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「キットカット ミニ」大幅刷新でカカオ感アップ

開発3年の自信作で“史上最高”をアピール

2023年8月25日 発表

リニューアルされる「キットカット ミニ」(12枚入り)。パッケージに大きく「史上最高」と記載されているのが目印

 ネスレ日本は8月25日、チョコレート菓子「キットカット ミニ」の大幅リニューアルを発表した。

 キットカットの国内販売50周年を記念し、約3年の歳月を掛けて開発した製品。従来品よりカカオ感を強め、ウエハースのサクッサク食感をより高めたという。消費者試食調査の結果などが極めて優秀だったことから「キットカット史上最高」の製品と公式にアピールしている。

 9月1日以降、既存製品と切り替えるかたちで順次発売する。価格は540円(12枚入り)。

日本発売50周年、今回のリニューアルは「キットカット史上最高」

 キットカットは1935年に英国で誕生。現在は世界80カ国以上の国・地域で販売されている。軽い食感の棒状ウエハースをチョコレートでくるんだ菓子として、赤いパッケージデザインがおなじみだ。日本では1973年の発売を開始し、今年2023年は50周年の記念イヤーとなっている。

 キットカットには味・包装形態などの異なるバリエーションが多数あるが、今回リニューアルされたのは「キットカット ミニ」。ミルクチョコレート味で、食べやすいサイズに個包装された12枚分が大袋にパックされている。全国のスーパーやドラッグストアを通じて主に流通している。

 9月1日以降発売されるリニューアル商品は、開発に約3年をかけた力作。試作品の数は100種類以上に達するという。味の面ではカカオ感が向上し、ウエハースのサクッサク感が高められた。

リニューアルのポイント
個包装でも大きく「史上最高」をアピール

 そしてパッケージ時に大きく「史上最高」と表記されているのもポイントだが、これには根拠がある。

 ネスレ日本では、商品のリニューアルを実施する際、消費者インタビュー調査などを通じて既存商品と新商品の比較テストを行なっている。多くの場合は“同等かそれ以上”の評点となるが、今回は圧倒的にリニューアル品が高評価を得た。過去50年でも初めての水準だったことから史上最高を強くアピールすることにしたという。

 なお、「キットカット ミニ」以外の一部シリーズ商品についても、史上最高をうたうリニューアルを実施する。具体的には「キットカット ミニ オトナの甘さ」(11枚入り)、「キットカット ミニ オトナの甘さ 濃い抹茶」(10枚入り)、「キットカット ミニ 全粒粉ビスケットin」(10枚入り)の3種類で、これらではウエハース食感の改善が図られている。価格は各540円で、いずれも9月1日以降の順次切り替えとなる。

同時にリニューアルされるシリーズ製品。右が「キットカット ミニ オトナの甘さ」
(左から)「キットカット ミニ オトナの甘さ 濃い抹茶」(10枚入り)、「キットカット ミニ 全粒粉ビスケットin」でも史上最高と記載されている

消費者の声をもとに、カカオ感を強める

 8月25日には、報道関係者向けの製品発表会がネスレ日本の東京オフィスで開催された。

 コンフェクショナリー事業本部 インツーホーム マーケティング部長の村岡慎太郎氏は「キットカットはいつの時代も、お客さまのニーズ・期待に応えられるよう、チャレンジを続けてきた」と、そのブランド哲学を説明する。2000年には初めて期間限定フレーバー(ストロベリー味)の製品を発売。2003年には「きっと勝つ」の語呂合わせから受験生応援キャンペーンがスタートしたほか、2019年には海洋プラスチックごみの削減に向けて一部製品の外袋を紙パッケージへ切り替えた。

村岡慎太郎氏(コンフェクショナリー事業本部 インツーホーム マーケティング部長)
キットカット日本展開の歴史

 その上で村岡氏は「なんといっても今年は50周年。支えていただいたお客さまへのお礼、感謝の気持ちをこの機会に伝えたい」と、各種の企画展開を本格化させている。2月には「キットカット ミニ よくばりダブル」を発売したが、それに続くのが今回のリニューアルだ。

 開発の最前線に立ったジリオ・ハファエル氏(生産本部 製造サービス部 コンフェクショナリー課 コンフェクショナリーI&Rマネージャー)によれば、今回のリニューアルでは消費者の声を徹底的にリサーチし、製品開発へ反映させたという。

ジリオ・ハファエル氏(生産本部 製造サービス部 コンフェクショナリー課 コンフェクショナリーI&Rマネージャー)

「数百人の消費者にご協力いただいた。100種類以上の試作品を10種類に絞り込み、そこでもまたお客さまの声を聞く。最終的に、競合製品も踏まえた社内テスト(全回答者を100とした場合)において50のイーブンをとるだけでも大変なのだが、今回は60という評価を得ることができた」(ハファエル氏)

 キットカットの味や品質を決定づけるのは、外側のチョコレート、内側のウエハース、ウエハースの中に入っているクリームの3つ。リサーチによって、チョコレートについてはカカオ感の強い商品のほうが好まれるという実態が突き止められ、リニューアルに反映させた。

リニューアルの概要

 新井拓実氏(生産本部 製造サービス部 コンフェクショナリー課 コンフェクショナリーアプリケーションスペシャリスト)は、工場での生産という観点からリニューアルに携わった。チョコレートはレシピの変更を行なっているが、それに伴って粘度が変わるため、調整には気を遣ったという。またウエハースの製造における発酵工程では、海外の製造チームとも協力したほか、クリーム製造にあたって新設備を導入したことも明かした。

「繰り返しになるが、今回は3年かかった。国外・国内、そしてお客さまと、いろいろな方にご協力いただいた。50年の歴史を持つ商品をここまで大きく変えるのは簡単ではなかったが、本当に達成できたことは誇り」(新井氏)

新井拓実氏(生産本部 製造サービス部 コンフェクショナリー課 コンフェクショナリーアプリケーションスペシャリスト)

試食で分かった! カカオ感アップで色味も若干の変化

 発表会では「キットカット ミニ」の試食の機会が設けられた。リニューアル品はカカオ感が強くなっているため、商品の色味も変化したという。実際、外側のチョコレートは従来品よりも黒く濃い色味になっていることが確認できる。

キットカット ミニの断面。チョコレートだけでなく、内側のウエハースも改良された

 口に入れてみると、従来品はミルク感をしっかり感じるのに対し、リニューアル品では甘みが抑えられていることが分かる。完全なビターとはまた違うが、甘みとカカオ感のバランスはかなり変化した印象だ。なおウエハースについても、チョコレートの配分、クリームのレシピ見直しが行われ、サクッサク感が高まっているという。

 リニューアルで全体的に甘さは控えめになったと言えるだろう。とはいえ、これまでの味のファンにも違和感を与えないような、絶妙なバランスが追求されている。これまでに引き続き、子供から大人まで幅広い世代に受け容れられることだろう。

キットカットとギフト、そしてブランド体験

 製品リニューアルとあわせ、発表会の後半ではキットカットのブランド戦略について解説する時間が設けられた。

 近年のキットカットは受験生応援キャンペーンでよく知られる。こうした「応援する」「気持ちを伝える」といった場面でもキットカットが選ばれるよう、ブランド戦略を展開している。

 コンフェクショナリー事業本部 コマーシャルディベロップメント部長の竹内雄二氏によれば、いわゆる「お土産需要」もキットカットのギフト利用に関わってくる部分だ。しかし、ここでもコロナ禍の影響は大きい。会社員のリモートワークの増加により、出張時のお土産などは相対的に需要が少なくなるとみられる。

竹内雄二氏(コンフェクショナリー事業本部 コマーシャルディベロップメント部長)
ギフトの重要性

 一方、インバウンド観光客は、感染症の発生状況が国際的に大きく改善した影響もあり、回復傾向にある。中国からの団体旅行の受付も再開された。

 キットカットは国際的なブランドだが、海外ではミルク味などベーシックなものが主流で、日本ほどバリエーションがあるところは少ないという。知っているブランドだが、食べたことのないフレーバーの商品を日本で購入し、帰国後にお土産として配りたいというニーズはかなり強いだろうと竹内氏は分析する。

「とはいえ、インバウンドだけを重視した製品開発はしていない。日本の消費者に満足していただける製品をまず作り、それがインバウンド客に『日本で選ばれている商品だから欲しい』と思っていただけるようにしたい」(竹内氏)

 こうして作り上げた製品を空港、駅、大型量販店など、人流が多い場所で大々的に陳列する。結果として、国内客、インバウンド客どちらにもアピールするというのが基本戦略だ。

日本市場向けにしっかり製品を作り上げ、その上でインバウンド客への波及を狙うという

 また、キットカットを専門的に取り扱う店舗「キットカット ショコラトリー」についても、新たに戦略を練り直す。バレンタインデー時期などとは異なる、日常的なギフト需要にも応えられる店舗を模索していくという。

 チョコレートと聞いたらまずキットカットが連想される。そうした“アイコニック”(象徴的)なブランドへの成長が、竹内氏らの目標だ。そのためにも店頭、ギフトなどさまざなかたちでキットカットへ触れる機会を増やすべく、今後も活動していくとしている。