあり、この割合を高めていく必要がある。また、自動販売機横のリサイクルボックスだが、タバコや酒類容器といった異物を入れられ、リサイクルの品質や量に悪影響が出ていることも課題の一つだという。

 門脇氏は、国内の飲料メーカー各社のボトル to ボトルの目標から試算すると、全メーカーの目標達成には販売量の約8割をボトル to ボトルにする必要があり、ペットボトル以外のPET樹脂の循環量を増加させていく必要があると指摘する。

 そこで、キリングループとしては、従来のメカニカルリサイクルに加え、ケミカルリサイクルを技術を早期に確立することで、プラスチックが循環し続ける社会を目指すとしている。

 具体的には、同社が環境フラッグシップブランドと位置づける「キリン 生茶」を4月にリニューアルし、100%リサイクル原料のR100ペットボトルを主力の「キリン 生茶」「キリン 生茶ほうじ煎茶」の525ml商品で採用。さらに、ラベルを薄く、面積も小さくしたロールラベルを上記2商品と「キリン 生茶 免疫ケア」で採用することで、年間で5500トンのプラスチック使用量と約5600トンのGHG(GreenHouse Gas)排出量削減を達成できる見込み。

 また、これまでEC経由で「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」「キリン ファイア ワンデイ ブラック」といった商品で取り組んできたラベルレスのパッケージについても対応を強化。「生茶」シリーズでラベルレス商品を販売するほか、4月25日には「キリン 自然が磨いた天然水」のラベルレス商品も発売する。この取り組みでは、年間に約2.4トンのプラスチック使用量、約4.8トンのGHG排出量削減ができるという。

 市販の清涼飲料以外では、4月から飲食店向けのビールサーバー「タップ・マルシェ」「TAPPY」の3Lペットボトルをケミカルリサイクル樹脂で作ったものに順次切り替えていく。

 このほか、キリンビバレッジ 企画部 企画担当 主務の榊原万里佳氏は、自治体や企業と共同でペットボトルの水平リサイクルを加速させる取り組みを実施していることや、自販機横のリサイクルボックスへの異物混入を削減させるため、清涼飲料業界全体で形状や色を工夫したリサイクルボックスを展開していることも紹介した。

 同社では、PET樹脂を分子レベルまで分解し、再びPET樹脂に合成するケミカルリサイクルの実用化により、ペットボトル以外のPET樹脂も再資源化が可能となるとして、三菱ケミカルと共同で2027年の実用化を目指して技術開発を進めている。

 門脇氏は、原料回収や解重合など、難易度の高い課題が残されているとしながらも、研究開発は順調に進行しており、さらにその先には「酵素分解法」のような新技術のアイデアも登場しているとし、実用化への動きを加速させたいとしている。